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Nugen Audio + ableton live!ベッドルーム・プロデューサーに送る完パケテクニック

2018.04.11

今回からNugen Audioのプラグイン記事連載を担当することになりましたKoyasです。

普段はアーティスト活動しながら、Ableton認定トレーナーとして東京のAbleton Liveユーザーグループ=Ableton Meetup Tokyoを運営しつつ、細々とレーベル運営などもしています。どうぞよろしくお願いいたします。

 


 

ここ数年で音楽を聞く手段が著しく多様化していることは読者の方もご存じだとは思いますが、音楽を世間に向けてリリースするという行為も以前よりとても簡単になっています。やろうと思えば今日できた曲をすぐにでも配信プラットフォームに乗せて販売することが可能なのです。

そんな時代だからこそ、ミキシング・マスタリングまで全て自分でやるインディペンデントなプロデューサーも珍しくないでしょう。

しかし、自分でマスタリングした楽曲がそのままの音で再生されるとは限りません。iTunes・Spotify・YouTubeそれぞれにラウドネス(音圧)が規定されていて、楽曲の音量もそれにあわせて調節されます。また、音声データのフォーマットもAACやFLACなどプラットフォーム毎に違いがあります。

果たして自己流のミキシング・マスタリングが様々なプラットフォームで通用するのか…、ちゃんとしたマスタリングスタジオに出せればお任せでできますが、DIYでやる場合には自分の音を客観的に測定し正しく補正するツールが必要になってきます。

そこで今回の連載で紹介するのは、自分でミックス~マスタリングするときの補助をしてくれる、Nugen Audioのプラグインです。

 

この連載ではDAWにはAbleton Liveを使用し、音源は実際にセッション録音したNugen Audioのプラグインを使用して、ミキシング~マスタリングまで完パケしていきます。

 

20180409_koyas-nugenaudio-ableton-live-tutorial-1_img_9864

 

使用する音素材は、環境音をリアルタイムでサンプリングしてそのままループさせてテクノにするShinichi Suda/TwothとKosaku Shimamotoによる2人組のユニット=BERVATRAと僕によるセッション録音です。レコーディングは新木場にあるクリエイティブ・ラボで行われました。トラック数も多くなく、この記事にぴったりな内容です。

 

20180409_koyas-nugenaudio-ableton-live-tutorial-1_bervatra_artistpic2018

 

このセッションでは、BERVATRAがその場の音をサンプリングしてビートなどトラックのベーシックな部分を担当し、僕がシンセなどの楽器を演奏しています。全て即興で演奏されているので、環境音を主としたBERVATRAの音は後で補正や加工が必要になることもあります。録音後の段階でNugen Audioのプラグインを使用することで、意図しない(そして美味しくもない)音をどう発見し補正していくか…それが今回の連載のテーマでもあります。

録音後はお互いデータをやりとりしながら編集作業をして、これからミックスダウンをするといった段階です。

原曲は9分近くある壮大なセッションですが、ここでは試聴用に短めにエディットしています。また、音量を揃えて聞きやすくするためオンライン・マスタリングサービスのLANDRを使っています。音圧は低めに設定し、なるべく原音に忠実にしています。

 

20180409_koyas-nugenaudio-ableton-live-tutorial-1_01-overview

 

Session with bervatra-2mix-for_MINET

 

さて、ここからミックスをしていく訳ですが、読者の皆さんはどういった手順でミックスしていますでしょうか?

良くあるセオリーとして、まずはフェーダーだけ使ってバランスをとる、といわれています。

最初から気になった箇所にEQやコンプなどプラグインを挿しまくると手順がぐちゃぐちゃになり、最終的な仕上がりが見えなくなります。そうならないように最初はエフェクトは何も使わずに音量だけでミックスをする訳です。

今回はセッションを録音したときに既に音量のバランスを取ってあるので、ここでは微調整にとどまります。となると、次の疑問として「全体の音量はどこまで上げればいいの?」と思う方もいるでしょう。

 

20180409_koyas-nugenaudio-ableton-live-tutorial-1_01%e2%88%92headroom

 

僕がミックスする時は、ピーク時のメーターが-6dBを指すようにしています。これをヘッドルームを6dB空ける、といった言い方をします。この値に特に規程はなく、もっと小さい音量で作業している人もいますが、ヘッドルームを空けておくとマスタリングまでの工程が楽になるといわれています。

というわけでヘッドルームを空けるため、マスタートラックにVisualizerをインサートして音量をみてみましょう。

 

20180409_koyas-nugenaudio-ableton-live-tutorial-1_01-visualizer

 

挿した瞬間に「おっ」と思ったのはそのレスポンスの良さ。表示も綺麗に色分けされていてグラフィカルで高い視認性を持ちます。

表示できる項目は周波数スペクトラムやレベルメーターだけでなく、音量やステレオイメージのスペクトログラムや位相のベクタースコープなど、おおよそアナライザーに求められているものは網羅しています。

 

20180409_koyas-nugenaudio-ableton-live-tutorial-1_01-visualizer-02

 

表示する項目は簡単な操作でカスタマイズ可能で、ウインドウの大きさもリサイズできます。印象的だったのは、速いレスポンスで多岐にわたる情報を表示できる割には、CPU負荷が低いこと。個人的には今まで触った中で一番使いやすいアナライザーだと思いました。

 


 

20180409_koyas-nugenaudio-ableton-live-tutorial-1_01%e2%88%92isl2

 

さて全体的に音量を揃えたら、マスターチャンネルにリミッターのISL2 STをインサートします。ヘッドルームを空けてあるので実際にリミッターが動作する訳ではありませんが、突発的なピークに備えて保険としてリミッターを入れておきます。

このISL2は、トゥルーピークもリミッティングできるリミッターなのが特色です。これは音声信号をデジタルからアナログに変換したり、何かしらのリサンプリングをするときに、各サンプルの間で発生する予期せぬピークです。サンプリングされたの各サンプルの間で発生するのでインターサンプルピークと呼ばれています。

わかりやすい例で言うと、マキシマイザーでクリップするギリギリまで音量をつっこんだ後にMP3など圧縮音声に変換すると、トゥルーピークによるクリップノイズが発生します。

 

ISL2を実際に使ってみると、リミッターとしてのキャラクターは色付けのない無色透明なので、純粋にこうしたピークを抑える用途に使いやすいリミッターです。

設定出来るパラメーターは一般的なリミッターと共通していますが、特徴的なのは"TPLim"のパラメーターでトゥルーピークをどの程度押さえるか設定出来るところ。なるべく原音を保ったままトゥルーピークを抑えたい場合は、このパラメーターでセッティングを追い込むことができます。

 

次は、リミッターなら音量を突っ込めばマキシマイザーみたいに使えるかな…と音量を突っ込んでみました。根が色付けしないキャラクターだけに、こうした使い方はEQなど併用して追い込まないと歪みっぽくなり、お手軽に音圧アップできるツールとは用途が違う印象です。

こうしてISL2を試してみると、音を変えたくはないけどピークだけはしっかり抑えたいという時に有効です。今回のようにヘッドルームを空けている場合は、リミッターをオン・オフしても音の変化はわかりませんでした。

さて、ここまでNugen Audioのプラグインを紹介してきました。ここまでの印象は「大量のプリセットで簡単にいい音出せる!」みたいなインスタントなプラグインと言うよりは、職人の道具箱に相応しい業務用といった感じです。

今回はミックスのごく最初の段階まででしたが、次回からは各チャンネル毎に音作りをして追い込んでいきたいと思います。

 


 

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プロフィール

Koyas

Artist, Producer, psymatics label founder, Ableton Certified Trainer, Ableton Meetup Tokyo founder, LANDR Contents Adapter

 

Koyasは東京を中心に活動しているアーティスト・プロデューサーでエレクトロニックなライブ・アーティスト向けレーベル”psymatics”を運営している。

 

彼はDJ Yogurtと共に数々の作品をリリースし、Fuji Rock Festivalをはじめとする数々の舞台に出演、曽我部恵一BAND/奇妙礼太郎/ケンイシイ等幅広いジャンルのリミックスを手がけた。

 

その後2013年に電子音楽における演奏の要素にフォーカスしたレーベル、”psymatics”を設立し、翌年にはCD HATA(from Dachambo)との即興セッションユニットで作品を発表。psymaticsレーベルは、2015年にイギリスの伝説とも言えるアーティストThe Irresistible ForceのリミックスEP ”Higher State of Mind”を12インチヴァイナル限定でリリースした。

 

彼はそうしたアーティスト活動の一方で音楽機材や制作に深い造詣を持ち、雑誌やwebメディアに音楽制作や機材についての記事を寄稿・翻訳するなど文化的な活動もしている。2014年に日本人として初のAbleton認定トレーナーの一人となり、東京のAbletonユーザーグループ”Ableton Meetup Tokyo”の発起人として定期的にミートアップを開催している。

 

psymatics
http://psymatics.net/

 

Ableton Meetup Tokyo
https://www.facebook.com/AbletonMeetupTokyo/

 


 

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