2018.04.17
作曲家、編曲家、プロデューサーとして長きに渡り第一線で活躍し続けている水島康貴氏。Ribbon、Wink、光GENJIなどのアイドルグループから、Zoo、稲垣潤一、ゴスペラーズ、SPEED、EXILEなど、さらにはアニメや映画音楽まで幅広いサウンドを手がける水島氏は、音へのこだわりや探究心も強い。
そんな水島氏が導入したのが、至高のオーディオIO、Apogee Symphony I/O Mk IIだ。水島氏にはこれまでのオーディオIOの遍歴や、Symphony I/O Mk II導入に至ったきっかけ、そしてコンポーザー/アレンジャーにとって導入すべきメリットなどを語っていただいた。
MI
このたびApogeeのSymphony I/O Mk IIを導入してくださったとのことですが、Symphony I/O Mk II導入以前はどのようなIOを使用されていたのですか?
水島康貴 氏(以下 水島)
基本的にApogeeの音が好きなので、個人のスタジオでは長いことFireWire接続のEnsembleを使っていました。初めてこれを試したとき、そのサウンドの良さに感動して「(それまで使っていた)こんなIOを使っている場合じゃない!」と導入を即断したことを覚えています。Apogeeの良さに目覚めた瞬間でしたね。
MI
2007年にリリースされた、シルバーパネルのEnsembleですね。どのようなところに良さを感じていましたか?
水島
マイクプリもADコンバーターも大好きで、特にドラムのレコーディングでは「これじゃないとダメ」と言うほど気に入っていました。自分が思う「ドラムの音」がちゃんと録れていたんです。胴鳴りの部分、重心の低さ、つまり腰にくる部分がしっかり抑えられているかどうか。ドラムは楽曲の土台ですから、アレンジャーとしては「リズムがこの音で録れていれば、上に音を組みやすいな」という感覚もあります。最新のOSで使えなくなるまで使い倒しましたね。
MI
Ensemble(FireWire)の後はどのようなIOを?
水島
複数のオーディオIOをMac OSの「機器セット」で1つのIOにまとめて使っていました。その中にはやはりApogeeのThunderboltもあったし、他社の高価格帯のIOも、それにDSP内蔵のIOもありました。僕の場合はPhoenix Audioのサミングミキサーにパラアウトしてまとめるというルーティングなので、アナログアウトプットの数が必要なんですね。
MI
いずれの製品も今なお一線の製品ばかりです。
水島
そうですね。僕自身もあまりちょくちょくオーディオIOを変えたいとは思っていないのですが、知り合いのエンジニアがまさにSymphony I/O Mk IIを使っていて、おすすめしてくれたんです。複数のIOを減らしたいなとは思っていたので試してみたところ、これが非常に印象がよかったということで導入に至りました。
MI
Symphony I/O Mk IIを使用された第一印象はいかがでしたか?
水島
まず他のIOと比較して圧倒的に広いレンジを感じました。下の帯域から上の帯域まで驚くほど余裕がありますね。Apogeeの音は先ほども話した通り好きなのですが、伝統あるApogeeの音は継承しつつ「さらに高品位」ですね。以前にも増して密度の高さもあり、僕としては安心して使えるIOだなと思いました。
MI
コンポーザー、アレンジャーの立場からみて、高品位なIOを使うことでどのような部分に違いが生まれてきますか?
水島
レンジが広くなり、天井も高く床も広くなった印象を言い換えると「キャンバスが広くなって、自由に絵が描ける」ような状態。曲作りやアレンジをしていく上でキャンバスが広いということは、サウンドの構築が楽になることを意味しています。土台のしっかりしたサウンドの上に余裕をもって音を重ねたり、思うがままに配置できるようになりました。
MI
水島さんが感じられている通り、Mk IIになってAD/DAカードが一層強力なものにリファインされました。
水島
僕の場合はもう1つ大事なことがあって、ミックスはエンジニアに任せることになりますから、自分のスタジオで作ったときの印象とエンジニアのスタジオで聞いたときのサウンドに「誤差」がないことも重要です。エンジニアのところにデータを持ち込んで、曲を展開したときに「あれ?こんな音だったっけ?」ということが起きてしまってからでは遅いのですが、Symphony I/O Mk IIは以前まで使っていたIOに比べてもその誤差がない。この音なら共通の言語でエンジニアと会話ができているな、という確信が持てます。
MI
水島さんは8×8のコンフィギュレーションでお使いですね。インプット、アウトプットには何を接続されていますか?
水島
このスタジオではボーカル録りを行うくらいなので、インプットにはお気に入りのアウトボード数台をつないでいます。アウトプットはフルで使用していて、先ほど話したPhoenix Audioのサミングミキサーに全てパラアウトしています。これに繋ぎたかったので、8アウトを装備したモデルが必須でした。また、さらに入出力が欲しくなってもSymphonyなら拡張もできますからね。
MI
サミングミキサーへはどのような構成でアウトしていますか?
水島
シンセ、ピアノ類をまとめたステムで2ch、ドラムをまとめたもので2ch、パーカッションやループで2chで、そしてボーカルとベースをそれぞれモノラルで1chづつ。計8chですね。実は他のIOも未だに併用していて、それ以外の楽器はこの他社のIOを使ってサミングミキサーにアウトしているのですが、楽曲の中で土台となるものと、主役になるものは全てSymphony Mk IIからアウトするようにしています。これじゃないと、僕としては困ります。他社のIOではレンジが狭かったり、まだ色付けがあるように感じてしまうんですね。
MI
IOによってつけられる「色」は、避けておきたいポイントですか?
水島
もちろん、色付けがあること全てが「ダメ」とは思っていません。でも色付けによって “なんかいい感じに変化したな” と思い込み「安心してしまう」ことがあまりいい結果を産んでこなかったのも事実。やはり、元の音から満足のいくもので仕上げたいという思いの方が強いですね。
MI
なるほど、良いか悪いかは別として「変化した」ということで音作りの仕上げがおろそかになってしまうということですね。
水島
これが積もり積もると、先ほど話した「エンジニアのところに持ち込んで聞いたときの誤差」になってしまうんです。こんな音で作ったはずじゃなかった、みたいな。この誤差が楽しめる範囲であればいいですが、そういうことは滅多にない。だからクリーンなIOで曲作りやアレンジを見渡していたいんですね。Symphony Mk IIを最終ジャッジするときも、ここを一番重要視しました。結果、非常にいいセレクトができたと思っています。
MI
先ほど水島さんも触れてくださった通り、Symphony I/O Mk IIは拡張性も魅力です。追加されたい構成はございますか?
水島
今入っている8chほどまではいらないけど、せめてもう4アウトくらいあれば、ギターなども全てSymphonyからサミングミキサーに送れるのにな、とは考えています。でも、8chからしかないんですよね?
MI
実はつい先日、新しく2×6 SEというモジュールがリリースされまして、こちらはアナログの2イン・6アウトを持つ構成となっています。
水島
本当!?確かに今考えている構成としてはベストなモジュールですね。自分のスタイルにあった拡張ができることは、嬉しいことですね。
水島康貴
1965年生まれ。玉川大学作曲科卒業。
1986年 EastWest86 本戦にてベストキーボード賞を受賞。
バンド活動を経て1990年アレンジャーとしてデビュー!
アレンジを佐藤準氏に師事。
Ribbon、Wink、光GENJI、などアイドルグループからZoo、稲垣順一、ゴスペラーズ、SPEED、EXILE、などアーティスト、またGUNDAM、トランスフォーマー、テニスの王子様などのアニメやキャラクターソング、映画など様々な楽曲の作曲・アレンジ・プロデュースを担当。数々のミリオン楽曲に関わっている。
SPEEDに関してはデビューから解散まで全楽曲のアレンジを担当しシングル曲総売上1000万枚を記録。全アルバムミリオンを記録!
年末の格闘技のイベントPRIDE、DYNAMITEは始め、格闘家魔裟斗、格闘家吉田秀彦引退試合のオープニング曲、美空ひばり追悼コンサートアレンジ、早乙女太一舞台音楽など大きなイベントでの迫力、スケール感のある音楽を担当。活動の幅を広げている。
2018年現在ハイキックエンタテインメント所属。尚美ミュージックカレッジ講師も務める。
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