6030 Ultimate Compressor
Avid D-showを使い始めたのはたしか2005年からでしたが、2006年くらいからTDM プラグインを探求し始めました。McDSPを使ったのは2008年頃だった気がします。その当時のMcDSPのプラグインはまだV5でした。色々プラグインをテストした中で、McDSPの
6030 Ultimate Compressorが気に入りました。
Avidのライブコンソールを使う上で気を付けているのは、プラグインで「音に奥行きをつける」ことです。グループのステムにそれぞれ別のダイナミクス・モジュールを差して、各楽器の奥行きをつけていくことです。今は自分なりにドラムのステムにはこれ、ギターのステムにはこれ、管楽器のステムにはこれ、コーラスのステムにはこれといった感じでプラグインを決めてミックスしています。6030 Ultimate Compressorでは1つのプラグインで瞬時に色々なコンプに変えられるので、それ1台で音色を変えることができるのが最大の魅力でした。
以前Avidのライブサウンド製品の開発者と会話したとき、こんな話を聞きました。「色々なSRコンソールはそれらの個性的な音色があるだろ。パープルだったり、ピンクだったり。Avidはホワイトキャンバスなんだ。そこにそれぞれのエンジニアがプラグインで色をつけていくんだ。」Avidのライブコンソールを使う上で、プラグインで個性を出していくのは必須だと考えるようになり、各メーカーのプラグインを積極的に使うようになりました。
6030 Ultimate Compressorのお気に入りのセッティングはステムでBritish Cです。管楽器、ギター、キーボード、メロ物にかけています。見た目でピンときた方もいるかと思いますが、Neve33609っぽいです。ワイドレンジ、暖かく、ソリッドであり、ナチュラルです。
Channel G
Channel Gも同じ時期から愛用しています。もともとチャンネルストリップが好きで色々試していたのですが、特に気に入っています。このチャンネル・ストリップは1台でEQやコンプが全て行えるので便利ですし、何より音が気に入っています。McDSP全般に言えることですが、カチッと固く落ち着くという感じで、ソリッドな楽器に向いていると思います。特にエレクトリック・ギターに愛用しています。ハイパスフィルターとEQを少し調整してから、コンプを1:2くらいに設定します。マニピュレーターさんから出るシンセトラック、ギタートラック等にも使っています。シーケンスのみ現場でステムデータの音色を変化させるために、メロディー物にも使っています。リズム物へは別のプラグインを使います。EQカーブのタイプは`Music`を多用しています。
FilterBank
2015年にAvid S6Lが発表になり、プラグインのフォーマットがAAX DSPに変わり、S6LのDSPだけでどこまでできるかを模索するようになりました。SonnoxとMcDSPがAAX DSPに対応したので、今一度McDSPをテストしました。
FilterBankはS6Lにおいて、お気に入りのEQになりました。インプット・チャンネルではE606を、PAのアウトプットにはP606を愛用しています。E606は本当に良いEQで、アコースティック・ギター、ボーカル、キーボードなど何に使っても良い万能なEQです。
PA system MTXにはP606です。本番中Smaartの画面を見ながら会場の音場補正用のパラメトリックEQとして愛用しています。
6050 Ultimate Channel Strip
6050 Ultimate Channel Stripはパワフルなランチボックスタイプのチャンネル・ストリップです。ゲート、EQ、コンプレッサー、サチュレーション等のモジュールを任意に選び、好きな順番で配置できます。もちろん二重にコンプをかけられる最強なプラグインです。
写真1:ベースのセッティングです。マッチするCompでセッティングし、その後にEQとLoFiで歪ませています。
写真2:タムのセッティングです。ゲートをマッチさせた後、EQしています。(コンプはドラムのステムでかけています。)
写真3:ボーカルのセッティングです。EQの後にBC-22 コンプレッサーをかけています。
NF575
NF575はライブの現場で、ハウリングマージンを稼ぐ場合に使っています。アコースティック・ピアノのグループで、フィードバックする周波数をノッチで切ります。多人数のボーカルが客席の花道等で歌う場合もマージン稼ぎに有効です。
色々紹介しましたが、まだまだMcDSPプラグインを探求中です。今後もMcDSPを使っていきたいと思います。
プロフィール
保手文司郎(MSI Japan)
ライブサウンド・エンジニア
1991年(株)綜合舞台に入社、7年余り従事し音響仕事の基礎固めの時期を過ごす。
1998年(株)ゼロ・ディービーに移籍、同社にて長渕剛(Mo)、小谷美紗子(Mo)、 山嵐(FOH)、KICK THE CAN CREW(FOH)などに従事する。
2005年MSI JAPANに移籍後は、ハウスのみならずシステムエンジニアとしても活躍。 また英会話の語学力を生かし、国外アーティストやSUMMER SONICなどにも携わる。2000年より山崎まさよし、オルケスタ・デ・ラ・ルス、w-inds、ULTR JAPANなどの国内外問わず様々なアーティストのハウスを担当。
システムエンジニアとしても、多数の仕事をこなしている。