FXpansionの個性的なエフェクト・プラグイン3種をDJ Urakenがチェック!
2014.09.12
FXpansionといえば、ドラム音源BFDシリーズが圧倒的に有名ですが、大胆に音を変化させて、サウンド・デザイン的な使い方までできるエフェクト・プラグインやリズムマシンもリリースしているのをご存じでしたか?シンセサイザーに詳しい人なら、思わずあれこれいじりたくなるインターフェイスを備えた3つのエフェクト・プラグインを、fxpansionの故郷、U.K.でも活躍するDJ URAKENさんにレビューして頂きました。
Maulはマルチバンドのディストーション/オーバードライブ・エフェクト。HIGH/MID/LOWの3つの周波数帯(帯域はそれぞれ設定可能)それぞれに、32種類のディストーション・タイプから好きなものを選んでアサインすることができます。この時点で歪み系の音作りとしてはとても幅広い可能性があり、ここで音作りにはまってしまうだけでいくらでも時間が過ぎていきそうなのですが(笑)、さらにTransModモジュレーション・システムによって各パラメーターをLFOやエンベロープ・フォロワー、サンプル&ホールド、外部MIDIノートなどでモジュレートすることができるのがこのMaulの特徴で、自分好みに設定した歪み系サウンドに大胆でクレイジーな変化を与えることが可能です。
3バンドそれぞれをすごくはっきり分離させてディストーションとモジュレーションを設定することができるので、ひとつの音源に対していくつかのレイヤーされた動きをつくることができ、この機能で遊んでいるうちにまたしばらくはまって時間が過ぎてしまいました(笑)。プリセットもバラエティー豊かに用意されているのでサンプル音源ではプリセットを使ってシンセの音に変化をつけてみました。
Etchは2つのフィルターにディストーションとコンプレッサーが組み合わさったフィルター・エフェクト。中央上部のシンプルで見やすいフィルターセクションでフィルターのかかり具合やモジュレーションの動きをわかりやすく把握することができ、簡単にコントロールすることが可能になっています。フィルターのタイプは「JAPAN」「S.V.F.」「FATTY」「COMB」の3つが用意されていて、それぞれのフィルターで任意のタイプを設定することができます。ローパス、バンドパス、ハイパス、ピークまたはノッチ・フィルターとの組み合わせによっていろいろなフィルターサウンドを生成することが出来るのですが、そのかかり具合をフィルター・セクションの波形の動きで見てイメージをつけながら、耳で聴いて設定していけるので、目的のサウンドに素早く到達することができますね。
Maulと同じくTransModモジュレーション・システムでフィルターをモジュレートして、それぞれのフィルターに独立した動きをつけることもできるので独創的な動きを備えたフィルターサウンドをつくることが出来ます。サンプル音源ではロングトーンのシンセ音にEtchのエフェクトを加えてクレイジーなFXをつくってみました。
Bloomはテンポシンク、フィードバック、ハイパス、ローパスフィルター、ピンポンなどのディレイとしてのベーシックなパラメーターに加えてモジュレーション、シーケンス機能を備えたディレイ・プラグインです。ディレイとしての基本的な部分の印象はとても素直でナチュラルなサウンドでどんなタイプのトラックにも合いそうな雰囲気です。モジュレーション部分は上述のMaul、Etchと同じくLFOやエンベロープ・フォロワーなどで各パラメーターをコントロールすることができます。
このBloomで注目すべきはシーケンサー部。はじめ、シーケンサー画面をいじりながら音を鳴らしてみても音が変化するのはわかったのですが、どこをどう動かしたらどの音がどんな風に変化しているのかわかりませんでした(笑)。ちょっと困ったので音に集中するのをやめてシーケンサー部を適当にいじりつつ画面を眺めていたら、シーケンサー部の変化に合わせて中段のモデリングパートのパラメーターが動いていることに気がつき、その機能を把握することができました。
このシーケンス機能を使うことでテンポに合わせてディレイタイムを細かく変化させていったり、フリーズさせたり、部分的にリバースさせたりとディレイ音を複雑に変化させることで、もはやディレイなのかなんなのかわからないような音を細かく切ってエディットしているかのようなエフェクト効果を得ることが出来ます。このサンプル音源では、ボイスサンプルにスタンダードなディレイと、プリセットのステレオディレイにシーケンスでリバースを加えたものをかけています。
3つのプラグインとも全てとても個性的で複雑なサウンドをつくることができるのですが、音の変化を視覚的につかむことのできるインターフェイスになっているので、目で見ながら音を聴きつつ設定していけば、素早く求めるサウンドに近づいていくことが出来ると思います。どのプラグインもシンプルな構成ながらもパラメーターの組み合わせによって全く違った音をつくっていくことができるので、使う人によって全く違う可能性が広がるエフェクターだという印象を受けました。編集が楽しくて、奥が深いエフェクト・プラグインと出会うことができたので、今後もトラック・メイキングに使って行きたいですね。
1996年、大学在学中の渡英時に経験したロンドン郊外での大規模レイヴ・イベントに衝撃を受けDJとしてのキャリアをスタート。日本をはじめUK、オーストラリアなどワールドワイドにDJ/プロデューサーとして活躍する。エレクトロニック・ダンスミュージックをベースにしながらもその枠にとらわれない幅広い音楽性が支持され、テレビ、CM、ラジオ、ゲームなど多方面でのサウンドプロデュースを展開。
J-WAVE‘TOKIO HOT 100’でのノンストップ・ミックスやクラブでのDJプレイなど最先端のミュージックシーンの現場での活動をスタジオワークに常にフィードバックし、新たなサウンドを創造し続けている。
2009年にDJ DRAGON とプロデュース集団FIREWORK DJs を結成。2011年春、ユニバーサル・ミュージックジャパンよりFIREWORK DJsとしてメジャーデビュー。リリースしたデジタルシングルが連続でレコチョク総合チャートトップ10 入りし、注目を集める。
制作するほとんどの楽曲においてトラックメイキングだけでなくレコーディング、ヴォーカルディレクション、ミックスダウン、マスタリングまでのほぼ全ての制作過程を自身で手掛けている。