2011.09.21
スタッフHです。
連載でお伝えしているSonnox QuickTips。前回ポストからちょっと時間が開いてしまいましたが、本日はOxford SuprEsserを使用したミックステクニックです。このSuprEsser、非常に新しいタイプのプラグインでして、中身をご存じない場合には「なんでそんな事ができるの?」と魔法のようにすら感じられるかもしれません。
ミックスをしているときをイメージしてみてください。
例えばスネアを処理しているとき。スナッピーの効いた小気味の良い音がレコーディングできたんだけど、ミックスの時に聞き返してみたら、ちょっとハイミッド辺りの音が耳に痛い。EQで痛い部分を削ろうとする→スネアの音がまるで変わってしまう。コンプで潰して丸みを出そうとする→全体が潰れてベタっとした音になっちゃった。
例えばボーカルを処理しているとき。自慢のマイク、マイクプリで最高の音でレコーディングできた。…のはずだったのに、ある歌詞を歌うときだけなぜかコモって聞こえる?その部分だけリージョンを切って、別トラックで処理してみようとする→前後と質感が合わない。やっぱりEQで処理しよう→ボーカル全体が軽くなっちゃった。
例えばベースを処理しているとき。全体のサウンドは問題ないはずなのに、4弦5フレットのAの音の時だけボボボーンと音が飛び出して、しかも膜が貼ったような気持ち悪さ。ベース本体のデットポイントなのか、弾き方に問題があるのか…コンプで潰して引き締めようとしたら、サウンド全部が潰れてしまい、余計にサウンドが訛ってしまって悪循環…。
もちろん、こまかくリージョンを切り分けたり、サンプル単位でオートメーションを描いてボリュームを変えたりすることである程度は良くなるかもしれませんが、これが一発で解決するなら、その作業時間でアレンジを練ったり、次の作曲を始めたりできますね…。
何はともあれ。ムービーをご覧いただきましょう。本日は約4分のビデオです。
いかがですか?SuprEsserが「かかって欲しい帯域だけ」に「かかって欲しい瞬間だけ」動作している事がお分かりいただけたかと思います。
もちろん、SuprEsserがなくたって、お持ちのEQを使って時間と根気と…あとは器用にオートメーションカーブをかけられる腕前があれば、同じ事ができるかもしれません。でも、その時間があるならもっと他の作業に費やしたいですよね。
SuprEsserの動作範囲内で、常に赤い棒が立っていますが、これがサウンドを常に監視している「監視モニター」。入力されるサウンドに応じて常に動き回っているのがわかりますね。
コンプレッサーは便利ですが、入力されるレベルに応じて常に動作してしまいます。コンプレッションしてほしい瞬間にかかるとは限りません。
気になる所だけをEQする、というのもアリですが、前後と質感が変わってしまう可能性もあります。
その点、上でも書きましたが、SuprEsserなら「かかって欲しい帯域だけ」に「かかって欲しい瞬間だけ」なんですね。
SuprEsserは名前から推測するような「単なるディエッサー(のお化け)」ではありません。かけたい楽器がなんであれ、かけたい帯域が耳に痛いハイだけじゃなく、ミドル、またはローエンドだったとしても。時にはトータルミックスにさえかけることができます。そして、悪いところがなければ基本的に音は一切変えないのです。入力されるサウンドに応じてコンプレッションが大きくなったり、軽くなったりするんですね。