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Nugen Audio + Ableton Live! ベッドルーム・プロデューサーに送る完パケテクニック:その2

2018.04.25

20180424_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-2_nugen-02-top

 

自分でミックス〜マスタリングまでこなすプロデューサー向けにお送りする連載の第2回目。前回は音量だけを調節してバランスをとり、ミックスの入口までを紹介してきました。音量は特殊なエフェクトで、人間の耳は大きな音を良い音だと感じてしまう特性を持っています。そのため気がついたらボリュームが上がっていた…というようだと、その後の作業が大変になるので音量の管理は重要です。

 

今回の試聴音源です。今回はこの曲にNugen Audioのプラグインを使って簡単なミックスをしていきたいと思います。

 

 


 

それぞれの楽器の居場所を作る

 

第2回目のテーマは「それぞれの楽器の居場所を作る」です。

 

同じ場所・周波数帯で複数の楽器が鳴ると、楽器同士の音が打ち消しあって聞きにくくなる(マスキング効果と呼びます)ので、それぞれの楽器を鳴らす場所を分けて居場所を作りましょう。

 

居場所を作るアプローチは大きく分けて2つあります。

 

  • パンを振って音を左右に配置する
  • イコライザーで音を上下に配置する

 

今回のセッションでは既にパンを振った状態で録音しましたが、この時はモノラルの状態から始め、近い周波数の楽器は別々の位置にパンを振っていきました。また、パンを振っても音像のバランスが偏らないようにします。なお、よく言われるテクニックで「パンを振る時はツマミを見ない」というのがあります。笑

 

イコライザーで鳴らす位置を変える

 

20180424_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-2_seq-s-beat

 

一般的に音というものは、高域が出ていると音が上から聞こえ、低域が出ていると下から聞こえます。今回はSEQ-Sを使って楽器同士でこの上下の位置関係を作っていきましょう。

 

SEQ-Sはビンテージ機材をモデリングしたEQではなく、デジタルにしかできないイコライジングを追究したプラグイン。EQとしてはグラフィックイコライザーに近い構造で、Match機能を備えているのが特徴です。この機能を使うと参考にしたい「いい音」の周波数スペクトラムのスナップショットをとり、それを別のトラックのSEQにマッチさせることができます。例えば「あの曲の低音をこのトラックにも使いたい」という場合にも使えるし、テイク違いの録音をまとめる時に音質を揃える時にも使えます。Match機能の詳細についてはこちらをご覧下さい。

http://www.minet.jp/contents/article/seq-s-eq-matching/

 

まずは普通にSEQ-Sを使います。Bervatraの”B-Beat”トラックは中低域にピークがあり、少し濁った感じの音になっていました。そこでSEQ-Sで220-349Hzあたりにピークがあったので、ウインドウ内のコントロールポイントを動かして少しカットします。EQの操作はウインドウ内のコントロールポイントを動かしてカーブを描きます。操作はドラッグ主体なのでコントローラーがなくても操作しやすいです。

 

SEQ-Sはセッティングを深く追い込める機能が特徴で、EQのカーブもを3チャンネル分備えていて、左右のチャンネルやM/Sで違うカーブのEQをかけられるので、ミックスだけでなくマスタリングでも活躍するでしょう。

 


 

ベースの低域を上げる

 

さて、今までのトラックを聞いてみると"K-Analog Synth”のトラックが思ったより低域が出てなく、少し高い位置で鳴っているので、EQで低音を足して重心を低くしていきます。

 

その一方で”K-Pad/Strings”のトラック(セッションは全長9分あるので、このトラックは試聴音源には含まれていません)は、最後の方でベースがレイヤーされてくるのですが、これがいい低音を出しています。ベースの量感を揃える意味でも、"K-Analog Synth”のトラックに”K-Pad/Strings”のトラックと同じような低音を出したいと思います。こういうときにSEQのMatch機能を使います。

 

20180424_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-2_nugen-send

 

Match機能を使う場合は、Nugen Sendというプラグインを使い、マッチさせたいソースとなるトラックにインサートします。ここではK-Pad/StringsにNugen Sendをインサートし、バスの名前を”PAD+BASS”と名付けています。

 

20180424_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-2_seq-s-snapshot-01

 

次にSEQでMatchボタンを押し、スナップショットをとります。5秒間録音してSaveすると、キャプチャーした周波数スペクトラムが青のグラフで表示されます。

 

20180424_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-2_seq-s-snapshot-02

 

次に適用先の"K-Analog Synth”のスナップショットをとります。キャプチャーした周波数スペクトラムが緑のグラフで表示され、この2つの差分がEQのカーブとして適用されます。このカーブはあとからマウスで修正することもできますし、画面下部のDepthパラメーターで適用量が変わるので、音が変わりすぎたと思ったらDepthを少し押さえましょう。

 

20180424_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-2_seq-s-matched

 

それではサンプル音源を聞いてみましょう。ベースの重心がぐっと低くなったと思います。50Hzあたりの低域をかなりブーストしていますが、歪みっぽい感じはありません。SEQ-Sは色付けした音にするのではなく、正確なイコライジングをしている印象です。

 

[試聴:ベースEQなし→あり]

 

なお、EQに限らずエフェクトをかけるときは、エフェクトをかける前と後で音量が変わらないようにしましょう。音量があがるだけで人間の耳は良くなったように聞こえてしまいます。ここではOutput Trimで音量を-9.0dB下げて音量を揃えています。

 

この後は、他のトラックにSEQ-Sをかけてミックスしていきます。Match機能が面白かったので、色々なパートのスナップショットをとって、時にはInvertでEQのカーブを反転させてEQをかけています。基本的には楽器同士の帯域がぶつからないようにバランスをとっています。

こうしてSEQ-Sを使ってみると、普通のEQとはかなり使い方が違うのがわかると思います。DAW付属のEQを置き換える存在というよりは、このMatchのような特徴的な使い方をするEQだと言えます。また、2つのプリセットのパラメーターを周期的にモーフィングさせるMorph機能も面白い効果が得られるでしょう。

 


 

低音はモノラルにしてセンターへ

 

20180424_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-2_nugen-02-top

 

キックやベースなど低音の楽器は、リズムのグルーブとドライブ感のキモとなるので、なるべくモノラルにして中央に定位させます。特にクラブのような大音量の現場では、低域をステレオで広げるとあちこちから低音が回り込んできて、予期せぬ鳴りになることがあります。また、アナログレコードにする時に低域がステレオで広がっていると、針飛びの原因になるので注意しましょう。

 

先ほどキャプチャーしたシンセ・パッドの”K-Pad/Strings”は、後半になるとベースがレイヤーされて入ってきますが、ステレオ成分が多いのでベースの低域だけモノラルにします。そういう時はMonofilterを使って、低音をモノラルにしてセンターに定位させましょう。

このプラグインは、指定した周波数の上下で別々のステレオ・イメージを作れるプラグインです。また、ハイパスフィルターも内蔵しているので、不要なローエンドをハイパスフィルターでカットしつつ、低音成分だけモノラルにして、キックのアタックとなる高い周波数はステレオで鳴らす、といった処理がこれ一台で可能です。モノラルにするときの左右の位相も補正できるので、低域の細かい音作りに向いていて、PA用途にも使えそうです。

 

実際に”K-Pad/Strings”のトラックに使ってみたセッティングが上のスクリーンショット。不要な低域となる30Hz以下をハイパスフィルターでカットして、ベース部分となる120Hzから下をモノラル、パッド・シンセ部分の329Hzから上をステレオで出力しています。こうすることで、ベースだけモノラルになってローエンドに締まりが出て、他の楽器を邪魔しないようになりました。

 

アウトプットするソースも、モノラル成分だけ・ステレオ成分だけといった感じにモニターできるので、音作りもわかりやすいでしょう。

 

さて、ここまで駆け足でNugen Audioのプラグインを使ったミックスを解説してきました。試聴データはこちら。

 

 

仕上がりを聞くと濁った感じが減って奥行き感がでてきたと思いますが、まだミックス前と比べてさほど大きな変化はありません。次回はこの続きで、ステレオ・イメージを調整して音像や広がりを付けていきたいと思います。

 

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さて、ここでお知らせです。僕がオーガナイズしているAbleton Meetup Tokyoが4/27に恵比寿にあるリキッドルーム2階のTime Out Cafe&Dinerで開催されます。このイベントは、各出演者がAbleton Liveの活用事例やTIPSなどをプレゼンテーションしたり、パネルディスカッションを行ったりしています。

4月開催の今回は、初心者向けの内容を特集します。興味のある方は是非遊びに来て下さい!

https://www.clubberia.com/ja/news/10501-Ableton-Meetup-Tokyo-DTM/

 


 

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プロフィール

Koyas

Artist, Producer, psymatics label founder, Ableton Certified Trainer, Ableton Meetup Tokyo founder, LANDR Contents Adapter

 

Koyasは東京を中心に活動しているアーティスト・プロデューサーでエレクトロニックなライブ・アーティスト向けレーベル”psymatics”を運営している。

 

彼はDJ Yogurtと共に数々の作品をリリースし、Fuji Rock Festivalをはじめとする数々の舞台に出演、曽我部恵一BAND/奇妙礼太郎/ケンイシイ等幅広いジャンルのリミックスを手がけた。

 

その後2013年に電子音楽における演奏の要素にフォーカスしたレーベル、”psymatics”を設立し、翌年にはCD HATA(from Dachambo)との即興セッションユニットで作品を発表。psymaticsレーベルは、2015年にイギリスの伝説とも言えるアーティストThe Irresistible ForceのリミックスEP ”Higher State of Mind”を12インチヴァイナル限定でリリースした。

 

彼はそうしたアーティスト活動の一方で音楽機材や制作に深い造詣を持ち、雑誌やwebメディアに音楽制作や機材についての記事を寄稿・翻訳するなど文化的な活動もしている。2014年に日本人として初のAbleton認定トレーナーの一人となり、東京のAbletonユーザーグループ”Ableton Meetup Tokyo”の発起人として定期的にミートアップを開催している。

 

psymatics
http://psymatics.net/

 

Ableton Meetup Tokyo
https://www.facebook.com/AbletonMeetupTokyo/

 


 

関連製品

SEQ-S

 

Monofilter

 

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