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プロダクションからパフォーマンスまで使える、モンスターシンセCypher2

2019.08.15

サンプル音源メーカーの代名詞と目されがちなFXpansionですが、実は非常に卓越したモデリング技術も擁するデベロッパーでもあります。DCAMと呼ばれる独自技術によってコンデンサなどをパーツ単位でモデリング、それらを組み合わせてハードウェアをバーチャルに作り上げる、そんなやり方で生み出されるサウンドはBFD3の内蔵エフェクトや、Strobe 2シンセサイザーそして多彩なエフェクト製品にも生かされています。

FXpansion Cypher2は、もともと数年前にリリースされたDCAM Synth Squadというモデリング・シンセのバンドルに収録された3つのシンセサイザーのひとつでした。3つのオシレータをFMで音作りしていくオリジナルのCypherも、分厚く表現力にあふれるサウンドとパワフルなモジュレーション機能を有していました。しかし、その分パラメーターが複雑に絡むそのUIは、軽快な操作というわけにはいかなかったのも確かです。

オリジナルの3オシレーター構成はそのまま、Cypher2 のUIはよりストリームライン化され、アナログの手触りと分厚いサウンド、複雑なモジュレーションがよりシンプルに操作できるよう、ブラッシュアップされました。




アナログモデリングによる3オシレータFMシンセサイザー

Cypher2を一言で表せば、そんなタイプのシンセサイザーと呼べます。一見大量のパラメーターと独自機能に圧倒されるかもしれませんが、シンセ部分だけざっくりと分けてみれば、上段がシンセシス、下段がモジュレーションのセクションと、実はとても素直な構成になっています。

上段〜シンセシス・ブロック

  • 3x オシレータ
  • 2x フィルター
  • アンプ

下段〜モジュレーション・ブロック

  • ランプ
  • 2x LFO
  • エンベロープ

もちろん各セクションには開発責任者かつFXpansion CEOアンガスさんのこだわりがそこかしこに反映されたパラメータが豊富に詰め込まれており、深堀りのしがいがあるのは間違いないですが、上記の構成を意識するだけでも操作はかなりしやすくなりますね。

シンセ上部のバーからは、シーケンサーとエフェクトのセクションにアクセスできます。

シーケンサーセクションでは、入力されるノートのステップシーケンス、アルペジエイター、スケール設定、モジュレーション用のシーケンサー独立して2系統も搭載されています。

エフェクト・セクションでは、30種類以上のエフェクトから2系統、6種類インサートすることができます。各エフェクトはコンポーネント単位でモデリングされており、Cypher2のサウンドデザインの重要な一部となっていますね。

もう一つ、Easy/Editの切り替えボタンについては次のセクションでご紹介しましょう。




1300ものプリセット、500を超えるMPE/ROLI 5D専用サウンドも

シンセ・セクションに対して左はプリセット・ブラウザになっています。タイプやお気に入り(Favourites)で絞り込みをする、シンプルながら使いやすいブラウザです。

プリセットは非常に幅広く、アルペジエイターを活用したものから、近年のエレクトロニック/ポップスでは大きくフィーチャーされる倍音とアタック感のあるFMシンセから、ザラつきのあるアナログサウンド、有機的なサウンドデザインまで、多彩なサウンドが収録されています。

さらに、よく見ていただくとプリセットには同じ名前で5Dが末尾についたものも収録されています。こちらはROLI Seaboardと組み合わせることで真価を発揮する5D Touch専用プリセットとなっています。

ROLI Seaboard シリーズ製品ページ

5D Touchとは、ROLIが提唱するMPEというMIDI規格を利用した鍵盤演奏の奏法です。従来の押す・離すという鍵盤奏法に加えて、押し込む PRESS、縦に滑らせる SLIDE、横に滑らせる GLIDEという3つを加えたものです。さらにこれらの奏法はノート単位で行うことができるため、鍵盤にとらわれない演奏が実現してしまうのです。Cypher2に収録された5Dプリセットは、ROLI Seaboard RISE/Blockとの組み合わせての演奏を想定していますが、Linn-strumentやArtiphoneなどMPE対応コントローラーでも同様に演奏が可能です。下記下こちらのムービーでも紹介されていますが、5D Touchによる新たな奏法で、同じプリセットでも有機的な変化がプリセットに加わるのが分かります。

5D専用プリセットは、LibraryからMPE Factoryを選ぶか、またはプリセット名に5Dのついているものを選択してください。通常のキーボードでは意図した効果は発揮できないので、実験的な用途以外では、5Dの記載のないプリセットが通常プリセットと覚えておくと良いかと思います。

ちなみに右上CC Map AUTO 2D 5Dのアイコンが表しているのが:

  • 2D: 通常のMIDIキーボード/デバイス向けのMIDI設定を切替え
  • 5D: ROLI SeaboardシリーズなどMPE対応コントローラー向けのMIDI設定を切替え
  • AUTO: 2D/5Dプリセットに合わせて自動でMIDI設定を切替え




パフォーマンスに最適なEasyビュー

さきほど少しだけ触れた、Easy/Editですが、これはメインとなるシンセサイザーのEditビューと、プリセットのプレビューやライブ・パフォーマンスに最適なEasyビューを切替えます。

Cypher2のサウンドを探検するのに、プリセットのプレビューは最適な方法の一つですが、Editビューではスペースの都合上ブラウザの表示も小さめ、ボタンも詰め気味に配置されています。Easyビューでは各ボタン、リストがより見やすくなり、プリセットを切替えながらお気に入りに☆を入れていく、スタートポイントになりそうなサウンドを素早く整頓できますね。

さらにEasyビューのもう一つの利点が、各プリセットに割り当てられたマクロ・コントローラーとXY、そして5Dの奏法に割り当てられたパラメーターがすぐに確認できること。左上のMIDIラーンボタンも有効にすればそれぞれにアサインされたMIDI CCもチェックできます。

ここではAR Analogue Feather 5Dを選択していますが、それぞれのマクロとXYのアサイン、DescriptionにはPRESSにサステイン、SLIDEにシンクが割り当てられているのが分かります。もちろん、これらのアサイメントは、Editページから変更も可能です。

これは特にライブ・パフォーマンスや制作時などでコントロールによる変化をそのままレコーディングしたいときなどに役立つビューでもあります。ぜひ活用してみてください。




見やすく、多層的なモジュレーションが実現するTransModシステム

Strobe2、Geist2にも採用されたモジュレーション・システムFXpansionのお家芸とも言えるTransModは、Cypher2にも搭載。TransModは、Cypher2ウィンドウ上部のスロットにモジュレーションソースを追加し、これを選択(オレンジに反転します)した状態でデスティネーションとなるパラメーターの外縁を直接ドラッグしてモジュレーション量を割り当てる、というビジュアルリッチなモジュレーション方法です。

一般的なシンセサイザーに多い、マトリックスやリストで割り当てるモジュレーションにはない視認性の高さが最も大きな利点です。例えばさきほどのAR Analogue Feather 5Dプリセットでは、マイクロコントローラーPerf3には、5つものモジュレーションが割り当てられ、はっきりとしたフィルター、ウェーブフォームの変化だけでなく、ディケイやレゾナンス、ファインチューンにもより細やかなモジュレーションがかかっているのが分かります。

モジュレーションというと複雑な印象を持たれがちな部分もありますが、同時にいくつものデスティネーションを割り当てたくなる軽快さは、TransModの魅力の一つでもあります。そしてこうした複雑なモジュレーションの変化をどっしりと支えるCypher2のシンセエンジンの多彩さ、芯の太さがあってこそ、TransModが活きてくるのは言うまでもありませんね。

モジュラーシンセのようにこのソースをこちらのパラメーターに当てたらどう変化するか、という偶発的な要素も手軽に制作・パフォーマンスに取り込んでいけるでしょう。

Cypher2は複雑なシンセサイズやディープなエディットに応えるモデリング・エンジンを備えたモンスターであることは間違いありません。しかしそのシンプルなシンセサイザー/モジュレーション部を把握すれば、素早いプリセットのプレビューやエディット、モジュレーションも軽快に追加・変更に対応する、高い操作性も備えています。さらにROLI Seaboardシリーズと組み合わせれば、より自然で有機的な演奏、今までは困難もしくは不可能だった様々な表情を同じサウンドから引き出すことも。シンプルに制作・パフォーマンスにも活用できる、フレキシブルなモンスター・シンセです。

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