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Artiphon ORBA レビュー:鶴田 さくら

2021.09.16

ライブをする人はみんなORBAを使ってほしい

こちらの動画では、自然音のテクスチャや民族楽器のような響きの音など様々な音が使われていますが、楽曲のコンセプトで意識づけていることはありますか?

私の場合は、日常生活の中で感じる小さなことから着想を得て曲が生まれることが多いのですが、刺激的なこと、悩んでいること、あるいはハッピーを感じること、そういった感情なんかを大事にしています。

必ず1日の最初に、Ableton Liveの前に座って何もない状態から「音のスケッチ」をすることから始めます。他に制作しなきゃいけない曲があったとしても、その日の気持ちを素直にスケッチしてみるということを心がけているんです。頭の中で流れている曲に合わせてまずはテンポを決めるところからスタートして、自分の調子を確認するように曲を組み上げていきます。

ビデオの中でArtiohon ORBAを手にされているのを拝見しました。普段そのような作曲をされている中で、どういった経緯でORBAの導入に至ったのでしょうか?

もともと同社のInstrument 1を見てメーカーのことは知っていてInstagramでフォローしていたのですが、そこでORBAのレビューを見て「これ欲しい!」と思ってすぐに購入しました。私はピアノを長年やっていたので、鍵盤やパッドコントローラーだと手が慣れてしまっていて、弾くものが手癖的に同じようなものになってしまっていたので、そこから抜け出したかったというのもありますね。

ビデオの中でも鶴田さんの掌にぴったりと収まっている小さなORBAを見て「これは何だ?」と思った視聴者も多かったのではないかと思います。実際にこういったライブセットの中に組み込まれて「新しい楽器」として使われている例はまだまだ少なかったので、私たちも嬉しい限りです。形状も独特なので、何かしらの手癖がおき得ないですね。

私は即興演奏が好きなのですが、それって自分の知っているものの中からアイディアがその場で出てくるので、結果的に同じことばかり弾いてるじゃん!って気がついてしまったんです。これをどうにか脱したいなと思っていたときにORBAに出会って。音の出し方が今までのデバイスと違うし、直感的に体を動かしたいように操作すれば綺麗な音もなってくれる。そのまま弾いてもドレミファソラシドが出ないので、偶然性もあって、それが楽しいなと思いますね。

体の動きにも反応をしてくれるので、ハッピーアクシデント的な面白さもありますよね。この動画で鳴らしているのは内蔵の音源ではなく、Ableton Liveのサンプラーですか?

ORBAのアプリを裏で走らせておいて、そっちでキーを決めて、発音自体はLiveの中のソフトウェア音源やサンプラーを使用しています。ORBA abled utility というMax for Live を使ってマッピングしていて、シェイクとかのいろいろなジェスチャーをパンニングだったりとか、エコーのドライ/ウェットとか、リバーブにアサインしています。特にくるくる(スピン)をよく使ってまして、音階がアルペジオみたいな感じで鳴るのが可愛いなと思ってデザインしたベルっぽい音が音階があるんですが、それにエフェクトをかけたりとか。

全部のパラメータをマッピングしているわけではなくて、曲と音にあわせて、感覚的に自分の動きと一致するようなパラメータをチョイスしていますね。

Max for LiveはArtiphonのウェブサイトに記事が出ていて、それを使ってみたら意外と良くて、それ以来ずっと使っています。Ablton Liveの純正のノブとかフェーダーとかに直接MIDIマッピングできるので、MIDI CC#とかをわざわざ設定する必要がなくてすごく楽です。

演奏に反応するような照明などを組んでおけば、ダイレクトな効果が得られて面白いかもしれませんね。

Max for Liveはマッピングで「ポチポチ」するだけなので、ビジュアルプラグインを使う場合とかもポチポチ!でいける気がするんですよね(笑)となるとそれ一発でオーディオとビジュアルができるようになると思うので、今後試してみたいと思ってます。自分だけでマルチメディアなパフォーマンスができたらいいなと。


即興性や偶然性を「間違えずに」取り入れられる

Artiphon製品はORBAを含めMIDIの拡張規格であるMPE(MIDI Polyphonic Expression)にも対応しています。MPEは実際に制作でも活用されていますか?

はい、Ableton Liveも11からMPEに対応したので、早速使い始めています。より直感的に打ち込めるのと、ORBAを押し込むプレッシャーなども可視化されるので、そのままオートメーションとして書き込めるのは画期的ですよね。LiveのWavetable(シンセ)で使ってみましたがすごく面白いです。MPEのデバイスって結構高額なものが多いのですが、ORBAはこの価格で対応してるって、結構すごいことだと思います。

ORBAの偶然性を取り入れられるようになるので、MPEと合わせて普段自分が普段弾かないようなものが弾けたり、思いもつかないようなオートメーションが書けたりするので今後も活用していきたいです。こういった機器にありがちな、思い通りに動かないというようなトラブルによるフラストレーションが全くないのも好印象です。ちなみに私はBluetoothでMacと接続していますが、認識が外れちゃうなどのトラブルもありません。

ライブでの安定感、信頼度も高いということでしょうか?

そうですね。ライブをやっている間はこういった「手にとって触れる楽器」があることで、安心にも繋がります。直感的に出したい音がすぐ出せるという意味でも、ライブをする人はみんなORBAを使ってほしいなと思いますね。

即興演奏で間違った音が出ないことは、いわゆるトリガーだけのライブにならないために非常に大事だと思っていて。やっぱりポン出しするだけのライブって楽しくないなとは思うですが、そこに間違いが発生するリスクが絡むと他の選択肢が難しかったりするんです。ORBAは即興性とか偶然性を「間違えずに」取り入れられるので、ライブをやっている人にとっては「超いい武器」になると思っています。

ORBAは発売以来、アップデートによって内蔵音源や機能の追加などが行われていますが、期待することはありますか?

ORBAの形からしても丸いのでパンドラムっぽい音も欲しいですし、あとは全く違う音素材で「これでこんなの弾けるの?」みたいなちょっとびっくりさせられそうなプリセットとかがあるともっとインスピレーションの促進になるかなと思います。自分でライブラリを作ることはできないので、Artiphon側のアップデートをとても楽しみに待っています。

※(編集部注)インタビュー後、新たにORBAを使用したパフォーマンス動画が公開されたのでこちらでご紹介させていただきます。動画25分48秒からORBAが登場いたします。


Profile

mabanua
鶴田 さくら

Recording/Mixing engineer

7年に渡るアメリカ生活を終え、2017年帰国。拠点を東京へ移し作曲・ライブパフォーマンス・DJ活動を展開。

2019年にBardo Recordsよりリリースした待望のシングル ”Dystopia” がBeatportのTop 100チャート入りを果たす。2019年12月にはAR (拡張現実)演出家、asagiをコラボレーターとして招き、MUTEK. JPにてオーディオビジュアルセットを披露。

翌年にはデビューEP、Made of Airをリリース。2020年9月にはMUTEK MONTREAL主催のMUTEK CONNECTにも出演、そして11月には直径35メートルに渡る巨大屋外サラウンドサウンドシステム、池袋西口公園GLOBAL RINGにて、映像作家Manami Sakamotoとの共作インスタレーション作品を展示。また、音楽提供・ライブ映像出演等でGINZA SIX、THE NORTH FACEなどのブランドとのコラボレーションも行う。

近年ではラジオコンテンツにも注力し、Hong Kong Community Radioのマンスリーレジテントの1人として多様な音楽キュレーションを務め、NTSやblock.fmなどといった国内外ラジオへのゲスト出演も果たす。更には国内外の大学や専門学校にて特別講師として登壇し、2021年9月現在は、女性音楽家を支援するNPO法人とタッグを組み、プロダクションやライブパフォーマンスの短期コースを企画中。

国境やジャンルを超えて幅広く、現代を多様に生きるマルチアーティストの活動から目が離せない。

HP:https://sakuratsuruta.com/
Instagram:https://www.instagram.com/sakura03drops/
SoundCloud:https://soundcloud.com/sakuratsuruta

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