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ミックスしようよ3 ミックスコンテスト対策ツール(その1)

2019.12.04

オーストリアのマイクブランド、Lewittが定期的に開催している人気ミックスコンテストのVol.3が公開となりました。コンテストの詳細や参加方法などは前回記事をご参照ください。

Vol.3は今最もアツいイギリスのオルタナ/グランジロックバンド、Saint Agnesのライブセッション。4人のメンバーが織りなす激しいサウンドはミキシングを志す方にとっても良い素材となることでしょう。

ここでは、ミックスに取り掛かる前に確認したいモノ・コト、そしてミックスに集中するためのツールなどもご紹介いたします。

20190118_lewitt_mixit


まず最初に

楽曲は4人のメンバーによるライブパフォーマンス。ドラム、ベース、ギター、キーボードに加えて、ツインボーカルのライブです。要素としては6パートとも言えます。ライブハウスで(普通にライブを行なって)収録されたものなので、それぞれのマイクに他の楽器がカブっていることが確認できます。

演奏力に優れたメンバーのライブなので、特に音作りをしなくてもフェーダーのバランスだけでミックスをすることもできそうですが、私が感じた各パートの「課題」はこんな感じ。

・ドラム

オンマイクで設置されたトラックはカブリも少なめ(この辺が、Lewittマイクの優秀さとも言えます)ですが、やはりオーバーヘッドのマイクにはPAで拡声されたボーカル、ギターが強めにカブリます。また、タムとフロアタム、ハイハットとライドのように「オン・オフ」があるトラックの処理も課題になりそうです。

・ベース

DI(ライン)とアンプ(マイク)でレコーディングされているトラック。通常DIのトラックには他の楽器がカブらないものですが、ファズ系のドライブと強烈なフィルターをかけているためか、DIのトラックにも一定のモレ(クロストーク)が確認できます。また、まるでシンセベースかと思うくらいに超低域と高域が目立つので、ミックスの中に収めることに苦労しそうです。

・ギター

アンプに立てられた1本のダイナミックマイクのみ。Lewittのダイナミックマイクはパンチと芯のある音が特徴ですが、これはまさしくその特徴が出ています。今回のセッションの中では最も苦労の少ないトラックと言えるかもしれません。

・キーボード

オルガン系の音で、ベースと同様にDI(ライン)とアンプ(マイク)でレコーディングされています。要所でのみ登場するパートなので、他のパートよりは苦労が少ないように感じます。

・ボーカル(2パート)

男女のツインボーカルであるトラック。また、男性ボーカルの方にはFXトラック(少し歪んだ)があり、計3トラックが用意されています。使用されたマイクはLewittのハンドヘルドマイク、MTP940CM。すぐ後ろでドラム、ベース、ギターが轟音で鳴っていることを考えると、かなり優秀にフォーカスされているとは感じます。いかに背後の音を消し、かつバンドのイメージに合う色気を出せるかが課題になりそうです。

・全体(ルーム)

このライブセッションをベストな位置でステレオでレコーディングしたトラック。このパートだけを聞くと、かつて良く出回っていたライブのブートレグのようにも感じます(それほど、バランスよく収録できています)。このトラックをどう混ぜるか(コンプしてリバーブのように使う、またはEQのみでアンビエンスのように使う、もしくは主軸に使う、等)は、ミックスをする方によって違いが出そうで、センスの発揮どころとも言えるかもしれません。

20190118_lewitt_mixit


この曲はオリジナルのスタジオ・レコーディング版もあるので、ミックスに当たる前に一度「バンドの好みや方向性」を確認するのもいいでしょう。

オーディオトラックをセッションに並べ、手当たり次第に様々なプラグインを試していくことはあまり賢明とは言えません。前回の記事でクリス・ロード・アルジさんが話していたように、事前に行うべき下処理や 使用したいプラグインをしっかりイメージしてから、音に集中してミックスに挑みましょう。


どこからミックスする?

人によってミックスの順番は様々あるかと思いますが、ロック系のバンドの場合私はベースから手をつけ始めます。リズムとコード、楽曲の雰囲気を担う大事なパート。また、曲によって「キックが下か、ベースが下か」の方針も固められます。

この曲のベースはDI(ライン)とマイク(アンプ)の2トラックがスタンバイされていますが、一聴してわかるのは「まるでシンセベースかのように下から上まで情報量の多い音」ということ。エレクトリックベースに、ファズ系のドライブとフィルター系のエフェクトが使われているものと思います。下はDIのベーストラックをアナライザー表示したもの。

H-EQ

** アナライズに使用したプラグインはWAVES H-EQ。EQのビフォーアフターを同時にアナライザーで表示してくれるほか、バンド毎にEQのキャラクターを選択できる優れもの。

かなり歪んでいるがゆえなのか、DI(ライン)にも他の楽器がカブっています。PAスピーカーから再生された音をベースのピックアップが再度拾っているような感じ。

ライブならではのカブりを活かしつつ、しかしベースにかけたエフェクトがミックス全体を壊さない程度に他の音をカットしたい。神経質なまでのノイズ(他の楽器)リダクションはしないまでも、ベースに集中できる程度に他の音が消えてくれればベストです。もちろん、ベースそのものに影響を与えずに。


パッとミックスに取り掛かるために

DIトラックの未処理はこんな感じ

ベースの刻みの合間にボーカルやドラムがふわっとカブっているのが分かります。このままこのトラックにコンプやEQなどを施すと、場合によっては「不要な音」にもゲインアップがかかり、最終的なミックスにも影響を及ぼすでしょう。

定石的な手順といえば、エクスパンダーやゲートなどのエフェクトを使うことでしょう。指定したレベル以下を抑える、またはゼロにする。多くのDAWに付属しています。しかし、単純に「音量レベル」だけで判断を行うこれらのツールは、ベースのエフェクトの違いやプレイのニュアンスに関わらず音量を下げるように動作してしまいます。また、アタックタイムやリリースタイムの設定…これが難しく、時に手間が多い。

screenshot

そんなシーンには、WAVESのPSE(Primary Source Expander)が最適。名前の通り「主要な音だけを抽出するぜ」というプラグイン。このツールの素晴らしいところは、2つのスライダーだけでほぼセッティングが完了できてしまうこと。実際にPSEを使ったベーストラックがこちら。

DIトラックにWAVES PSEを使用したもの

プラグインの設定には10秒程度。メーターを見ながらベースがだいたい抽出できるところで止めればOK。ほぼ、理想的なレベルまでカブりが低減できているのが確認でき、かつ元の音に影響を与えていないところもポイント。これなら、好みのEQやコンプを使ってもまず大丈夫。

なお、このPSEはベースだけでなく、ボーカルトラックやギター(アンプ)トラックなどにも超有効です。

次回はドラムトラックに使用したい下処理ツールをご紹介いたします。


ミックスしようよ3

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