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Sonnox Fab Tips No.4:レコーディング界における差別化の証拠?:すべての周波数は平等であるか

(再掲記事)プロデューサー/エンジニアのFab Dupontによるアドバイス

2016.02.04

blog_20160204_fabFab Dupontによる、周波数別のコンプレッションにおけるTips。多くの人が悩みを抱えるローエンドのコンプレッションについて語っています。コンプレッサーのかけすぎは音痩せや低域のロスにつながりますが、それを回避する方法をOxford Dynamicsを使用して解説。複数のダイナミクス処理を1つのプラグイン内で行えるOxford DynamicsならではのTipsです。

Fab Dupontは近年プラグイン・デベロッパー、ハードウェアメーカーの開発にも携わるだけでなく、音楽制作のあらゆるテクニックが学べるpureMix.netを主催。そのテクニックを惜しみなく公開しています。

** 本記事は弊社旧ウェブサイトに掲載していた記事を移植したものです


 

デジタルレコーディングの到来から、レコーディング音楽についての審美観は大きく変わってきた。同時に、僕らの音楽のサウンドに対する志向も、過去三十年でものすごい進化を遂げた。僕らの両親の時代よりも、僕らはスピーカーからもっとベースが響いて欲しいと期待する。その証拠に、60〜70年代の先駆的なレコーディングと(80年代はスキップしよう、ちょっとぶっ飛んでいるから)、より最近のモダンなレコーディングを、馴染みのスピーカーで聞き比べてみるといい。もしそれでもハッキリしない、というなら、次のどちらがよりヘビーなサウンドか、自問してみよう『76年式のシボレーから流れるバリー・マニロウか、それとも08年のエスカレードから聞こえるJayZか?』

最近はみんなが「もっともっと」とベースをトラックに詰め込もうとする。そしてみんなが全部の音をラウドにしたがる。だけど両方を同時に得るのはひどく難しい。なぜだろうね?

カギになるのは、すべての周波数が同じ種類や同じ量のエネルギーを備えているわけではない、ということ。シンプルに「エネルギー」は単に「レベル」と捉えてみよう。トラック内のローエンドは、ハイエンドと比べて、聴感上同じラウドネスを得るためにより多くの「レベル」を必要とする。言い替えると、周波数帯域のローエンドは、ミックスのほとんどを占めていことになるんだ。

本当かって?そうさ。

試してみよう:非常にバランスの取れたヒップホップ、R&B系のミックス(一つくらいは手元にあるよね?)を再生して、アベレージレベルをメーターで(これも持ってるよね? 編注:RMSメーター)見てみよう。次にボーカルをミュートして、どれくらいメーターに変化があるか、続けてベース・ドラムをミュートしてどれくらい変化があるか…さて?

そのとおり。ベース・ドラムをミュートすると、メーターが一気に下がる、にもかかわらずボーカルの方がより大きく、はっきりと聞こえるだろう。(もしアカペラのミックスでこれをやって変化が見えない、なんてことを言う人は、授業が終わったあと職員室に来なさい) これは特にコンプレッサー、リミッターなどをセッティングする際、極めて重大で注意を払うべき点だ。ローエンドがエネルギーがより顕著ということは、それを処理するプロセッサーは、高域よりも低域に対して反応しやすくなる。


 

僕がよく聞かれる質問「よう、ベースをもっとガツンとコンプしてファットにできないか?」

で、いつも答えているのが「もっとコンプをかけたいのか、ファットにしたいのか、どっちだい?」


 

Dynamics-Lgeさらに試してみよう:ある程度良好に録音されたエレクトリック・ベースにOxford Dynamicsのコンプレッサーでがっちりコンプを掛けてみる(レシオを4:1、アタックとリリースを4ms、そして10dB程度までリダクションが得られるまでスレッショルドを下げる)。メイクアップゲインのノブで、コンプレッションされたシグナルと、そうでないシグナルが同じレベルになるよう、メインのバイパス・スイッチを使いながら調整しておくことも忘れずに。さあ、何がわかるかな?おそらくサウンドのレベルはより均一になるけれど、ローエンドは失われているはずだ。これはコンプレッサーが、ラウドなものをソフトにするよう設計されているからだ。だから、もしローエンドが最もラウドなものなら、より強くコンプレッサーにぶつかり、結果よりソフトになる。意外な驚き、かもしれないね。

この悲劇的な状態に対処するには、どうしたらいいだろう?

まず初めに:習慣化しているコンプレッションの扱い方に気をつける、でないと最後に大変なことになる。

もしくは:サイドチェインのテクニックを使って、ローエンドを保持しつつコンプレッションすることもできる。

やり方はこうだ:Oxford Dynamicsをインサートしたベース・トラックに戻ろう。さっきの設定のままなら、強めのコンプレッションでいい感じに潰れているはずだね?なら完璧だ。さあSidechain-EQのモジュールで、ベースを下げる(EQで220Hzかそこらを-10dBカットして、シェルビングとSC-EQスイッチを有効にする)。これでコンプレッサーのスレッショルドはEQされたシグナルに反応するけれど、クリーンなシグナルだけを処理する。ちょっと考えてみると、ここでやっていることは…コンプレッサーに向かって「よう!(アメリカ人かイギリス人かで違うかな)、ここで送っているシグナルが実際にコンプしてもらいたいバージョンなんだ。ベースは入っていない、だからベースには反応しないでくれよな、オーケー?」と言っているわけだ。

サイドチェインを有効にすると、レベルがぐっと上がるのがわかるだろう、オフにするとまたガツッとコンプレッションがかかるはず。これは、サイドチェインがオンになると、コンプレッサーがEQを施したサイドチェイン・シグナルを実際のシグナルとして検知するので、ベースのエネルギーを抑えこまなくなるからだね。一丁上がり、というわけだ。気づいているかもしれないけれど、こうしたコンプレッサーのセッティングは、極端に設定しなければ、コンプしないバージョンに較べて、本当にコントロールの効いた、ファットなベース・サウンドを創りだすことができる。素晴らしいよね?

あー、そうだ。「ファットvsラウド」の 問題とは何だったか?ふむ、ちょっと脇道にそれてしまったけれど、こうして考えてみると良いと思う:決まった広さの部屋に何匹の象を詰め込むことができるか?これ以上無理だ、というくらいまで象を押し込むと、部屋がギシギシとおかしなノイズを発し始めるはずだ。同じことがミックスについても言える。これは次回、さらに追求していこう。

 



 

筆者について:

Fab Dupontはフランスに生まれ、現在はニューヨークを拠点に、世界各地のスタジオでミュージシャン/プロデューサー/エンジニアとして活動しています。マンハッタン、イーストビレッジにある彼個人のスタジオでは、ジェニファー・ロペス、マーク・ロンソン、アイザック・ヘイズを初めとする多くの作品が生み出されています。「The Rundown」や「Washington Heights」といった映画のサウンドトラック、さらにアップル 、モトローラ、ジョンソン&ジョンソンといったCM音楽まで幅広く手がけるなど、多方面でその才能を発揮しています。

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