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世界中の名作アンプを「自作」できる、BIAS Amp 2登場

2018.03.16

市場には数多のアンプシミュレータ、アンプモデリング製品があります。私の記憶が正しければ、2000年あたりをきっかけにハードウェアのアンプシミュレータ発売と人気が過熱(ただし、私が若かりし中高生のときに発売された初代SANSAMP Classic、これを”きっかけ"と言うべきだ!という意見に、個人的には大賛成です)、数年遅れてソフトウェアのアンプシミュレータが各社から続々と登場しだしました。

 

今ではある程度成熟期に入りつつあるのか「アンプシミュレータは実際のアンプの代用品、あるいは練習用」のような評価は聞こえなくなり、選択肢の一つ、という意見が多くなったかもしれません。レコーディングに、ライブに、日々あらゆるシーンでアンプシミュレータによるギター/ベースサウンドが生まれていることでしょう。

 

私たちが取り扱うPositive Gridから登場したアンプシミュレータ、それがBIAS Amp。はじめにiOSデバイス用のアプリとして登場し、のちにデクストップ(Mac/Win)版がリリースされました。リリース当初からBIAS Ampは大きな話題となりましたが、その最大の理由は「エフェクトは一切なし。アンプをパーツレベルからカスタマイズすることに専念している」ことでした。

 

真空管を違うものにする、現実の組み合わせではありえないヘッドとキャビをコンボする、程度のカスタマイズであれば、もはやどんなアンプシミュレータでも可能になっていることでしょう。珍しいことではなくなりました。ところがBIAS Ampでは、パーツのセレクトだけでなく「どう動作してほしいか」までを決められます。そして、カスタマイズ可能な部分はプリアンプだけでなく、パワーアンプ、トランス、キャビネット、トーンスタックに至るまで、どこでもOK。

 

こんなことを書くと、「アンプビルダーになりたいわけじゃないから、そこまでイジれても使わないよ」と思いましたか?いえいえ、ここをカスタマイズできることは、みなさまのサウンドメイクだけでなく、プレイにも大きなアドバンテージを与えてくれるはずです。

 

そんなBIAS Ampですが、満を辞して2018年2月に待望のバージョン2をリリース。コンセプトは一貫していながら、より強力な製品へと成長しています。この記事では、BIAS Amp 2の解説を行いつつ「そのパラメータで何がかわるの?」も併せてご紹介してまいります。

 

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アンプやエフェクターは、フィルターの塊

とあるアンプビルダーさんからお聞きした言葉で、非常に印象的だった言葉。それが「アンプやエフェクターは、フィルターの塊だからね」と言う言葉。入力された信号に対してフィルターを使って狙いたい帯域をカットまたはブーストし、その信号を増幅させる。それをまたフィルターに通して、また増幅させる。基本はこれが数段重なったものだということ。

 

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BIAS Amp 2ももちろんこの方式に則っており、プリアンプセクション、トーンスタック、パワーアンプ、トランスセクションに多数のEQ、フィルター、トーンを装備しています。例えば「このアンプ、低音弦(巻き弦)を弾いているときの歪み方は気に入ってるんだけど、プレーン弦のほうになるとちょっと細い。でもドライブ量を増やすと、低音弦が歪みすぎる」なんて時は、各セクションのフィルターをカスタマイズすることで好みのバランスが得られるかもしれません。

 

1本がすごく頑張るか、5本が仲良く頑張るか

実際のギター/ベースアンプのプリアンプで、真空管を使って歪みを得る場合。アンプメーカーや種類によってまちまちですが、真空管は1本だけではありません。真空管を多段で組むことで、より激しさ、太さを増した歪みを作ることができます。そしてBIAS Amp 2もこれに則り、プリアンプセクションで真空管の段数を1〜6まで変更可能なのです。

 

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さらに、それぞれの真空管でどれくらいの歪みを起こさせるか、といった調整も可能。「僕は潔く1本で、この1本でガンガン歪ませるぜ」という人もいれば「私は5本の真空管を使うけど、真空管で起こす歪みは最低限に抑える」という人もいるでしょう。実際にこのセッティングを行なった場合、真空管が1本で最大まで歪みを稼いだときにはエッジのある、尖った独特の歪み。真空管5本を使うものの歪みを最低限に抑えたときには、クランチ以下の歪みこそ生まれるものの、柔らかくマイルドな歪み。

 

もちろんこれに真空管の種類や、真空管のバイアス調整をかけることで好みの歪み感をつくることができるのです。激しく歪んでいても弦1本1本の分離感を感じるもの、ほとんど歪んでいないはずなのに、エッジのある鋭いもの。底なしのレンジ感を感じさせるリッチな音まで。

 

なお、プリアンプ、パワーアンプ部は好みに応じて6種類の基本設計から選択することができます。

 

  • Standard:クリーンからメタル、ベースまでをカバーするオールラウンダー。真空管は1〜5段を選択可能
  • Glassy:ローゲイン、クリーン、乾いた音を得意とする、フェンダーブラック系。真空管は1〜2段を選択可能
  • Blues:ブルースギターのオーバードライブに最適なフェンダーツイード系。真空管は1〜2段を選択可能
  • Crunch:伝統的なオーバードライブ、ディストーションサウンドが得意なマーシャル系。真空管は2〜4段を選択可能
  • INSANE:メタル、ジェント系サウンドに適したワイドレンジなアンプ。真空管は4〜7段から選択可能
  • Bass:レンジの広いベースサウンド、クリーンからドライブまでをカバーするアンプ。真空管は1〜4段を選択可能

 


 

どんな回路を作っても壊れないし、消費電力も変わりません

実際のアンプでは、プリアンプでサウンドメイクを行なったものを大幅に増幅させキャビネットを鳴らしますが、この増幅を担当するのがパワーアンプ。プリアンプで作った音をなるべく変えずに増幅だけを行うものもあれば、パワーアンプによってさらに歪みを得るものもあります。かつてギターアンプに「マスターボリューム」なんてものがなかった頃は、欲しい音量=さらに歪む量でもありました。

 

BIAS Amp 2はもちろんこの構成もオリジナルデザインが可能。

 

2018-03-15_bias-amp2-in-depth_enlight15パワーアンプの基本回路構成からカスタマイズ可能で、シングルエンデッド、スプリットロード、プッシュ・プルに加えて、ソリッドステートまで選択可能。もしもVOXやMatchlessがプッシュプル回路だったら…なんて妄想も、妄想だけで終わらないのです。しかも、ここでもまた真空管自体と、その歪みの発生の量、バイアス調整、トーンコントロールが可能。これらの違いで実際のアンプでは消費電力も大きく変わりますが、当然ながら、BIAS Amp 2でそこが変わることはありません。

 

私自身は普段ベースを弾くのですが、プリアンプで得られるような歪みはちょっと苦手。代わりに、パワーアンプで得られるような僅かにゴリっとしたドライブは大好き。強く弾いたとき、歪みよりも太さがでてくるような、歪みになる手前の感じ。この絶妙な調整が可能なアンプシミュレータはありませんでした。

 

さらに、電気楽器にとっての血液ともいうべき、トランス部分。これによってレンジ感が大きく変わります。レンジの広いものだけが最高かというとそうではなく、レンジが狭く、コンプがかかったような頭打ち感の出るものもジャンルやスタイルによって好まれるでしょう。

 

そうです、BIAS Amp 2ではこのトランスでさえ、カスタム(変更だけでなく、その先のデザインまで)ができてしまうのです。ワイドレンジが得られるトランスを使いつつ、コンプっぽさを出す。あるいはレンジの狭いトランスを選びつつ、まったくコンプ臭さのしない音にしあげる。いかようにもデザイン可能です。

 

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実際のアンプで「真空管を自分で変える」「トーンのコンデンサを変えてみる」くらいは電気回路の知識が少しあるだけでもできるでしょう。しかし、トランスを乗せ変えるという作業は、プロのアンプビルダーに任せた方が安全です。そもそも、他のパーツに比べてここを変えるに至る人はそこまで多くないでしょう。しかしながら、血液を変えるほど音に違いがでてくるもの確かです。

 

BIAS Amp 2は、どんなに実際にはあり得ない組み合わせを選んでも音が出なくなったり、本体が故障したりすることはありません。心おきなく、あらゆる付け替え、組み合わせと音の変化について楽しんでみてくださいね。

 


 

1つ、クイズです。

本記事をご覧の多くの方が、ギターアンプ、ベースアンプ好きでいらっしゃることでしょう。ではここで1つクイズですが、

 

「Marshall、VOX、Orange、Mesa/Boogie、Bognerをはじめ、名だたるアンプ・ブランドが採用している共通のパーツブランドといえば?」

 

答えを書いてしまいますが、スピーカーユニットのCelestion(セレッション)です。アンプにこだわりを持つ方なら、数多くのギタリストがシグネチャー・ユニットを作っているブランドとしてもご存知かもしれませんね。

 

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スピーカーユニットはプリアンプ、パワーアンプ、数々のトーンやフィルター、トランスなども全て経て、最終的に「音」になる部分。このもっとも大事な部分に、数多くのアンプブランドはCelestionを採用しています。

 

新しくなったBIAS Amp 2は、このCelestion社とのコラボレーションを実現し、Celestion公認・監修のもとで膨大なスピーカーユニットのキャビネットIRデータが作成されました。これは何より、Celestion社がPositive Gridの技術を信頼、納得したからに他ならないでしょう。

 

長らくCelestion以外のスピーカーユニットを採用しているFenderに、あえてCelestionを搭載する(これは多分、ユニット交換好きな人なら既にお試しかもしれませんね!)ということが可能になるだけでなく、Celestion監修による最高の状態のユニットが再現されているので、付け替え・載せ替えも楽しいものになるでしょう。そして、変更にはドライバーもレンチも必要なく、クリック1つです!

 


 

実在のアンプをキャプチャーするか、自作で追い込むか

BIAS Amp 2には、実在するアンプをマイク収録して、その特性を取り込む「Amp Match」機能があります。友人が所有している素晴らしいアンプ、レコーディングで使用しているスタジオのアンプ。そういったアンプのキャラクターを取り込み、使用することができます。詳しいやり方は別の場所に譲るとして、可能です。

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ただし、BIAS Ampではアンプをイチから自作するかのごとく、カスタマイズできます。

 

プリアンプのベースとなるものを選び、ドライブに使用する真空管と、その挙動を設定、好みのEQモジュールを歴代の名アンプから選択し、パワーアンプでも回路構成、真空管の種類、どう挙動するアンプにするかをカスタマイズ。トランスも各パーツ、振る舞いをカスタマイズし、キャビネットではPositive Gridがデザインした歴代のキャビネットに加え、Celestionと共同開発のもの、そして世界中にあまたあるIR(インパルス・レスポンス)データを読み込むことさえ可能。実在のアンプをコピーすることはBIAS Ampにとって、機能の一部でしかないのです。

 

自分のプレイにあった歪み方をするアンプをデザインする。
ギターのどのポジションを弾いても満足できるトーンのアンプを作る。
プレイやタッチで思い通りの表現をしてくれるベースアンプをパーツから選定する。
エレクトリック・ピアノやシンセを一度通したくなるような、真空管トーンを与えてくれるアンプを作る。

 

BIAS Ampを使い始めたら、ぜひフル・カスタマイズされたアンプを作ってみていただきたいと思います。

 


 

オールドのマーシャルは、全部同じ音を出すか?

世界中からリリースされるアンプシミュレータにも、歴史に残るビンテージアンプやキャビネットの鳴りを再現したプリセットがあらかじめ収録されていることでしょう。これは、BIAS Ampも例外ではありません。一通りのアンプが収録されています。

 

しかし、実在するオールドマーシャルは全て同じ音をしているかというと、決してそんなことはないはずです。管理されている環境、劣化を始めたパーツ、もしかして誰かが僅かに改造を施した痕跡、そして何より、そのアンプを鳴らす場所によって、音はイチイチ違うはずです。

 

BIAS Ampが柔軟なカスタマイズのパラメータを用意している理由は、まさにユーザーの「好み」に合わせてデザインを行なってほしいから。例えばオールドマーシャルのプリセットを読み込んだとしても、「オレが知ってるオールドマーシャルはこんなに歪まない。それが好きなんだけど」と思うのであれば、プリやパワーアンプの真空管ドライブ量を0.1減らすだけでも印象が変わるはずです。

 

Roland JCアンプのプリを真空管にして心地よい歪みを作り、もっとレンジを狭くしてフォーカスする帯域を作り、ブリティッシュスタイルのトランスに載せ替え、セレッションスピーカーで鳴らす。BIAS Ampならそういったカスタマイズが可能です。

 


 

プリセットではなく、借りパク??

BIAS Ampでは、世界中のユーザーとプリセットをシェアできる、Tone Cloudというコミュニティが用意されています。”プリセット” という言い方はBIAS Ampには適さないかもしれません。「日々、自作のアンプをアップロードしている職人が世界中にいる」といった感覚です。そのアンプをダウンロードして、そこからさらに自分好みにカスタマイズすることもできます。しかも、ダウンロードして演奏できるまでは一瞬です。

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シンセサイザー的な意味の”プリセット”とは異なり、接続する楽器も違うはずなので、お互いに体感している音は違うもののはずですが、妙に好みの合うビルダーが世界中にいるかもしれません(私自身は3名ほど目をつけているビルダーさんがいます。その人のアンプをダウンロードし、自分なりに1〜2個のパーツを付け替え。ごくごく僅かに歪むセッティングにすれば、これも1つのマイ・アンプです。あまり育ちのよくない私の言葉で言い換えれば、「借りパク」に近い感覚さえ覚えます。

 


 

もう「似てる・似ていない」だけで語るのはやめて、いいアンプを作ろう

冒頭で書いたように、BIAS Ampは他社のアンプシミュレータ系とはまったく異なる製品。なんせ、自分のアンプをパーツから作ろうぜというスタンスだからです。V1のラストアップデートではやっと(多くのギターアンプに搭載されている)リバーブこそ搭載されましたが、本製品ではアンプを作るということに徹しており、その掘り下げ度はとてつもないと言えます。

 

全ての弦、全てのフレットで、ニュアンスが全て表現できるアンプ。BIAS Amp 2を使っていただければ、それが可能になります。実機に似てる・似ていない、ビンテージに似てる・似ていないは一旦置いておいて、みなさま個々のプレイやタッチにあったアンプを追求してみてはいかがでしょうか。

 

製品詳細

 

BIAS Amp 2.0 アーティスト・レビュー

R・O・N(STEREO DIVE FOUNDATION)

BIAS Amp 2.0

"パッとギターを接続して感じたことは、ミッドからローの表現が非常に気持ちいいこと。各ノブのレスポンスもよく、ダイナミックに変化が得られる印象です。インターフェイスもユーザーフレンドリーで、パラメータもわかりやすいものばかりだったので、好みのサウンドに到達するまでのステップがかなり少なくて済むのではないでしょうか。V1と比較しても真空管の種類が増え、サウンドメイクの選択肢が広がって嬉しいですね。また、Bass Packが非常によかった。今後のベースはこれで行きたいと思っています。お気に入りのIRデータも使用できるし、Elite版は上質なCelestionスピーカーのIRも付属してくるので、せっかくならEliteで使ってみてほしいですね。"

 

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