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ミックスしようよ3 ミックスコンテスト対策ツール (その3)

2019.12.18

オーストリアのマイクブランド、Lewittが開催している人気ミックスコンテスト「ミックスしようよ」のVol.3。今回も引き続きドラムトラックに使用したいプラグインをご紹介いたしましょう。

ミックスしようよ3

ミックスしようよ3:【連載】ミックスコンテスト対策ツール


前回の記事ではドラムのオンマイクにフォーカスしてご紹介いたしましたが、今回はドラムのトップに立てられた2本のマイクについてご紹介いたしましょう。

指向性を「後から」決められる

本ライブセッションのレコーディングでは、ドラムのトップにLewittの革命的なマイク、LCT640TSが2本使用されています。このマイクの最大の特徴は、レコーディング「後」に指向性を変更できるということ。

マイク本体に表裏2枚のダイアフラムが搭載されており、それぞれを独立してアウトプットすることができるため、フリープラグインのPolarizerを使って無指向〜単一指向〜超指向〜双指向を無段階に切り替えできるという仕組み。

PolarizerGIF

今回のセッションの詳細なマイクセッティングの情報はあまり多くありませんが、Lewittがリリースしているムービーの一部に、トップのLCT640TSのセッティング写真がありました。

02_drum_mic_thumb

これを見ると、表側のダイアフラムがドラム向きになるようにセッティングされているようです。つまりこのセッションでは、

  • ドラムキットに向けた単一指向性にセットして、なるべくドラムの音だけを狙う
  • ドラムキットの反対側の指向性を生かして、バンド全体のアンビエンスっぽく使う
  • 無指向性にセッティングして、ドラムもルームもどちらも使用する

といった選択が、レコーディング「後」にできるのです。また、指向性の切り替えは連続的にできるので、「単一指向よりももうちょっとだけ超単一指向より」みたいなセッティングもできます。論より証拠、音サンプルを聞いていただいた方がいいですね。

LCT640TSの指向性をドラムキット向きの単一指向性にセットしたもの

LCT640TSの指向性をドラムキットと反対向き(天井向き)の単一指向にセットしたもの

ライブ環境なので他の楽器がある程度入ってしまうのは仕方がないとはいえ、ドラム向きに指向性を絞ったほうではかなりクリアにドラムにフォーカスできていることがわかります。一方、天井向きに指向性を絞ったほうはルームアンビっぽく活かせそうな音。この指向性が後から決められるのは、大きいですね。

** Polarizerプラグインは今回のセッションファイルパッケージに含まれています。


左右の広がり、ドラムキットからの距離も調整したい

Polarizerを使ってドラムキット向きに指向性を設定し、左右にパンを振りました。
セッティングの妙もあってか、このトラックだけでも十分にバランスのよいドラムが収録できていますね。

ただし、左右の広がりや中心の音の集まり方などには人によって好みがでることでしょう。そこで、左右の広がりを自然にコントロールしてくれるWAVES Centerの出番です。

私の場合、このトップのマイクは(マイキングが絶妙なポイントであるがゆえに)スネアがくっきりはっきり「しすぎている」と感じました。ちょうど真ん中に位置しているスネアですが、ここにはオンマイクで録ったスネアやキック、ベース、そしてメインボーカル(2人)が来る予定なので、トップマイクにはもう少し「スペースを空けてほしい」感じ。でも、EQなどでミドルを削ってしまうと、元の質感が変わってしまう。そこでCenterです。実際に、ミドル(センター)をわずかに抑え、パンチ感をサイド(左右)に逃したものがこちら。

center

WAVES Centerは、サウンドをLRではなく「センター」と「サイド」に切り分けるプラグイン。いわゆるMS(MID-SIDE)と同じようなものと思われがちですが、実は音のエンベロープや抑揚などにも呼応して調整が可能。よって、パンチ感を「センターorサイド」のどちらに与えたいかなども調整できてしまうのです。

マイクをもう少しドラムから離して

横の広がりはCenterで調整可能として、縦(ドラムキットまでの距離)はどうでしょう?
自分でマイクセッティングを行ったものではない場合、「もうちょっと離した音がいいなぁ」「もっと近くでパンチ感を抑えて欲しかったなぁ」等の好みがあることでしょう。

今回の場合、恐らくは「ライブレコーディング」ということもあり、かなり近めにトップマイクは設定されているようです。もう少しドラムキットまでの距離が(キットから離して)欲しいなと思いました。もう少し鈍らせたいというか。そんな時は、WAVES Smack Attackです。

コンプレッサーでも追いつかないほどの「立ち上がり」部分のトランジェントと、リリース部分を自在にコントロールするSmackを使い、アタックを少し鈍らせ、さらにリリース部分も適度にぼかしたい、というセッティングがこちらです。

smack-attack2

この辺は好みの問題なので、逆に「もっと近くに設置したかのように、パンチを出してほしい」と思えば上記と逆のセッティングをすればOK。


このように、素材の幅と奥行きを自在にコントロールできるプラグインを活用することで、まるでレコーディング時から立ち会ったかのような好みの音像を得ることができます。その上で、好みのフレーバーを感じさせるEQやコンプで処理をしていくとベストですね。


ミックスしようよ3

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