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作り手の「音の世界観」まで見えるレベル— Symphony Studio レビュー by 前田 和哉

2025.07.25

音楽的でテンションが上がる、驚くほどクリアで解像度の高い音

この自宅スタジオのDolby Atmos 7.1.4環境でSymphony Studioの出音を初めて聴いたとき、まず感じたのはその驚くほどのクリアさと、非常に高い解像度でした。音の情報量が圧倒的に多く、レンジも広い。クリアな音質でありながら、しっかりとした厚みと存在感をがあります。

サウンドの輪郭が明瞭で各楽器の分離がよく、リバーブ音の消え際までしっかりと聴き取れます。反応が速い印象ながらもピーキーにはならずに、レスポンスの良さと豊かな情報量が見事に両立しています。イマーシブ・ミックスの楽曲では音の位置関係がより明確に感じられ、特にリアやサイドの音がはっきり聴こえるようになりました。Symphony Studioを使うことで、空間全体の音のバランスをこれまで以上に正確にコントロールできるのではないでしょうか。

マイクプリについても、非常にクリアで芯のあるサウンドが特徴です。マイクごとのキャラクターの違いがはっきりと表現され、クリエイティブなスイッチが自然と入るような、音楽的な魅力があります。

さらに特筆すべきはヘッドフォン・アウトの高性能。これだけの解像度がヘッドフォンで得られるなら、通常の音楽制作はもちろん、バイノーラルでのイマーシブ・ミックスにも信頼して使用することができます。実際にイマーシブ音源をバイノーラルで試聴した際には、音の定位感や粒立が驚くほど明瞭で、空間の臨場感がリアルに伝わってきました。

Symphony Studioのサウンドをひと言で表すなら、「音楽的でテンションが上がる音」ですね。聴いた瞬間に自分の気持ちが高まる、そんな魅力的な音です。

紫色の、プロ機材らしい存在感

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驚きだったのは、普段は事務作業用に使っているMacBookにSymphony Studioを接続しただけで、トラックダウンに十分使えるクオリティの音が出てきたことです。

このスタジオのメインマシンは、音質向上のためにスペックや電源周りにこだわっているのですが、何のチューニングもしていない普通のMacBookにただ接続するだけで、ここまで高品位なサウンドが得られるとは思っていませんでした。

拡張性をあえて絞って価格を抑えながら、ここまでのサウンドクオリティを実現している点には素直に感動しました。Apogeeらしい紫色の筐体デザインも、プロ機材らしい存在感があってとてもクールです。サウンドエンジニアにとって1Uというサイズは比較的コンパクトなので、外部スタジオでの収録などでも取り回しが良く実用的ですね。

入力部搭載のDSPエフェクト:ECS Channel Strip

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ECS Channel StripのEQはナチュラルかつ、しっかりと効く印象です。特に中域のピーキングEQが優秀で、マイクの周波数特性を補ってかけ録りする際に重宝すると思いました。コンプレッサーは、スレッショルドとレシオをざっくりと設定するだけで、ダイナミクスをほどよく整えることができます。こちらも、かけ録り用途にちょうどいい使いやすさです。

作り手の「音の世界観」まで見えるレベル

良い音を私なりに定義するなら、それは「楽曲やアレンジにマッチしている音」だと思っています。そして、その最終的な音のゴールにたどりつくためには、幅広く対応できるポテンシャルが録り音に求められます。録りの段階でクリアさと情報量がしっかりと確保されていることが不可欠なのです。

ミックスをしていく工程では、その味付けの変化をしっかりジャッジできる、高い解像度を持ったオーディオインターフェースが必要になります。データを再生した瞬間に、定位や奥行といった音のピントを一瞬で把握できるだけでなく、アレンジャーやエンジニアが描いている音の世界観まで見えることが理想的だと考えています。

Symphony Studioは、驚くほど高音質なうえに価格も非常にリーズナブルです。デジタルI/Oの拡張が不要で、IO・スピーカー・ヘッドフォンというシンプルな構成で十分な方には、間違いなく最適な選択肢だと思います。これからレコーディングやイマーシブ・ミックスを始めたい方に、ファーストチョイスとしておすすめしたいですね。


プロフィール
前田 和哉

前田 和哉

エンジニア

2004年、パラダイススタジオにてキャリアをスタートし、現在はフリーランス。
ポップスからCM音楽、ライブ音源など様々な作品を手掛ける。
自宅に7.1.4のシステムを構え、Dolby Atmos Mixも精力的に行なっている。


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