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Nugen Audio + Ableton Live! ベッドルーム・プロデューサーに送る完パケテクニック③

2018.05.09

自分でミックス~マスタリングまでこなすプロデューサー向けにお送りする連載の第3回目。前回はイコライザーのSEQなどを駆使して楽器ごとの居場所を作る方法を紹介してきました。

今回はモノラルとステレオのトピックが中心となり、Nugen AudioのStereoizerとStereoplacerプラグインを使ってステレオイメージを調整してミックスする方法を紹介します。プラグインの紹介に入る前に、モノラルとステレオの基礎知識を簡単に説明しましょう。

 

モノラルとステレオの違い

20180509_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-03-01-stereomono-visualizer

モノラルとステレオの違いは、ミックス初心者にとっては最初の壁になるかもしれません。モノラルとは、スピーカー1本で音楽を再生している時のように、人間の左右の耳に全く同じ音が届く状態です。この場合、音はある一点から聞こえてきます。

一方、ステレオは2本のスピーカーで鳴らした時のように、音が左右の耳に届くのに時間差があったり、残響など音響的な差異があります。この違いにより人間の耳が空間の中で音源の位置を認識でき、その空間の広がりをステレオイメージと呼びます。この場合、音は広がって聞こえるので点ではなく面で聞こえてきます。

そのトラックの音がモノラルかステレオかは、上の画像のようにVisualizerを使うと可視化されてわかりやすいですが、Liveのレベルメーターを見ることでもある程度判別できます。モノラルだと左右のメーターが全く同じように振れますが、ステレオの場合はメーターが左右で違った振れ方をします。

 

20180509_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-03-02-stereomono-meter

また、耳でステレオかモノラルか判別する場合は、左右のスピーカーの中央で音を聞き、音が点で聞こえるのか・面で聞こえてくるのかの違いで判別できます。モノラルの音は点で鳴り、ステレオの音は広がって面で鳴ります。モノラル成分が多い場合は音が塊となり押し出し感が強くなり、ステレオ成分が多い場合は広がりが生まれビッグなサウンドになります。

前回はEQを使って周波数の面から楽器の居場所を作るアプローチでしたが、今回はステレオイメージを操作して、音の聞こえる面の広がり具合を変えることで居場所を作り、サウンド全体の音像を作っていきます。

 

ステレオイメージを広げてビッグな空間を作る

20180509_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-03-03-stereo_image

実はクラブかかっているようなトラックの多くは、あまり極端にパンを振りません。ビートの音の力強さで踊らせるジャンルなので、ステレオ感の強いビッグなサウンドよりも、モノラルに近いパワフルなサウンドが好まれます。だからといって全てをモノラルで鳴らすと、ビートの音がほかの楽器の音をマスキングして聞こえづらくなることもあります。では、どうすればシンセなどウワモノの音がビートに埋もれずに、聞こえやすくなるのでしょうか?その答えの一つがウワモノのステレオイメージを広げることです。

ステレオイメージを広げるには、同じ音を左右の耳にわずかな違いを作ります。こうすることで人間の耳が錯覚を起こして左右が広がったように感じます。コーラスやフランジャーなどのエフェクトは左右の音に微妙な時間差をつけ、フェイザーは左右の音の位相を変えることで音を広げます。

 

Stereoizerで楽器ごとに広がり感を変える

20180509_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-03-04-stereoizer-on

ここでは楽器のステレオイメージを広げるのにStereoizerを使います。これは、自然な音質でステレオ・イメージを広げる、狭くする、モノにする、といったステレオ音像の調整を可能にするプラグインです。

今回のトラックを聞いてみると、シンセのコードサンプルを鳴らしているサンプラーのトラック”K-SP-16”が埋もれがちに聞こえたので、Stereoizerでステレオイメージを広げて存在感を出します。

Stereoizerを起動してみるとインターフェースが宇宙船っぽくてカッコイイ!中央で煙がたちこめるかのようにステレオアナライザーが青白く光るアニメーションが美しいです。

それではこのトラックのステレオイメージを広げてみましょう。さて、このStereoizerは、中央のアナライザーの上にスライダーやボールが配置され、この操作子を使ってステレオイメージを調整します。左右にある2本のスライダーは、両耳間での音の音量差(IID : Inter-aural Intensity Difference)と、時間差(ITD : Inter-aural Time Difference)という2つのアルゴリズムを別個に調整するもので、このプラグイン最大の特徴といえるでしょう。最初は左右のチャンネル毎に調整するスライダーかと思いました。。

このトラックでは、IIDをやや極端気味に左右に広げたセッティングにしましたが、それでもサウンドは透明感のあるキャラクターで、インターフェースと同様に綺麗な音です。ステレオ幅をぐっと広げても、耳の後ろから聞こえるような不自然な感じがしません。

その一方でITDはパッキリとやや硬めな音で広げ、比較してみるとIIDとITDの2つのアルゴリズムを組み合わせてナチュラルな透明感を出しているようです。こうして”K-SP-16”のステレオイメージを広げてみると音がくっきり出てきました。

 

この後は、同様に他のトラックにもStereoizerをかけます。ステレオイメージを広げる時に僕が気をつけているのは、全てに同じセッティングの同じエフェクトをかけるのではなく、大きく広げる音と少しだけ広げる音でセッティングやエフェクトを変えること。こうすることで大きく包み込む音と真ん中あたりで広めに鳴っている音の居場所をわけられ、お互いの音がぶつからないようにできます。

 

20180509_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-03-05-air-stereo-expand-rack

 

また、スタジオ内の環境音をマイク録音していた”AIR”トラックは、録音時のマイクの都合でステレオ感がなかったので、これをなんとか広げるべくLive内部でラックを組みました。

このラックでは、センターの音と、左右広がりのある音に分けて処理するMS処理に近い音作りをしています。L chではStereoizerでモノラルにして、R chでは目一杯ステレオイメージを広げるセッティングのStereoizerをかけています。大箱感を出すために、SEQ-STで電気グルーヴのライブ盤からスナップショットをとったEQカーブをかけました。

試聴はこちら。ヘッドフォンで聞いた方がわかりやすいかもしれません。

 


 

StereoplacerでEQのようにステレオ感を調整

次に、前回でmonofilterをかけた”K-Pad/Strings”トラックに、高域だけステレオ幅を広げるためにStereoplacerを使います。このプラグインは周波数帯域毎にパンをふってステレオイメージを作るエフェクトで、使ってみるとパラメトリック・イコライザーのような構造です。

これもステレオイメージを広げたりするのに使えるのですが、ステレオイメージにどこか問題がある素材を補正したりする用途に向いています。例えば、ハンディレコーダーで録音した素材から特定の楽器だけ違う位置に定位させたいとか、低域はモノラル/中域は左/高域は右といった感じに周波数帯毎に違うパンを振りたい場合などに活躍するでしょう。

ここではベースに影響しない300Hzあたりから上を櫛形に細かく左右に振り、ステレオ感を出しています。

 

20180509_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-03-06-stereoplacer

 

このStereoplacerは、ステレオイメージのコントロール・ポイントを最大10箇所まで作ることができるので、上の図のようなステレオの広げ方が可能です。また、このコントロール・ポイントのタイプもEQのようにベル・シェルビングが選べ、作用する周波数帯を制御するQもあるのが面白いところ。各コントロールポイントがどのように作用しているか、画面下部のSoloとMuteでモニターできるので、音作りはしやすいでしょう。

Stereoplacerのサウンドのキャラクターはクセや色付けがないところ。Stereoizerのような透明感や広がり感を出すと言うよりも、補正に向いていると感じたのはこの音のキャラクターがあるのかもしれません。

 

20180509_koyas-nugen-audio-ableton-live-tutorial-03-07-stereoplacer-harmonic

 

このStereoplacerのユニークな所はコントロール・ポイントに画面下部のHarmonicを適用できるところ。例えば、ステレオ感を強調したい楽器がある場合は、コントロール・ポイントをその基音となる周波数に設定し、Harmonicボタンを押すと、その倍音にあたる周波数もステレオ感をブーストする機能。上のスクリーンショットだと青線の部分になります。こうやって使ってみると、ステレオイメージを制御できるイコライザーといった感じです。

 

 

まとめ

ここまでStereoizerとStereoplacerを使ってステレオイメージの制御し、音を広げる作業をしてきました。Stereoizerは魔法のようにステレオイメージが広がり、StereoplacerはEQのようにステレオ感を制御できます。この二者の使い分けですが、実際に使ってみるとエフェクティブにステレオ・イメージを広げる場合はStereoizer、補正目的で使う時はStereoplacerという感じでした。

さて、今回の作業の試聴はこちら。ステレオイメージを調整したことでサウンドに広がりと奥行きが出て、印象がぐっと変わったと思います。

 

 


 

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プロフィール

Koyas

Artist, Producer, psymatics label founder, Ableton Certified Trainer, Ableton Meetup Tokyo founder, LANDR Contents Adapter

 

Koyasは東京を中心に活動しているアーティスト・プロデューサーでエレクトロニックなライブ・アーティスト向けレーベル”psymatics”を運営している。

 

彼はDJ Yogurtと共に数々の作品をリリースし、Fuji Rock Festivalをはじめとする数々の舞台に出演、曽我部恵一BAND/奇妙礼太郎/ケンイシイ等幅広いジャンルのリミックスを手がけた。

 

その後2013年に電子音楽における演奏の要素にフォーカスしたレーベル、”psymatics”を設立し、翌年にはCD HATA(from Dachambo)との即興セッションユニットで作品を発表。psymaticsレーベルは、2015年にイギリスの伝説とも言えるアーティストThe Irresistible ForceのリミックスEP ”Higher State of Mind”を12インチヴァイナル限定でリリースした。

 

彼はそうしたアーティスト活動の一方で音楽機材や制作に深い造詣を持ち、雑誌やwebメディアに音楽制作や機材についての記事を寄稿・翻訳するなど文化的な活動もしている。2014年に日本人として初のAbleton認定トレーナーの一人となり、東京のAbletonユーザーグループ”Ableton Meetup Tokyo”の発起人として定期的にミートアップを開催している。

 

psymatics
http://psymatics.net/

 

Ableton Meetup Tokyo
https://www.facebook.com/AbletonMeetupTokyo/

 


 

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Stereoizer

Stereoplacer

 

 

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