クリエイティブなミックス。言葉では少々イメージしづらいものですが、どのようなものを指すのでしょう。
2015.07.01
スタッフHです。
少し前、とあるエンジニアさんにインタビュー用でスタジオを訪問させていただいた時に、大変興味深いお話を聞かせていただくことができました。
そのエンジニアさんは国内のみならず、国外のアーティストとも多数のお仕事をされており、ご自身もミュージシャンとして活躍もされており、多忙な音楽漬けの日々を送られている方で、携わられている作品はいずれも、ため息がでるほど格好いいのです。
ビンテージ機器をふんだんに使い、最新鋭のプラグインも巧みに織り交ぜる。その方の作品はいずれも「どうやったらこんな独特のトーンができるの?」という疑問が素直にあったので、意を決して聞いてみたのです。人によっては答えようもない、失礼極まりないこととは思いつつ。
そこでエンジニアさんの返答が、
「どうやって、と言われると正直答えに困るのですが、昔からライブはライブ、レコーディングはレコーディングと分けて考えているところがあって、ライブはレコーディングしたものの再現とは考えないようにしています。
だから、レコーディングでしかできない実験をものすごく意識して、絶対にライブでは使えないような機材を使って不思議な響きを作る、ということは多いかもしれません。せっかくレコーディングというクリエイティブな時間を過ごせるのですから、実験をたくさんやりたいですよね。ボーカルに(ライブでは使えなさそうな)コンパクトエフェクターとか通してみると、楽しいじゃないですか」
というお話だったのです。
この時の話を思い出したのは、同じく数々の(間違いなく歴史に残る)名盤に携わってきた、Butch Vigさんのビデオに字幕をつけていたときのこと。
Butch Vig(ブッチ・ヴィグ)さん。Garbageのドラマーであることとともに、ニルヴァーナのNevermind、スマッシング・パンプキンズのGish、この2大バンドのデビューアルバムをメンバーとともに作り上げたのも彼。その他、Green DayやFoo Fightersなど、誰しもが知るレコードをメンバーとともに作り上げています。
Butch Vigさんの特徴的なサウンドの1つといえば、「美しい歪みと揺れ」でしょう。歪んでいながら、ただ攻撃的な音というわけでもなく、音楽そのものにどっぷりと浸ってしまいそうになるほど美しく、そして心地よい揺れがある。
Butch Vigさん自身のバンドGarbageも、これまで携わってきたレコードにも共通したものがある。そこで、Butch Vigさんが「実際にGarbageのミックスでも使った」というWAVES Reel ADTのビデオをひとつ、用意してみました。
使用されているWAVESのReel ADTとは、世界で初めてプラグイン化された、アビー・ロード・スタジオ所有のADT(Artificial Double Tacking)をモデリングしたもの。
サウンドの監修をアビーロードとWAVESが行い、プラグインの制作をWAVESが行ったもの。門外不出の機材だっただけに、このたびのパートナーシップで初めてプラグイン化となったものです。
ビデオでは、Butch Vig本人の口から「Garbageの曲のギターの一部で、いろいろな機材を試していたもののイメージしていた音を作ることができなかった。WAVES Reel ADTを使ったところ、まさにそのイメージ通りとなった」というところから話題がスタートします。
実際のADTは、ビートルズのメンバーが「一回歌っただけで2回重ねたような効果をつくれないものか?」というリクエストに応じてアビーロードスタジオが製作した(諸説あり)とのことですが、ボーカルのみならずどんなソースにもイイ、という内容でビデオは進行。事実、ビデオ冒頭からギターに使ったテストが公開されています。
ビデオ後半は、ガービッチのボーカル、シャーリーの声へWAVES Reel ADTをテストする様子を公開しています。オン・オフを繰り返し、パラメーターを操作する様子は非常に貴重な映像ではないでしょうか。
歪みの神様ともいえるButch Vig。その口から「Reel ADTのDriveは本当によくできている」と語られます。ここは実際に音を聞きながらチェックしていただきたいところです。