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Apogee Symphony I/O MkII 導入インタビュー:TK(凛として時雨)

2019.03.13

凛として時雨のフロントマンであるTK氏。楽曲制作のみならず、レコーディングからミックスまで多くの工程でその手腕を振るい、サウンドへの飽くなき探究心をもつクリエイターでもある。そんな氏が制作のメインインターフェイスとして導入したのが、ApogeeのSymphony IO MkIIだ。

Thunderbolt、Pro Tools HD/HDX、SoundGridやDanteなど多くの接続フォーマットに対応し、またユーザーに応じた入出力を選択できるモジュール方式を採用したこのインターフェイスは、Apogeeが「現代最高のインターフェイス」として自信をもって送り出す製品。

極限まで研ぎ澄まされたサウンドを生み出すための相棒として選ばれたSymphony IO MkII。TK氏はどのようなきっかけで導入を決め、その導入は氏の楽曲にどのような影響を及ぼしたのだろうか。


高域だけでなく、同時に低域・中域の密度の高さと圧倒的余裕を感じた

MI

Apogee Symphony I/O MkIIを導入いただきありがとうございます。TKさんは発売とほぼ同時期に導入いただいたので、およそ2年ほど使って下さっていますね。Symphony I/O MkIIの導入以前はどのようなI/Oをお使いになっていたのですか?

TK(Toru Kitajima) 氏(以下TK)

メインのI/OはApogeeではない他社製のハイエンドインターフェイスを使用していたのですが、ADコンバーターとしてApogeeのAD-16やAD-16Xを使って、デジタルでインターフェイスに接続して使っていました。AD-16はかれこれ10年以上使っていましたね。

MI

ADコンバーターといえば、音のキャラクターやレンジ感など重要なところを担う部分ですが、AD-16というと「最新の機器」ではない製品です。長年AD-16を使い続けた理由はあるのですか?

TK

AD-16は純粋に音が好きだから使い続けていました。こういったレコーディング機器ってものすごく進化のスピードが速く、レンジが広くなった、スペックの数値がさらに上がったと年々クオリティが上がっていく。じゃあ常に最新のスペックで、レンジの広い機材を使えば最高の音になるかというと、それは違うかなと感じていました。もちろん最新の機材はチェックしたり使ってみたりしていますが、AD-16でADコンバートした音が一番「自分の音楽にあっている」と感じていたし、長年僕のサウンドの要でもありました。

MI

Symphony I/O MkIIを導入されたきっかけは?

TK

ちょうどコンピューターを買い換えるタイミングで、Firewire接続のインターフェイスが使いづらくなることがあって。じゃあ何にしようかなと考えていたときにSymphony I/O MkIIが登場したんです。音に直結する大事な部分の入れ替えになるのでじっくり自分の環境で試したくて、レコーディングの現場にSymphony IO MkIIのデモ機と、自分のApogee AD-16、AD-16Xを持ちこんでチェックしました。

MI

チェックはどのような環境で行われましたか?

TK

主にドラムレコーディングでチェックをしました。自分のメンバーのドラマーに「ずっと同じこと叩いててくれ」ってお願いして(笑)実際にレコーディングも行なって音を冷静に比較しました。それまで使っていたものと音が違うことは当たり前のことのなのですが、僕はこういうチェックのときにエフェクターとは違って感覚だけで曖昧に判断することをしたくなくて、必ず同じ状況でのA/B比較をして録音したものを自分の環境に持ち帰って、もう一度比べて判断をしたいんです。自分の楽曲にとって合うかどうかを聞き比べたかったんですね。その結果、Symphony I/O MkIIの導入は自分の音楽や音の作り方にとても適していたんです。


表現したい通りの音・音像をしっかりと捉えてくれるのは、大きい

MI

どういったところが好印象だったのでしょう。

TK

こういったレコーディング機器って、進化ともに高い方の周波数特性のスペックが伸びていくもの、と思っていて、実際Symphony I/O MkIIでも上の周波数帯域の美しさも感じたのですが、同時に低域・中低域の密度の高さと圧倒的な余裕を感じて驚きました。

MI

Apogeeとしてもここは力を入れている部分で、単にスペック値を更新することだけを目指さず、音楽的な音であることも同時に目指したそうです。上だけでなく低域〜中低域に余裕があることで、何か作品作りにも影響がありましたか?

TK

僕は自分の歌もあり、ギターも弾きます。例えば僕の楽曲をプロのエンジニアがミックスすると、ボーカルにぶつからないようにギターの痛いところを全部EQでカットして、ボーカルを引き立たせようとしてくれることが多いんです。もちろんそれは間違いではないのですが、僕はそういう「歌とぶつからないように」ということよりも「この音が自分のギターの音」という思いもあるので、どちらも大事にしたいんですよね。

MI

ボーカルだけでなく、作り込んだギターの音にも思い入れは強いということですね。

TK

はい。もちろんボーカルを聞こえやすくするためにギターをEQで引き算するという処理がダメなことというわけではないのですが、そういった「整理」の処理をすることで、自分が作った楽曲の中にあるエネルギーが損なわれてしまうような感覚があるんです。

Symphony IO MkIIでは、低域や中低域に余裕があって、大きなキャンバスが用意されているように感じます。僕はさっき話した通り、プレイヤー目線で出したい音というものが音の被りを整えることよりも優先されてしまうので、録った段階ではそのキャンバスが大きければ大きいほど良いんです。最終的にはそこにびっしり詰め込んじゃいますが(笑)そういった自分の構築の仕方の癖もあるので、レンジに余裕がある音を出してくれるSymphony IO MkIIがとてもしっくりきました。余裕がありつつ、それぞれの音像がしっかりと表現できるということも良かったですね。

MI

音像というキーワードがでましたが、TKさんが思う「音像」とはどういったものを指されているのですか?

TK

「目の前で鳴っている音を感じたまま再現できているかどうか」ですね。ドラムで判断することが多いのですが、ドラムを目の前で聞いたときの音と、マイクを通して聞く音って当然違うじゃないですか。この違いをなるべく少なく、目の前で感じたままの音で録りたいと思っているんです。同じブースの中で感じる音や迫力を録ってミックスすることでやっと自分の音楽の一部になる。これはいかに生音を忠実に再現できるかという意味合いではなくて、目の前でドライブしている音をちゃんと音源でも表現したいという意味です。

MI

特にドラムはマルチマイクなどでレコーディングされることが多いでしょうから、目の前で鳴っている音や迫力をそのままパッケージするというのは思う以上に難しいですよね。

TK

プロのエンジニアさんであれば日々こういったレコーディングをされていると思うので経験値も豊富だと思うのですが、僕の場合は自分のプロジェクトでしかドラムレコーディングをしないので、テクニックや経験値はないほうだと思うんですね。

MI

ご謙遜もあるかと思いますが、たしかに毎日をレコーディングに費やされているエンジニアさんはご判断も早いですよね。

TK

ただ、僕には僕の作りたい音、録りたい理想のイメージが明確にあって、頭の中では「その」音が鳴っているんです。僕はレコーディングをしながら同時にミックスの作業というか、音作りも進めていくのですが、最終形をイメージする上でとても重要な役割を担ってくれています。

MI

「ざっくりとした方針」程度ではなく、レコーディングの時点ですでに最終形の音までを見据えながら作業されているということですか?

TK

はい。Symphony I/O MkIIを導入してからは、少しずつですが純度が高くなったことによって不明確さがなくなり、判断も音作りも早くなりました。表現したい通りの音・音像をしっかりと捉えてくれるのは、大きいですね。

MI

凛として時雨の作品や、TKさんのソロワークなどを聞かせて頂いていても、音の重ね方や奥行き、アレンジにも緻密さを感じます。Symphony I/O MkIIによって理想のサウンドを得られるようになってアレンジにも影響があったのではないでしょうか?

TK

はい、音色は自分のインスピレーションにすごく直結して覆いかぶさってくるので、録った音を聞きながら歌詞を想像してみたり、アレンジも現場で変更してしまうこともあります。ミュージシャンとしても、出ている音に体が反応してフレーズも変化するじゃないですか。音色というものが楽曲に与える影響は、すごく大きいですね。キャンバスが大きいと攻めたり引いたりのバランスの選択肢が増えますからね。

MI

TKさんはハードウェアのコントローラー、Apogee Control Remoteもお使いになっていますね。使い勝手はいかがですか?

TK

めちゃくちゃいいですね。この手のコントローラーってI/O本体に接続しないといけないものが多い中、Apogee Control Remoteはコンピュータ本体に接続できることも素晴らしい。バスパワーで動作しますしね。

MI

楽器の近くにI/O本体を置き、レコーディングを行うコンピュータ本体を手元に置いてApogee Control Remoteでコントロールする、といった配置も可能になりますね。モニターの切り替え、ミュートだけではなく、自分で好きなファンクションを8個カスタム・ボタンにアサインして使えます。


やっぱりApogeeの音が好き

TK

Symphony I/O MkIIの導入は音質面だけでなく音楽的にも大きなプラスがあったのですが、この導入で改めてApogee AD-16の良さも再発見できました。今となってはレンジもSymphony I/O MkIIや他のADコンバーターに比べて狭い機器ですが「レンジが狭いからダメ」ではなく「凝縮されている良さ」を感じられて、今度また使おうかなと考えているところです。これにしかない音というものがあります。自分の慣れもあると思いますが、やっぱりApogeeの音が好きなんだと思います。

MI

AD/DAのクオリティを黎明期から追求しつづけているApogeeにとっては、何より嬉しいコメントです。

TK

もちろんSymphony I/O MkIIは今のAD/DA、オーディオインターフェイスとしてワンランク上にあると感じています。最初重心は低めに感じましたが、ヘッドフォンアウトのクオリティも高いし、入出力の拡張も柔軟ですよね。僕はアナログ16イン16アウトのモデル(Symphony I/O MkII 16x16)で使っていますが、ドラムをレコーディングすることを考えるとこのくらいの入力がどうしても必要でした。もちろん、自宅で歌だけ録れればいいという人なら、もっと入出力の少ないモデルも選択できる。今の自分の音楽にとって一番適しているものに出会えるということは曲作り、音作りにおいてとても重要なことだと思います。


TK(Toru Kitajima)

凛として時雨のフロントマンでボーカル&ギターであり、全作曲、作詞、エンジニアを担当し鋭く独創的な視点で自らの音楽を表現している。
ソロプロジェクトである「TK from 凛として時雨」では、ピアノ、ヴァイオリンを入れたバンドスタイルから、単身でのアコースティックまで幅広い表現の形態をとっている。

2014年リリースのシングル「unravel」は、アニメ「東京喰種トーキョーグール」のOPとして、大ヒットを記録。
その他にも、SMAP、安藤裕子、Aimerなどアーティストへの楽曲提供を行うなど幅広く活躍している。
2019年春公開のアニメーション映画「スパイダーマン:スパイダーバース」日本語吹替版の主題歌に起用が決まっている。

Symphony I/O MkIIで収録にされたTK from 凛として時雨「P.S. RED I」が主題歌にフィーチャーされた「スパイダーマン:スパイダーバース」日本語吹替版、2019年3月より絶賛公開中です!

TK from 凛として時雨

シングル「P.S. RED I」

2019.3.6 out

○初回生産限定盤[CD+DVD] AICL-3663~4:¥3,400(tax out)

※トールサイズ・デジパック仕様/DVD:スタジオライブ+ドキュメンタリー+インタビュー映像収録

○通常盤[CD] AICL-3665:¥1,400(tax out)

【Disc1 (CD)】

  • P.S. RED I / 2. moving on / 3. P.S. RED I (Instrumental)

【Disc2 (DVD)】

TK from Ling tosite sigure Studio Live Session & Documentary at LANDMARK STUDIO

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