2021.02.18
EQはオーディオプロセッサーの中でも、とりわけ人気が高く、使用頻度も高いプロセッサーではないでしょうか。
そんなポピュラーなプロセッサーだけに、使い方などに様々な「言われ」があります。 昔からエンジニアのなかでささやかれていた、ちょっとした「セオリー」というか、「あるある話」と言いますか。
エンジニア同士の話から、時が経つにつれて装飾され、歪曲してしまった状態で皆さんの耳に入ってしまうことも多々あるでしょう。 ここでは、最も一般的な話のうち9つの話を取り上げてみましょう。 いくつかの「EQあるある話」を見直して、その中にある真実の要素を認識してみましょう。
アナログ・エレクトロニクスでは、バーチャル・デジタル・テクノロジーよりもヘッドルームとゲイン・ステージングが問題となっていました。
「ブーストするよりもカットした方が良い」というのは、「ブーストするよりもカットした方がヘッドルームが広がり、ゲインステージングの手間が省ける」という意味の略語のようなものでした。例えば、高域と低域をブーストする代わりに中域をカットした方が理にかなっていることがよくあります。
バーチャル・デジタル・テクノロジーには大きなダイナミック・レンジがあるため、ブーストとカットのどちらが良いという技術的な理由はありません。邪魔な共振がある場合はカットします。ハイエンドのリフトが必要な場合はブースト。そして、低中域の「濁り」を減らしたいのであれば、高低域をブーストするのではなく、その範囲でカットする方がよりシンプルです。ヘッドルームとゲインステージングを意識する必要はありますが、昔ほどシビアになる必要はないかもしれませんね。
アナログ回路の性質上、ビンテージEQには、カーブの形状やステップした周波数、バンド間の相互作用、ブースト/カット量など、音楽的な理由から特別に選択された特性が多く見られます。そのため、モデル化されたビンテージEQを使用すると、ボーカルやドラムのサウンドを数秒で仕上げることができてしまうのです。
確かに、同じようなカーブを再現するためにパラメトリックを時間をかけて微調整することはできますが、その必要はないでしょう。
linear-phase EQには、位相がズレないという最大のメリットがありながらも、Pre-ringing(トランジェントの前に発生するアーティファクト)が発生してしまうというデメリットも存在します。これは実際処理する前の音に比べ、ほんの僅かに早く音がなり始めてしまうという現象です。
non-linear-phase EQ はpre-ringing の影響を受けませんが、post-ringing(トランジェントの後に発生するアーティファクト)の影響を受けることがあります。通常はオーディオでマスクされているため気にすることはありませんが、post-ringing自体は存在しています。
ルームチューニングは音響問題を解決するものではなく、聴き手の受け取り方を変えるというほうが正しいのかもしれません。酷い音響特性を持つ部屋でイコライジングすると、さらに深くイコライジングしてしまうことになります。もともと優れた音響処理が施されていれば、部屋の異常を補うためにEQを使う必要はありません。
楽器の中には、実際の音域よりも低い低域成分を持っているものもあります。プロはハイパスフィルターをケースバイケースで使用しています。
漠然とEQをかけるべき周波数を探しても、良い結果にはなりません。しかし、ステージ用に設計されたクラシックギターの低音ブームや、アンプシミュレーターのレゾナンスのように、ある種の問題に対処しなければならない場合もあります。何かおかしいなと思ったときには、(問題の性質にもよりますが)過大なブーストやカットでEQをスイープすることで、正確な周波数を見つけ出し、対処することができます。
EQは特定の周波数範囲に住むアンプです。つまり、コンプレッサーの前に振幅を変化させるということは、その振幅の変化にコンプレッサーが反応するということです。逆に言えば、コンプレッサーはコンプレッション後に発生する振幅の変化には影響を与えません。つまり、ミックスによっては、一方のアプローチが他方のアプローチよりも適切な場合があるので、ルールはありません。
フィルターのロールオフは 20 kHz 以下の周波数に影響を与えます。20 kHz 以上に設定した場合、アナログ EQ が主観的に心地よいと感じるレスポンスを生み出すことはおかしくはありませんが、それは 20 kHz 以上で起こっていることが原因ではありません。この効果は、デジタルEQを使用することで、オーディオレンジ内でエミュレートすることができます。
プロのエンジニアが提供してくれるプリセットなんて素晴らしいと思いませんか。しかしそこには大きな落とし穴があるのです。 EQの調節は、他のトラックにある音と相対的に行われるべきと言えます。 いくらプロのエンジニアが使っているプリセットだからと言って、そのまま使うわけにはいかないでしょう。なぜなら、あなたがどんな曲のミックスをしているのか、またはどんな音がどの音とぶつかっているかまではプリセットを作る段階ではわからないからです。 ただただプリセットを挿入するのではなく、参考にしつつ、しっかりと自分の音を聴いて調節しましょう。
いかがだったでしょうか。 中には聞いたことのあるお話もいくつかあったのでは。 色々な「セオリー」が存在する音楽の世界。 なぜそれが「セオリー」となったのか。その理由を知っていることはきっと、あなたの制作にも役立ってくるはずです。
さあ、早速制作を始めましょう。
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