CRAIG ANDERTON: MPE defines the future of electronic music

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WHAT’S MPE?
MIDI POLYPHONIC EXPRESSIONについて

2019.11.07

MPE(MIDI Polyphonic Expression)とは

従来のMIDI情報では不可能だった、「複数のノートなど多次元の演奏情報を同時にコントロール」できる新しいMIDI規格、それがMPEです。

ピッチベンドを例にみてみましょう。下図のように複数ノートをおさえてコントロールを行う場合、従来のMIDI情報ではAの音もBの音も、同時にピッチベンドが適用されてしまっていました。

従来のコントローラーでは押さえた音全てに同じピッチベンド情報が適用されます


ところがMPE対応のコントローラー、ソフトウェアを使用することで、指ごとにピッチベンド情報を独立して扱うことが可能です。

MPEでは複音のうち1音だけにピッチベンド情報を与えることが可能です


MPEなら上記のようなピッチベンドはもちろん、モジュレーション、その他エクスプレッション情報もノート個別に適用が可能です。そのため今までは難しかった、より直感的で有機的な演奏をお楽しみいただけます。

MPEの登場は、シンセサイザーの発明以来、エレクトロニック・ミュージックにおける最大の革新と言えます。MIDIコントローラーやソフトウェア・シンセサイザーなど音楽制作ツールの表現力をより豊かにするために、多くのハードウェアおよびソフトウェア・カンパニーが対応機器、対応ソフトウェアの開発を進めており、すでに多くの製品がリリースされています。

メディア・インテグレーション取り扱い製品の中にも、後述の通りすでに多くの対応製品が存在しています。

MPEによるメリット

MPE対応製品を使用することで前述のピッチベンドのような、ポリフォニックなサウンドコントロールを、例えば各指により多次元的に行うことができます。

それにより、まるで実際にアコースティック楽器を演奏しているかのようなフィーリングを生み出します。指を揺らしたり、押し込んだり、緩めたりといった、体の微妙な動きにも複数ノートに対し有機的に、同時に追従することが可能です。

体の動きに追従した演奏表現

MPEは、伝統的なアコースティック楽器と電子楽器の架け橋として、ある種の限界点に到達したと言っても過言ではありません。人間工学的な動きと、実際にコントローラーで演奏する際の制限(発音性能、機能自体の上限など)との間にあった表現の谷を飛び越え、より純粋に体で音楽を奏でることが可能になります。あとは、実際に何を表現するかです。

MORE EXPRESSION

MPE対応機器ではこのような演奏が可能になります

  • Icon bullet point
    ピッチベンド:ピッチベンドやボリュームの変更、弦楽器のような共鳴音の同時演奏を可能にします
  • Icon bullet point
    異なる音へのスライド:半音でのスライド移動、音色の明暗の調整などが自由自在に行えます
  • Icon bullet point
    エフェクトを効率的に入力:面倒なプログラミングではなく、直感的なジェスチャーで音響効果を生み出せるので、時間を大幅に節約できます
  • Icon bullet point
    音楽に自然発生的な要素を追加:より多くのパラメーターが同時に作用するため、自身の想像を超えるような表現が生み出されることがあります

MPE対応製品

メディア・インテグレーション取り扱い製品の中から、MPE対応のソフトウェアやデバイスをご紹介します。今後も続々対応予定です。

Hardware

ORBA by Artiphon

MPE

Linnstrument by Roger Linn

MPE tile

Morph by Sensel

Parva by Futuresonus

Joué Board by Joué

Deckard's Dream

Shuttle by Endorphin.es

MOD Duo by MOD

Software Synthesizers

ROLI Studio Player by ROLI

Native Instruments

Reaktor by Native Instruments

MPE tile

Serum by Xfer Records

Alchemy (for Logic Pro X) by Apple

BT Phobos by Spitfire Audio

Max MSP by Cycling '74

MPE tile

Poly-Ana by Admiral Quality

Modular by Softube

MPE

SynthMaster by KV331 Audio

Aalto by Madrona Labs

Kaivo by Madrona Labs

AURAS by Slate + Ash

Falcon by UVI

Desktop

Quanta by Audio Damage

Addiction by Stagecraft Software

Kyma by Symbolic Sound

Infinity by Stagecraft Software

Sektor by Initial Audio

HALion by Steinberg

The Legend by Synapse Audio

Crusher-X by accSone

MPE tile

Surge Synthesizer (open source)

Bazille by u-he

Hive by u-he

EFM1 (for Logic Pro X) by Apple

ES2 (for Logic Pro X) by Apple

EXS4 Sampler (for Logic Pro X) by Apple

Retro Synth (for Logic Pro X) by Apple

Sculpture (for Logic Pro X) by Apple

Vintage Clav (for Logic Pro X) by Apple

Infinite Pro by PPG

Phonem by PPG

Desktop

WaveMapper 2 by PPG

WaveGenerator by PPG

Reshape by Le Sound

DAWs

Logic Pro X by Apple

GarageBand by Apple

Bitwig Studio by Bitwig

Steinberg

Cubase by Steinberg

MPE page

Reaper by Cockos

DAW image MPE tile

MainStage by Apple

MPE

Cakewalk by Bandlab

Stagelight by Open Labs

ALK by zenAud.io

Ableton live

Studio One 5

MPEの実用例

例えば、通常のエレクトリックギターの演奏に使用するワウペダルについて考えてください。ギターから出る音はすべてこのペダルを通過します。ディストーション、ディレイ、リバーブも同じです。MPEでは、さまざまな奏法をトリガーにして、これらのエフェクトをすべてのノートごとに個別に発生させることができます。いくつかの弦や鍵盤をワウなしでドローンにした後、圧力に敏感なワウエフェクトをかけるか、ヴァイオリンやチェロの弦を上から強く押さえつけるように、コントローラーを押さえることで、強いレゾナンスやリバーブを得ることができます。軽く触るようにタッチすればレゾナンスやリバーブの影響は無く、強く押すとレゾナンスやリバーブの新たなサウンド空間を解放します。

その他の奏法として、ビブラートがあります。MPE対応機器では、キーを押さえている指を揺らすことでビブラートを行うことができ、MIDIは細部を記録します。MPE対応機器には、非常に多くの挙動やジェスチャーに反応することが可能であり、それらすべてをキャプチャするのに十分な柔軟性を備えています。

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MPEが生み出す、新たな手法

モジュラーシンセサイザーのような多くのシンセサイザーはノブを基本としており、一部のノブは1つの音だけをコントロールするものであり、その他のノブは全体をコントロールするものです。 MPEを使用すると、特定のコントロールを使用してユニバーサルノブを回すか、すべてのノートに独自のノブが付いているかのようにコントロールするかを選択できます。

MPEに対応するソフトウェア・シンセサイザーを用いるだけで、8つの異なるモジュール式セットアップがすべて複製された状態にすることも可能です。すべてを8回ミラーリングする必要はありません。一度の操作のみで、演奏するすべてのノートが同様のコントロールを取得します。MPEは、収録後のMIDIデータをカスタマイズするだけでなく、実際に表現をカスタマイズできます。それが、従来の規格との大きな違いです。

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MPE HISTORY

オリジナルのMIDI規格は1983年に開発されました。作成者の目標は、電子デバイス間で一般的な楽曲に関わる言語を使用できるようにすることでした。その言語は、キーボードをはじめ、ドラムマシンやグリッドタイプの楽器、弦楽器や木管楽器まで、すべてに対応できる可能性がありました。

当時の大きな議論の1つに「電子楽器は想像しうる連続表現の全範囲を活用すべきか?」という問いがありました。それは、ミュージシャンにコントロールと自動化のどちらのパラメーターを与えるべきか?という問いにも繋がりました。例えばMoogシンセのようなキーボードでは、好きなサウンドを設定できますが、鍵盤を押した際には、1つのアクションのみが実行されます。

数年前、MIDIコミュニティの人々のグループが集まり、現在のMIDIの仕様内で1音ごとの表現を増やすための方法を模索することになりました。必ずしも変数を用いて動かすわけではなく、画面やノブの制約を超えてシンセサイザーやサンプラーの一部を自由にコントロールしたいという欲求によるものでした。オートメーションによる対応というよりも、新しい演奏方法を実現するための方法です。

MPE(またはMIDIポリフォニックエクスプレッション)の目標は、1音ずつのノートがチャンネル全体の情報を持つようにすることでした。

現在では、ROLIのSeaboardやBLOCKS、ArtiphonのINSTRUMENT 1などの適切なコントローラーを使用することで、個別のノートに対してアサインされているすべてのコントロールを使用できます。すべてのノートはそれぞれ独自のチャンネルが割り当てられています。つまり、独自のピッチ、独自のベロシティ、その他のコントロールがあります。これにより、これまで不可能だったすべての表現が手に入ります。

MPEで本当にエキサイティングなことは、圧力感度、ピッチベンド、チルトなど幅広い表現方法を同時に使用できるようになることで、MPEを介して、例えば弦のような表現方法を提供します。ギタリスト、ベーシスト、バンジョー奏者、バイオリニストなどのアコースティック楽器奏者が身につけている演奏技術を使用することができるのです。このような表現のレベルを達成することで、高度な表現力を完全にデジタル化した空間に持ち込みました。

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