2022.04.25
新しいサウンドを求める多数のエンジニアから意見をフィードバックし、Lewittが数年間に渡る研究・分析・開発を経て作り上げたフラッグシップモデル「LCT1040」。Lewittのテクノロジーを詰め込んだフレキシブルな機能はもちろん、ニュー・スタンダードとも言えるそのサウンドも大きな魅力です。
エンジニア 吉田 保氏、そして土岐 彩香氏に実際にマイクを通した歌を視聴してもらいながら、マイク選びの基準から、LCT 1040のサウンドや先進的な機能について語っていただきました。
「LCT 1040製品レビュー:グレゴリ ジェルメン」の記事はこちら
メディア・インテグレーション(以下、MI)
マイクの選ぶときの基準はありますか?
吉田 保 氏(以下、吉田)
あまりカラーがついてないもの、というのが僕のマイク選びの基準にあります。カラーをつけるのであれば例えば卓のEQなどいろいろな方法があるので、マイク自体にはあまりキャラクターがないものを好んでいますね。
土岐 彩香(以下、土岐)
私は逆にキャラクターで選ぶタイプですが、その基準自体はわりと感覚かも知れません。マイクの個性は使い込むうちにだんだんと分かってくるので「この人の声だったらこれが合いそうだな」「このマイクはあまりカラーがないから大丈夫だろうな」といった判断をしています。性別や、息の成分として倍音が多いのか少ないのか、とか、歌い方として声を張るタイプなのか、など歌い方にも合わせて選んでいます。
MI
真空管マイクとFETマイクはどちらを使うことが多いですか?
吉田
昔はチューブタイプしかなかったのでそれしか選択肢がなかったというのはありますが、今は逆にFETのマイクのほうが多くなりました。特性的にはフラットに近いFETマイクのほうが僕は好きですね。
土岐
基本的には歌であればチューブの方が好きです。チューブのほうがローミッドのあたりがしっかりと出てくる印象があります。マイクのキャラクターは帯域のどこが一番「美味しい」特性が出るかで決まると思っていて、日本人の場合だとそのチューブらしいローミッドの帯域が母音に近いところにあるので、歌声のキャラクターが出やすいんです。
吉田
土岐さんがおっしゃるように中低域の充実度はチューブに分があると思います。周波数特性を優先的に考えた場合には特にFETを多用するというのが、僕の信念というか理論ですね。
土岐
私は完全に個性で選んじゃうタイプです(笑)ただ個性的だったら何でもいいという訳ではもちろんなく、LCT1040は自分の普段の環境で試してみたいと思わせる、説得力のあるサウンドです。
吉田
値段通りの音をしていますよね(笑)
MI
ビンテージマイクが定番として重宝されるなか、新しいマイクの登場にどのような印象を持たれますか?
土岐
スタジオによく置いてあるものとして、結構古いマイクが多いと思うですが、そのマイクでサウンドがもう完成されてしまっているというか、そこを追い求めてしまう風潮がどうしてもあると思います。
それが新品の時にどういう音をしてたかは本当は分からないんだけど、そういった定番マイクと比較されてしまうんですよね。でも本当はLCT1040のほうが合うというシーンはたくさんあると思います。
このマイクに似てるよね、みたいな言われ方をしちゃうとLCT1040がちょっとかわいそうだなと思います。新しいマイクのよさというのは、まずはメンテナンスがちゃんとできること、そして個体差が少なく安心して使えることだと思うんですよ。
吉田
昔のマイクと比べてどうだ?と比較されるのは後発マイクの運命ですよね。
土岐
さらにその安定したマイクで、どの声にどのキャラクターが合うか?というのを試しながら使っていけるというのは、レコーディングのときに「最初に置くマイク」としてベストな選択になるのでは、という予感がしています。
吉田 保
土岐 彩香