SWAM-W エンジンとは
2018.10.12
SWAM-W - Synchronous Waves Acoustic Modeling - Woodwinds
木管楽器 同期波形アコースティック・モデリング
一般的なオーケストラで使用される楽器のサンプリングは、その楽器の最大限のノート長をクロマチックに収録する形で行われます。各サウンドのサンプリングにおいては、ノートだけでなく異なるダイナミック・レベルのサンプルも収録します。楽器のサンプルは、反響の抑えられた環境でレコーディングされ、各サウンドを自然で正確にとらえるために、エフェクトによる可能は施されません。
どれだけ正確なサウンド、ダイナミクスをもってしても、それはSWAMインストゥルメントを特別なものにするほんの触りでしかありません。SWAMエンジンとそのプロセッシングがもたらすのは、楽器のダイナミクスとアーティキュレーション(奏法)の”リアルタイム”な変化です。位相乱れやストレッチングによる副作用とは無縁の、本物の楽器が有する自然さに比肩するレベルの音楽的な表現力を持つバーチャル・インストゥルメントを提供します。SWAMインストゥルメントのサウンドを形作り、インストゥルメントによる表現のクオリティを高めるためには、リアルタイムかつダイレクトなコントロールが必要となります。
木管楽器の物理モデル
数ある木管楽器の種類の違いとは、主にリード、ダブル・リード、マウスピースといった振動源のタイプ、そして共振系の物理的な要素、木管楽器ではパイプの形状、によるものです。形状については一見してその違いがわかるでしょう。パイプ(管)形状はオープン-開管なのかクローズド-閉管なのか。円筒形か円錐形か、スライドかホールか、素材は何か(木、金属など)。
SWAM木管楽器インストゥルメントにおいて、本物の振動物は存在せず、そのサウンドはサンプルで置き換えられています。パイプ部分についてはほとんどをモデリングしています。
円筒オープン-開管楽器の物理モデル
円筒オープン=開管楽器は、奇数・偶数両方の倍音を全スペクトラムに含む音色を備えています。このため、生み出させる倍音は基音の倍数となります。
実際には、基音が生み出す最初の倍音は、基音の1オクターブ高いトーン(+12半音)、2つ目の倍音は基音から12全音の高さ(+19半音)、そして3爪の倍音は基音より2オクターブの高さ(+24半音)、などと構成されます。
フルートは開管型の代表的楽器と言えます(後半も参照)
円筒クローズド- 閉管楽器の物理モデル (一端)
円筒クローズド=閉管楽器の生み出すトーンのスペクトラムは、主に奇数倍音(特に低域)を備え、特徴的なその構成により薄く・柔らかい倍音を連ねます。基音から一つ上の倍音は12全音の高さ(+19半音)となります。
クラリネットは、円筒型クローズド・パイプの代表的な楽器です。
円筒・円錐クローズド- 閉管楽器の物理モデル (両端)
両端がクローズドの円筒・円錐閉管楽器は、オープン・パイプの楽器とよく似たふるまいを持っていますが、そのスペクトラムは奇数・偶数の両倍音を含みます。
サキソフォンは、円錐閉管タイプにおける代表的な楽器です。
フルートについて
フルートは物理的には開管楽器の一つとして振る舞うため、スペクトラムは奇数・偶数の両倍音を含みます。
ここではフルートにおける重要な振る舞いの特徴について、述べておきます。フルートの高音は必ずしもパイプ長を短くする(スライドを用いる、または通常のフルートの奏法としてホールを押さえる)だけで生み出されるわけではなく、倍音を利用する場合もあります。
倍音に含まれるハーモニクスの基礎周波数は、フル・パイプ長のサウンドの倍数となります。
ダイナミクスやピッチの変化にともない、サウンドにはより多くの倍音が含まれることがあります。この干渉は、フルートという楽器の音色を特徴となる重要な要素であり、そのキャラクターを決定づけるものです。
一般的なサンプル・ライブラリにおいて、この振る舞いは”写真”として扱われます。非常に正確ではありますが、ミュージシャンの表現と相互に作用を起こすことはできません。しかしSWAM Flutesでは、サウンドは実際の楽器からサンプルされているにも関わらず、物理モデリングによる特別なアルゴリズムによって、演奏に対してダイナミック、かつリアルタイムに振る舞う事ができるのです。演奏者の表現にも影響しあうことで、より鮮やかで反応の良いサウンドを生み出すことができるのです。
SWAMこそ、物理モデリングとサンプリングにおける、真のハイブリッドと呼べるエンジンです。