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究極の管弦ソフトウェア音源エンジン、SWAMシリーズの実力 vol.6

2019.09.11

SWAMシリーズの記事もいよいよ最終回です。

これまで、パラメータとその挙動について特に大切なポイントを中心に扱ってきました。
しかし、やはり項目が多すぎて「どこから手をつけたものか…」と悩む方も多いのではと思います。

Vol.1で触れたように「いちからグラフを描くのではなく、演奏入力し修正する」のが望ましく、自分に合ったコントローラーを見つけることが大切です。

今回は、私のワークフローをご紹介します。

Vol.6:index


●機器について

入力機器にはLeapmotionを使用しています。

3Dモーションキャプチャーで手の動きを読み取り、CC制御ができます。

このように可変スタンドで角度を調整し、アルミ板を敷いて排熱性能を上げるなどの工夫をしています。

Gesture: Bowingを使用し、動画では次の順に動かしています。

  • Expression(左右)
  • Bow Pressure(上下)
  • Bow Position(前後)
  • Pitch Bend(水平方向への傾き)
  • Vibrato Depth(垂直方向へのひねり)
  • Vibrato Rate(水平方向へのひねり)

実際の楽器を参考にし、弓や圧力の方向を対応させています。
GUIに表れるDynamicsの変化にも注目です。弓の返しを模した手の動きでDynamicsが減少することが確認できます。
このグラフの減少傾向はGesture: Expression, Bipolarの修正の参考になります。

このようにして表現の基本となる6種のパラメータを同時に制御しながら、割り当ての追加やペダルの併用で有機的で合理的、効率的な演奏入力ができるようにしています。
※Vol.1~5のデモソングでは、説明のためにほとんどのグラフが手描きです。

ピッチ・ビブラートに関しては、Seaboard(多感鍵盤型)やNeova(指輪型)、Jamstik+(フレット型)、Sensel Morph, Joué(シート型)などのコントローラーを併用するのが理想的だと考えていますが、残念ながら未導入です。


●修正の流れについて

SWAMシリーズの演奏入力後、修正はしようと思えばいくらでもできますが時間が掛かります。
そこで、効果の出やすいパラメータと修正の流れをご紹介します。

表現に必要な各項目を優先度の高い順に記します。

○弦楽器

SWAM-Sでは制御できるパラメータが非常に多く、どこから修正するか決めておくことが大切です。ノープランではどこを弄れば良いのか迷い、グラフ画面を行ったり来たりすることになり、キリがありません。
全体を整えて細かいところを補正するという流れを徹底し、時間の無駄をなくします。

☆音量
  • Sustain(CC64)
  • Expression
  • Expression Curve
  • Volume

Gesture: ExpressionではSustain(CC64)をはじめに設定します。弓の返しを設定しないことには弓速がどこで落ちるのか定まりません。
Gesture: Bipolar, BowingではSustain(CC64)は不必要ですが、低速でグラフ修正が難しい箇所では簡単に音を持続させられるので便利です。

最後にVolumeで全体を整えます。SWAMから出力される音成分のすべてに影響を及ぼすので、変化の小さいだらかなグラフが適切です。フレーズ別のバランスや強弱表現の強調にも使えます。

☆アタック
  • Accent
  • Env Attack Speed

Accentはノートオンで付加されるアタックノイズに関するパラメータで、特に短音の演じ分けに役立ちます。ベロシティによってノイズ量が変化するので合わせて設定します。効果が分かりやすいシンプルなパラメータですね。

Env Attack SpeedはGesture: Expression, Bipolarで有効なパラメータです。
値を高めにとるとアタックのギコギコした音が遅れて明瞭に聴こえ、弓の引っ掛かりが強調されます。
逆に値を低くとるとアタックが弱まるように感じられます。ポルタートなどで有効です。

☆ビブラート
  • Vibrato Depth
  • Vibrato Rate
  • Vibrato Random

改めて特筆することはありませんが、修正する場合はDepth → Rate → Randomの順が適当だと思われます。

☆音色
  • Bow Pressure
  • Bow Position
  • Brightness
  • Bow Lift
  • Bow Noise
  • Bow Start

最も大切なのはBow Pressureです。Scratch, Flaut.の範囲内でも値によって変化の大きさが変わることにも注意です。Bow Positionと合わせて入力することが好ましいですが、分ける場合はPressure → Positionの方が調整しやすいかと思います。

Brightnessは高次倍音を持ち上げるパラメータです。文字通り音色の明暗に分かりやすく直結するので、フレーズに合わせて大体のグラフを描くだけでも効果が期待できます。

Bow Liftは弓が中速では変化が乏しいので優先度は下がりますが、細かい表現には必要になってきます。

Bow Noiseは弓の擦れる音のパラメータですが、質ではなく量が変化するパラメータです。弱音では目立つので丁寧に整えた方が好ましいです。
先述のBrightnessと組み合わせるとより効果的です。

Bow Startが必要になるのはGesture: Expressionのみです。上げ弓と下げ弓の違いは弱音の掠れやすさに表れます。短音の演じ分けにも使えますが、弱音かつ長音で指定する方がメリットがあります。

☆音色補正
  • Random Bow
  • Interactive BowPress
  • Rosin

Random Bow以外はダイナミクスの小さいフレーズではあまり恩恵が得られないので優先度は低めですが、弓を速く動かす箇所(GUI上のDynamics Envelopeが赤になる)がある場合のアクセントとして有効です。

☆音程
  • Pitch Bend
  • Temperament
  • Random Finger

Pitch Bendはヒューマナイズよりも意図的な表現で役に立ちます。Max P.B RangeやPB U, Dで変化幅を調節しておくと修正が楽です。

Temperamentに主なヒューマナイズを任せます。
音域の中央を基準にデチューン方向が変わるので、フレーズと音域の中央との音程差を意識しながらグラフを描く必要があります。慣れないうちは再生して確認するのが手っ取り早いです。

Random Fingerを使うと音程が安定しなくなります。Pitch BendやTemperamentで大まかに表現を整えてしまい、仕上げにRandom Fingerを局所的に高く設定するのがおすすめです。

☆共鳴
  • Alt Fing
  • OpenStrings
  • Strings Res.

Alt Fingは運指ポジションのパラメータですが、フレーズやレガートポルタメントでの弦指定のほか、開放弦の指定に使います。Sustain(CC64)の指定段階で一緒に済ませてしまった方が後が楽です。微調節が必要なものほど後回しに、後で変更がないものから確定させていきます。

OpenStringsは鳴らしている弦の他の共鳴度を設定します。
値を上げていくと薄っすら金属的な倍音成分が付加されます。
1~4弦それぞれの演奏時で、鳴らしている弦以外に触れた弦の数によって変動させます。

Strings Res.はノートオフ後の残響の長さを決定します。
特に開放弦での効きが強く、際立たせたい場合にはとても有効です。
ただし、残響の途中でも値の変更に影響を受けるので注意です。(OpenStringsも同様です)
常に変化させる必要はないパラメータです。

○管楽器

SWAM-Wのパラメータ修正はExpressionが大部分を占めます。
キースイッチ的な指定も多く、パラメータもSWAM-Sに比べるとその効果が分かりやすいため、あまり気をつけることはないのですが、強いて言うならば楽器の演じ分けが必要です。
詳しくはVol.3~5を参照いただければと思います。

☆音量
  • Expression
  • Rand Dyn.
  • Auto Expression
  • Volume
  • Expression Curve

基本的にはSWAM-Sのときとあまり考え方は変わりませんが、いくつか注意点があります。

Rand Dynは吹き初めや終わり、速いフレーズで局所的に高い値をとると効果的です。

Auto Expressionの値を高くとると、Expressionの減少によるDynamicsの減衰が若干速くなります。また、Expression値に対応するDynamicsの最大値が下がり、大人しい音になりやすくなります。

Expression Curveの挙動も特殊です。こちらは発音中に変化させても影響を及ぼしません。どちらかと言うとコントローラー向きの設定項目なので、SWAM-Sと違って変動させるメリットはほぼありません。

☆アタック
  • Attack Start
  • Attack to Sust Time
  • Key Noise

Attack Startでフレーズに合わせたサンプルの開始地点を決定し、Attack to Sust Timeでニュアンスを調節します。

Key Noiseは変動させる必要はありませんが、弱音表現などで気になる場合は調節します。

☆ビブラート
  • Vibrato Depth
  • Vibrato Rate
  • Vibrato Random

SWAM-Sと同様です。楽器によって予め上限値を設定しておくといくらか制御が楽になります。

☆音色
  • Formant
  • Breath N.
  • Harm.Struct
  • Sub Harm

詳しくはVol.5に書きましたが、音色作りはこの4つが基本です。
明暗と濁りを付加します。Sub Harmは弱いGrowl表現の代用としても使えます。

☆音程
  • Pitch Bend
  • Temperament

SWAM-Sと同様ですが、レガートポルタメント機能を併用した方が自然になる場合も多いので、控えめに使用します。

・・・他にも様々なパラメータが存在しますが、基本的には表現に必要な成分を判断し、これらのパラメータの中から取捨選択してグラフを修正すると効率的です。

いきなり全てのパラメータを使おうとするのではなく、機能と効果的な修正法を知ることからはじめることをおすすめします。

Expression, Vibrato Depth, Pitch Bendの3種からはじめ、少しずつできることを増やして楽しむことが大切です。


●さいごに

Vol.1~Vol.6までお付き合いいただき、ありがとうございました。
不慣れで至らない点も多々あったかと思いますが、大好きなSWAMシリーズの魅力を少しでも伝えられたら、という想いで執筆してきました。
実はまだまだ書きたいことが山のようにあるのですが、ひとまず完結です。

今回このような機会に恵まれ、とても幸せです。
改めて、本当にありがとうございました。


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本記事で使用しているソフトウェアのバージョンはSWAM-S 2.0.2です。最新版とはパラメータ名の表記などが異なる場合があります。








著者プロフィール

t1(soPpypoPsy / swamteq)

  • 室内楽制作
  • VR楽器制御考察
  • ヒューマナイズ代行

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