2019.06.17
MI
エンドウアンリさんにはパワーアンプ付きのアンプヘッド、BIAS Rackを導入いただきました。メジャーデビューとなる記念作「Telepath Telepath」のMVにもBIAS Rackが登場していて、私たちスタッフもかなり喜んだのですが、Positive Gridというブランドは以前からご存知だったのですか?
エンドウアンリ(以下 アンリ)
2017年末頃に知りました。新しい音源の制作をしている時期でどういうギターの音にしていくのが僕らの楽曲の魅力を一番引き出せるのか試行錯誤していました。僕らの曲は5150系が合いそうなものもあれば、Matchless系が合いそうなものもあって、レコーディングを進めている中でも右往左往が起きていて。
MI
PELICAN FANCLUBの楽曲は1曲の中でもサウンドの色彩が豊かですもんね。
アンリ
これを対処するためにエフェクターとかデジタル・アンプ、アンプシミュレータのようなものを揃えてみようかと思ったのですが、やりたいと思うことを実現しようとすると、かなりの金額になってしまう...(笑)と悩んでいたときに、エンジニアの方がBIAS Headを紹介してくれたんです。やりたいことが全部できそうなのに、値段が思ったほど高くなかったこともあってすぐ導入しました。
MI
音作りにはすぐ慣れましたか?
アンリ
最初は結構とまどいが大きくて、マイクの位置を変えたらどうなるとか、真空管を変えたらどうなるなんて分からなかったのですが、BIASを紹介してくれたエンジニアさんと一緒に音を作っていく過程でしっくりきて「このアンプ、めちゃくちゃ使えるな!」と思う音を作ることができました。しかも、その音を聞いた周囲の関係者から次々と「音が良くなったね」って言われるようになって、これは自分でも驚きでした。レコーディングの現場なら冷静に自分でも判断できますが、ライブの会場だとメインスピーカーからどう音が出ているかというのは自分自身では分からないですから。だからこそ、外の現場で音がいいと言われることは嬉しいですね。
MI
BIAS Rack導入以前とライブで変わったところはありましたか?
アンリ
以前使っていたアナログのアンプは、良くも悪くも「扱いづらい」アンプで、メモリを1ミリ変えただけでガラッと音が変わってしまうようなアンプだったんです。昔はよく「ライブと音源で全く音が違うバンド」なんて言われてしまうこともあったのですが、BIASになってからはそんなことはなくなったので、今ではライブも全てBIASです。レコーディングでも使うようになったので、スタジオで作ったアンプをそのままライブでも使えるというのは自分で演奏していても違和感がない。
MI
違和感がないことは、重要ですよね。
アンリ
なにか1箇所でも違和感が残ったままだと、シンプルに気持ちが乗らないですよね。ライブ会場のアンプを借りて使うこともあったのですが、当然ながらイメージしている音とは全然違うから、なかなか楽曲の世界観を100%は表現し切れないんです。アナログのアンプはもちろん大好きだし、そのアンプが悪いということではないんですが、楽曲のことを考えると思い通りの音が出せるほうがいい。BIAS Rackには安心感がありますね。アンプヘッドを10何台もステージ上で使い分けるなんて、普通はできないことですから。今はもう、ライブは全てBIAS Rackのみです。
MI
安心感があるという評価、大変嬉しいです。サウンドはいかがですか?
アンリ
ちょうどプリプロでメンバーやスタッフさんとも話していたのですが、最近のデジタルアンプって歪みのトーンはどの製品もすごく研究されていて、素晴らしいと思うんです。でも、クリーントーンを美しく表現できているアンプってないよね、という話をしていたのに、BIAS Rackは全員で「全然違和感ない」という評価。それだけじゃなく、むしろピッキングのニュアンスがアナログのアンプよりも出ているよね、と。僕はThe CureとかThe Smithのようなクリーンの音が好きなんですが、ああいったバンドのクリーンって他のアンプシミュレータでは全然再現できなかったんですよ。
MI
例えば同じ「トランジスタ系のピュア・クリーン」といっても、BIASで調整できる回路設計は多岐にわたります。回路をエディットして自分のピッキングに合わせた挙動をつくることができるので、エンドウさんはそういったところを感じ取られているのかもしれませんね。
アンリ
回路設計というと難しく聞こえるけど、これほど感覚的に使えるアンプもないですね。どう選んだって壊れることはないから(笑)ベースとなるアンプを選んで色んなパラメータをいじってみるだけ。使い込むことに頭を悩ませる要素が全然ないんですよ。シンプルに「研究したくなるアンプ」という印象ですね。
MI
PVにBIAS Rackが登場する『Telepath Telepath』は、イントロから鳴っているギターサウンドが印象的でしたが、これは実際にBIAS Rackで作ったアンプを使われたのですか?
アンリ
嬉しいですね。僕もあのギターの音はすごく気に入っています。もちろんBIAS Rackで作った音で、憧れのミュージシャンの音を聴きながらBIAS RackにPCを繋げ、かなり細かいところまで意識しながら音作りをしましたね。パーツを入れ替えたり挙動を変えるのはもちろん、マイキングにも時間をかけました。
MI
可能なら、アルバム制作でエンドウさんが作られたアンプを「Tone Cloud」に公開していただきたいですが....
アンリ
いいですよ!この記事を読んでくれたバンドマンの方とか、僕たちのコピーバンドをしてくれている人がいたら、僕が作ったこのアンプを使ってライブとかしてほしいですね。
アンリ
メジャーデビューから半年経っての新作ですが、BIAS Rackを使用して丸一年が経ちます。元来、僕は曲中にギターの音の表情を大きく変えたい、大袈裟に言えばアンプを曲中に変えたいと思うことが多かったので、以前はABボックスで2つのアンプを使用していました。しかし、BIAS RackはスイッチャーによるMIDI操作をすれば2つどころか3桁を超えるアンプの設定をプリセット出来ます。
今作は4曲入りのe.pなのですが、全て別の設定でそれぞれ思い通りの音を再現しています。リードトラックである「ベートーヴェンのホワイトノイズ」を始め、先ほどにも言ったように曲中のAメロ、Bメロ、サビといったセクションごとにアンプを変えています。
アンリ
また、BIAS Rack導入前は結構歪んだ音でやっていたのですが、導入してからはクランチまでも行かないクリーントーンでリフを弾くという選択に至りました。クリーンでリフを弾くって、存在感がなくなってしまうのではないかという不安から勇気が要るんですよ。でもBIAS Rackでの音作りが本当に楽しくて、手応えを感じながら探ることができたので、結果的にクリーンで。アレンジと共にトーンを追求できて、かつBIAS Rackならではのアンプの豊富さで視野が広まったことが良かったなと感じています。
エンドウ アンリ
PELICAN FANCLUB
エンドウアンリ(Vo&Gt)カミヤマリョウタツ(Ba)シミズヒロフミ(Dr)からなるロックバンド。
シューゲイザー、ドリームポップ、ポストパンクといった海外音楽シーンともリンクしながら、確実に日本語ロックの系譜にも連なる、洋邦ハイブリッドな感性で多彩な楽曲を生み出す。Vo&Gtエンドウの持つカリスマ性を柱に、光と闇の両極を鮮やかに描き出す楽曲の振り幅が持ち味。
また、ステージとフロアの境目をなくしたゼロ距離ライブ”DREAM DAZE”を定期的に開催するなど、独自の視点を持った活動も魅力。
2017年、インディーズでフルアルバム「Home Electronics」を発売。2018年6月、会場限定シングル「ガガ」を発売し、7月にはメジャー進出を発表。
2018年秋、ミニアルバム「Boys just want to be culture」でKi/oon Musicよりメジャーデビューを果たす。
PELICAN FANCLUB「Whitenoise e.p.」
2019年6月26日(水)発売
初回生産限定盤(CD+DVD)KSCL-6332~3 ¥2,130 w/o tax
通常盤 (CD) KSCL-6334 ¥1,250 w/o tax
【CD】
【DVD】
「PELICAN FANCLUB ゼロ距離ワンマンライブ“DREAM DAZE”東京編 -2019.4.13 恵比寿LIQUIDROOM-」ライブ映像