ドラムトラックを作るために生まれた。BFD3ワークフロー その2
2017.12.13
スタッフHです。
前回の記事にて、BFD3のワークフローのコツのようなものをご紹介いたしました。かなり深いエディットができるという反面、「BFD3って難しいらしいよ。初心者には使えないらしい」といった評価を目にしたこともあり、少しでもそう言った誤解が解けたらよいなと思ったからです。BFD3はドラムに詳しくなくても、あるいは音作りに専門知識がなくても使えます。
タイコを変えて音作りをしたい派?マイクやエフェクトで音作りをしたい派?(と、前回書きましたが)
前回の記事では、「マイクやミキサー、エフェクトの設定はそのままで、ドラムキットだけを変えていく」というフローをご紹介いたしましたが、一方で「一つのキットだけを使用して、マイクやミキサーやエフェクトの設定だけを変えていく」というフローではどのようなサウンドバリエーションが作れるのでしょう。本日はオーディオサンプルつきでご紹介いたします。
特にキックとスネアについては各々3本のマイクを使ってレコーディングし、ドラムキットから離れた位置にあるマイクは8セットも用意されているBFD3。これらのバランスを変えることで、ありとあらゆるドラムサウンドに対応できるバリエーションを作り出せるのです。
セレクトしたドラムキットは?
前回の記事で「ドラムキットを選ぶ」というフローをご紹介いたしましたが、ここで作った組み合わせが意外にも気に入り、その後の趣味の時間にもこの「マイキット」を使うことが多くなりました。ですので、このキットをベースにしてバリエーションをお聞かせできればと思います。DW社製のキックに、Mapleworksのスネアという組み合わせ。前回作成したプリセットのサウンドがこちら。
BFD3_OneKit_File1
前回の記事にも書いた通り、私自身はアンビエントマイクを最小限にして、個々のキットに立てたダイレクトマイクをメインにした、乾いた音が大好き。この音は私の中では理想的な音です。今日はここを基準としましょう。
このキットが、ヘビーメタル仕様のマイクセッティング&エフェクトになったら?
BFD3ではプリセットをロードする際に、特定の項目だけをロードさせることができます。これを使って、膨大なプリセットの中から「マイク&エフェクトセッティングだけを変えて」いきましょう。さっそくですが、HeavyMetalというプリセットを見つけました。音はどのようになったかというと…?
BFD3_OneKit_File2_HeavyMetal
アンビエントマイクはオーバーヘッドのみ。キック、スネア、オーバーヘッドを結構大胆にコンプで叩いていて、独特の質感に仕上がっています(スネアに至ってはコンプやリミッターを三段がけ!)。ラウドなギターやベースが重なってきても、これなら抜けも大丈夫でしょう。
オールドスクール!
次は同じくキットはそのままに、OLD School OHというプリセットを試してみました。音はどのようになったかというと…?
BFD3_OneKit_File3_OldSchoolOH
これはなかなか大胆に変わりました。ミキサーセッティングを紐解いてみてみると、まずはキックとタム1個を除き、全てのダイレクトマイクがオフに!さらに、8セットある全てのアンビエントマイクがオンになっています。いかにもガレージにポンと置かれたドラムを叩いているような、良い意味の粗さがありますね。アンビエントマイクにはプレートリバーブなども仕込まれており、これがいかにもガレージっぽいような(その辺の金属板が共振してしまっているような)絶妙な効果を醸し出しています。
スネアのダイレクトマイクがないため、スネアがビシッとセンターにある感じが薄れていますが、これもまた良い雰囲気。キックもノンミュート感溢れていて素晴らしい。
スウィング・ジャズとはいえど…
次はSwing Jazzというミキサーセッティングを試してみました。キックは22インチなので、ちょっとジャズという観点では口径も大きめではありますが、果たしてどうなるか…
BFD3_OneKit_File4_SwingJazz
ドラムフレーズがそれっぽくないこともありますが、仕上がりは悪くないのではないでしょうか。シンバル類はライドを除いてダイレクトはオフ。アンビエントマイクもトップを中心に生かしていて、ルームマイクは味付け程度といった感じ。ブラシのキットなどを選んでいればもう少しジャズよりに映えたかもしれません。しかし、ジャズにこだわらなくても使えるセッティングと思いました。
がっつり音を作り込んだヒップホップ
次は90sHipHopというプリセット。これは個人的にどハマりしました。これたぶん、クエストラブ(The Roots)ですよね...
BFD3_OneKit_File5_90sHipHop
キックの鳴りかたには好みがでるかもしれませんが、スネアのディケイが短い感じやアタックの強い感じ。キックは中に突っ込んだマイクと、サブキック(超低域を抑えたマイク)のみで作り、アンビエントマイクはかなり抑えめ。キックとスネアには大胆なエフェクト処理が施されていて、これによってこの雰囲気がでています。最初のキットとの違いが顕著ですね。でも「全く同じドラムキット」を使っています。
拡張音源にも膨大なミキサーセット、あります。
ここまでご紹介してきたのは全てBFD3標準でインストールされるマイク&ミキサー&エフェクトセッティングですが、実は拡張音源をインストールするたびに、ドラムキットだけでなくこのミキサープリセットも増えるのです。最後にご紹介するのは、古くからのドラムライブラリの名門、Chocolate Audioが手がけた名作、Imperial Drums(BFD3版として生まれ変わったもの)に収録されていたプリセットで、Tight Old Style Monoというプリセット。
BFD3_OneKit_File6_TightOld_CA
手がけるメーカーが違うと、こうも違うかと思うほど印象も変わりますね。”Mono” というプリセット名通り、アンビエントマイクを含めて全ての音がモノラル仕上げ。それなのに、絶妙に奥行きを感じます。心地の良いスネアのコンプ感。Imperial Drumsのサンプルを一切使ってなく、BFD3の標準ライブラリだけで作ったもの。
今回は1つのキット(サンプル)に固定して、マイクやミキサー、あるいはエフェクトのセッティングでどれくらいのバリエーションが得られるかに着目して進めました。ご紹介したバリエーション(プリセット)はほんの一部で、ご紹介しきれないほどのセッティングがあらかじめ用意されています。
前回の記事にも書いたのですが、皆様が「タイコ(キット)を変えて音作りをしたい派、か、マイクやエフェクトで音作りをしたい派か」いずれのケースでもBFD3は完璧なお手伝いができることでしょう。BFD3、全ての機能を覚える必要はまったくなく、自分がやりたいことだけを覚える(突き詰める)ように使ってみてくださいね。
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