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配信時代の音楽制作〜ミックス、マスタリングの傾向と対策 – 今知るべき配信テクニック

2020.04.02

Apple Music、Spotify、LINE MUSIC、AWAなどの音楽配信サービスや、YouTube、ニコニコ動画などの映像配信サービスは、現在音楽を聴くメディアとしては、欠かせないものになっています。 これらの視聴環境における重要なキーワードの1つは”ラウドネス・ノーマライゼーション”。

非常に簡単に言うと、作品ごとの音量感を揃えることにより、それぞれの音量のばらつきを抑える仕組みです。

テレビでは2012年より運用が開始されましたが、現在この仕組みは放送、配信、ゲームなど様々なメディアで運用されています。 もちろん、これらのメディアのコンテンツとして重要な音楽も避けては通れません。

レコーディング、ミックス、マスタリングからプロデュースまでを手掛けるエンジニアであり、早くからこのラウドネスの重要性を啓蒙してこられた古賀健一氏に、制作時のフローについてお話を伺いました。


音圧競争にとらわれずに、良い作品を未来に残したい

MI

現在は様々な配信サービスがありますが、そういったプラットフォームで聴かれる音楽制作をする際に、エンジニアとしてどのあたりに注目されていますか?

古賀 健一 氏(以下 古賀)

ラウドネス・ノーマライゼーション下で再生される作品では、楽器のダイナミックレンジと楽器の基音(低域)を意識しています。

パッと聞きの音量に騙されず、ダイナミックレンジによる楽曲の”メリハリ”を表現することが大事だと思います。

音量、音圧感は配信サービスで自動的に揃えられてしまうこともがありますし、リスナーは自分で再生音量を調節しますから、マスタリングで最後の0.1dBのレベルを上げることに果たしてどこまでの意味があるのかな、と思っています。

去年、個人的に一番うまくレベル的な処理が行えたと思っている作品はこちらです。

Anachromism Pt.2/THURSDAY'S YOUTH
Spotify WEBサイト

MI

自動音量調整は2012年からテレビで始まったラウドネス規制を発端に、今では様々なメディアで使われていますね。ラウドネス・ノーマライゼーションがオフだと、特にシャッフルで色々聴いていると制作された時代によって、音量、音圧は大きく違います。

古賀

調べたところでは、Apple Musicはデフォルトでオフ、Spotifyはオン、TIDAL(国内未対応)もオンですね。 YouTubeは強制オンですし、ニコニコ動画にはつい先日(2020年1月)に導入されました。さらにAWAはアップロード時に揃えられるという話も耳にしました。それにAndroid スマートフォンの一部機種には本体に設定あることも確認しました。

早い話、多くの配信サービスでは、リスナーが音量調整機能をオンにしたとき、あるいは強制的に、再生音量が10dB以上、下げられることもあります。 制作時に、音楽のメリハリを失ってまで音圧を稼いでも、ラウドネス・ノーマライゼーション機能により逆により小さく聞こえてしまう危険があります。

ならば、再生音量が平均化されることを前提に楽曲が本来持つダイナミクス感を得られるように制作した方が良いんじゃないかと思い、ラウドネスメーターを指針にミキシングエンジニアとしてミックスやマスタリングを行おうと思ったわけです。

ただ正直、誰もやっていないことをやるのはとても勇気がいります。

”本当に音量が上がって聞こえるのか?”
”他のアーティストと並んだ時に、劣って聞こえてしまわないか?”

はじめは確証がありませんでした。

そこで僕が⻑年、携わっているアーティスト「THUSDAYʼS YOUTH」に賛同、協力してもらい、ミックス直後のまだ音圧の低い音源をリリースしました。それがこちらです。

是非皆さんに聞いてみてもらいたいです。

なかまはずれ/THURSDAY'S YOUTH
Spotify WEBサイト
Apple Music WEBサイト

MI

ミキシングエンジニアとして実践されていることの具体例を教えていただけますか?

古賀

僕はミックスマスターは、マスタリングを想定したリミッター入りと無しの2つのバージョンを作ります。 音圧の大小2つのファイルをマスタリングエンジニアに渡します。意図を説明した上で、どちらを使用するかはお任せしています。

MI

2つのファイルを作る過程はどのようになっているのでしょうか?

古賀

ミックスをする過程では、最初はVUメーターを見ます。 マスターフェーダーの最終段にリミッターをアサインして最終的には音圧が入った状態で細かいバランスを取っていきます。 レベルの指標として、マスタートラックにラウドネスメーターを数種類アサインします。

MI

メインのラウドネスメーターはNUGEN AudioのMasterCheckですね。

古賀

このプラグインは視認性に優れており、AACやMP3、OGG、更に可変/固定レートなど各種エンコード条件による変化まで簡単に比較できて非常に便利です。

僕はこのメーターのIntegrated Loudnessが-13LKFS(LUFS)あたりになるようにミックスしています。

 

 

古賀

リミッター入りのバージョンはCDメインの今までの音圧感を保たないといけない場合も多いので、-10LKFS〜-11LKFSに設定します。その場合ダイナミクスや低音も考えてミックスする必要があります。これはミックス前にクライアントやアーティストと会話して、方向性を決めるようにしています。

マスタリング後のレベルは、だいたい-8〜-9LKFSあたりになります。そこまで上げても崩れないように、作品のダイナミクスを意識しながらミックスを行います。

 

MI

リミッターのオン/オフで-10LKFS〜-13LKFSあたりになるんですね。 リミッターをオンにして作業をするのはどのような理由からでしょうか?

古賀

マスタリングで音圧が上がった際にイメージとのずれをなくすこと、静かなAメロ、盛り上がるサビなどでダイナミクスを感じさせて、楽曲の良い部分を表現できるようにするためです。-13LKFSのミックスマスターは、ダイナミックレンジを残しつつマスタリングできるように意図しています。 あまりに音圧が上がりきった状態で納品すると、マスタリングで作業する余地をも無くしてしまいますから。

僕の-13LKFSのファイルのリミッターは実はほぼ引っかかっていません。なので、それを抜けば更に-18LKFSの選択肢も提示出来ます。

マスタリングエンジニアさんには、音圧ありの音をリファレンス代わりとして聴きながら、音圧なしの音でマスタリングしてもらうことが多いです。 ちなみに、リミッターで音圧を上げている音源の方はEQなどはせず、リミッターのスレッショルドを単に下げているだけです。

MI

各配信プラットフォーム用にそれぞれ異なるマスターを制作されているのでしょうか?

古賀

実際にそれができるのが理想的ですけど、現状ではハイレゾ、CD、Apple Music、YouTubeくらいにしか分けられません。しかし、分けられるものは積極的に分けてもらうようお話しします。

インディーズの場合、TuneCoreに登録することで各種サービスで 配信が行えるのですが、マスターが複数あると、別アルバムの扱いになって登録料がそれぞれに掛かるんですよね。

ラウドネスメーターでは測れない帯域がある

MI

ミックスの時には他にどのようなメーターを使っていますか?

古賀

先ほどのMasterCheckを使って最終段階のラウドネスを確認しますが、ミックス時はVUメーター、ダイナミクスメーターも使用します。RMSメーターもみますが、重要度は年々下がってます。

VUメーターも工夫していて、日本の音楽スタジオでは 0VU=-16dBFS=+4dBuが基準ですが、僕はラウドネス・ノーマライゼーションへの対応のためもあり、 0VU=-18dBFSの設定がメインです。

NHKが-18であったり、世界的にも-18がスタンダードな こともありますが、-18dBFSではヘッドルームに今までより2dBの余裕ができ、ピークメーターから解放され、音楽に集中できるので、ミックス作業もやりやすいです。

-24LKFSが基準のテレビや、映画、ゲーム音楽のミックスの時は0VU=-20dBFSでミックスすることもあります。用途に合わせて使い分けてます。

それを可能にしてくれるのが実はAPOGEEのSymphony I/O Mk2なんです。

現在では、各機材を-18dBFSでキャリブレーションしていますが、特にSymphony I/O Mk2はボタン一つでレベルの設定が変えられるのでとても便利です。

古賀

ただ、VUメーターは低域のエネルギーに反応しやすいので、ここは注意が必要です。 僕はVUメーターへの送りに低域のフィルタをかけたりすることもあります。 対して、ラウドネス指標の”K特性フィルタ”は低域に反応せず、1kHzあたりから上にはよく反応します。 これらの特性を理解しながら、相互に使うのが良いと思いますね。

ラウドネス管理を行なっている音楽配信サービスや、YouTube、 ニコニコ動画などの映像配信も、アップロードしたファイルのレベル計測時に上記のK特性フィルタを通りますが、どのように影響が出るか、MasterCheckで想定することができます。

"K特性フィルタ”の対処について

注:ラウドネス測定は、より音量が大きく感じる帯域にカーブ特性をつけた”K特性フィルタ”を使用しています。
図のカーブのように、低域は反応せず、1kHz以上がより反応しやすい特性となっているため、カーブが上がった帯域の音量が大きいと、全体の音量がより下げられる傾向にあります。

古賀

例えばボーカルやギターなどで1kHz以上の高域における情報、音量の割合が大きいと、ラウドネス値が高くなって全体の音量を下げられてしまいます。 僕は単なる音圧だけでなく、楽曲の音量感を得るために、低域をしっかり出すことに気をつけています。 結果、高域も出せます。

ちなみに、録音する際も-18dBFS基準で録音します。 コンプやHA(ヘッドアンプ)にも余裕ができるので、これらのキャラクターを活かした音色も作りやすいです。 とにかく僕はダイナミクスに重点をおいて録音、ミックスしますので、キックやスネアなども録音時にはコンプをかけないことが多いです。 ダイナミクスは演奏者がつけるものなので、極力これらが活きるようにレコーディング、ミックスをしていきます。

MI

アーティストやクライアント、エンジニアの信頼感が必要ですね。

古賀

信頼感と勇気が必要です(笑)

MI

制作時にCDと配信の違いについて意識はされますか?

古賀

色々試行錯誤した末、現在では個人的には極端なフローの違いはありませんが、VBR(可変)のAACでの配信音源 が増えてきたので、変換時のサウンドに変化が出にくいようにミックス、マスタリングでは気をつけています。 また変換時に歪まないように、トゥルーピークもきちんと処理するようにします。 SonnoxのFraunhofer Pro-Codecもとても重宝しています。それからMacのターミナル機能でファイルのサンプルピークもきちんと調べます。

最近、マスタリング前の音源を使用したPVがYouTubeで公開されるケースが非常に増えてきたので、これも念頭において、マスタリングしなくてもきちんと聞ける状態のミックスを納品します。 先ほどお話しした-13LKFSあたりのミックスマスター音源をそのままYouTubeにアップしても違和感はありません。
YouTubeは-14LKFSあたりなので。

アップした作品もCDマスタリング後だと9dB以上下げられているものもありますが、僕はここを3dBの幅に納めたいと思っています。*

古賀氏が携わった THURSDAY'S YOUTH / 独り言。YouTubeより
Mastered by 山崎 翼 (Flugel Mastering)
*注:画面を右クリックして詳細統計情報を開くと、”Volume/Normalized”の項目にどのくらい音量調整されているかが表示されます。

 

古賀氏が携わった ichikoro / James?。YouTubeより
Mastered by 古賀 健一
*注:画面を右クリックして詳細統計情報を開くと、”Volume/Normalized”の項目にどのくらい音量調整されているかが表示されます。

 

古賀

iTunesでも音量の自動調整機能がどのくらい機能したか確認することができます。 12dB近く下がる曲もありますが、最近の海外の新譜ではあまり下がっていない音源も増えています。 曲を選択し、「曲の情報>ファイル」から、「音量」の項目で確認ができます。音量の自動調整を有効にすると、マイナスになっている数値分、音量が下がります。

MI

常に音楽のメディアも制作方法も変化していますね。

古賀

昨今の音楽制作現場では、エンジニア以外にアーティストや作家さんがミックスやマスタリングまでやらなければならないことも多くなっていますし、目的とする配信先やメディアの特性、ミックスする環境も様々です。 もちろん、専業のエンジニアならではのテクニックはあると思いますが、僕は昔から、エンジニア以外の方がミックスやマスタリングをする事は歓迎しているタイプです。

その中で、ラウドネス・ノーマライゼーションは、統一された音量指標だと思います。 先ほどのように、多少ほかの作品よりも音量が小さく仕上がっても揃えてくれます。作曲段階ではもちろん見る必要もありませんし、ミックス中に常に気にするものでもありません、 あくまでも最後の確認です。

また、張り付いたサウンド、歪んだカッコいいサウンドが好きな方もいると思いますが、それも意図的に作りやすい規格です。ラウドネス・ノーマライゼーション下では、音量は変わりますが、音質は変わりません。

より制作者の意図が伝わりやすい環境が整ってきていると個人的には考えています。

最終の音量は音楽の場合リスナーの方が決めますから、 VUやRMSメーターも大事ですが、今は最終確認の手段として人間の聴覚に合わせたラウドネスメーターはミックス、マスタリングで必須のツールだと思います。

うまく使いこなせば、様々な数字、メーターから五感を解放させてくれます。


協力
Version Studio
福岡・東京・LA・台湾に拠点を置く音楽制作会社、
株式会社オクターブミュージックが2019年11月に渋谷に設立したレコーディングスタジオ。
設計にあたり監修にトニー・マセラッティ氏/古賀健一氏を招く等、徹底的にルームチューニングにこだわったコントロールルーム/レコーディングブースが特徴。
AVID MTRXを核とし、PMC/Amphionなど現代にマッチした機材も特徴である。
https://octave-music.com/studio


プロフィール

古賀 健一 こが けんいち
Kenichi Koga

レコーディングエンジニア
1983年 福岡県生まれ

レコーディング&ミックスからマスタリング、サウンドプロデュースも手がけるエンジニア。[2005年青葉台スタジオ〜2014年独立と同時にスタジオを設立〜2019年 Xylomania Studio LLC設立。

ASIAN KUNG-FU GENERATION・藍井エイル・Official髭男dism・8otto・CRAZY VODKA TONIC・D.W.ニコルズ・チャットモンチー・GReeeeN・ichikoro、MOSHIMOなどの楽曲エンジニアリング、The Songbards、空想委員会などのサウンドプロデュースをはじめ近年、映画、ゲーム音楽での5.1ch Mixも手掛ける。

また、実績に沿った様々なノウハウを活かし、Version Studioやmabanua氏のスタジオなど、各種スタジオ設計、調整にも携わる。

関連製品

MasterCheck Pro

Symphony I/O MKII PTHD 8x8 Analog + 8x8 AES/Optical + 2-Ch S/PDIF

Fraunhofer Pro-Codec (Native)

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