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KROTOS製品によってサウンドエフェクトの表現力と制作効率が大幅に向上した

2019.06.04

サウンドエフェクト(効果音)やフォーリー制作に主眼をおいたソフトウェアを数多く開発する新進のブランド、KROTOS。

人間の声をモンスターやロボットボイスに加工するDehumaniser、実物から架空のものまであらゆる銃器・武器のサウンドを作り出すWeaponiser、オーディオ入力をトリガーにして、フォーリーサウンドにさらなる生命力を与えるReformerなど、ゲーム、映画、テレビのサウンド制作に新しいフローを提案し続けている。

10年もの長きにわたりカプコンでサウンドデザインを行なってきた北村一樹氏。現在は自身が代表取締役を務める株式会社コネクテコを立ち上げ、主にサウンドエフェクトを主体とした制作を行なっているが、数多くの制作現場でDehumaniser、Weaponiserを活用しているとのこと。ハイクオリティなサウンドエフェクト制作現場ではどのようなフローで音が生み出されているのか、またKROTOS製品をどのように活用されているのか、インタビューを行なった。


MI

北村さんが代表を務める株式会社コネクテコはサウンドエフェクト専門の会社とのことですが、会社を設立されるに至る経緯と、現在の業務について教えていただけますか?

北村 一樹 氏(以下 北村)

設立以前は、株式会社カプコンで10年間ほどサウンドデザイナーとして様々なゲーム作品に携わってきました。退社後に株式会社コネクテコを立ち上げ、現在はPlayStationやNintendo Switch、スマホのゲームからVRアトラクションまで幅広くサウンドエフェクトの作成、収録、編集、実装までを行なっています。「作曲以外の音に関すること全て」ですね。このスタジオでは様々なサウンドエフェクトの収録はもちろん、編集、ミックス、プログラミングまで行っています。

MI

このスタジオではほぼ全ての作業が行えるということですね。

北村

はい、MAルーム、コントトールルーム、アフレコルーム、それからフォーリーステージもありますので、収録から編集、ミックスまで全て行うことができます。7.1chシステムが常設ですが、マルチチャンネルのVRにも対応できます。MAルームではKROTOS Dehumaniserを使って、自分の声をモンスターやロボットなどの声にして演技収録なども行っています。

MI

コントロールルームから小麦粉や下駄などが見える光景は新鮮です(笑)

北村

そうですよね(笑)ここではあらゆるサウンドエフェクトを収録していますから。木材から鉄、石など素材ごとのパネルがあって多種の足音を収録したり、天井からマイクを吊るしてガヤなども録音できます。

MI

この部屋は天井も高いので、空気感の絶妙なコントロールも対応できそうですね。

北村

そうですね。天井を高く設計したおかげでマイクの距離を自由に変えられるので、自由な響きが得ることができます。

MI

従来からある伝統的なフォーリーサウンドも収録でき、さらにコンピューターを用いた制作環境の融合が効率化とともに斬新なサウンドエフェクトの作成を担っているのですね。ソフトウェアではKROTOSの製品をご愛用いただいているとのことですが、どの製品を使っていますか?

北村

現在はDehumaniserとWeaponiserを使っています。

MI

人間の声を「人間じゃない」ものにするDehumaniser、そして「あらゆる銃器」の音を作り出すWeaponiserですね。どのようなきっかけで導入されたのですか?

北村

2017年末頃に、あるゲーム作品で大量のモンスターボイスを作るという仕事があって、大量というだけでなく多様さも求められ、必要性に駆られて導入しました。

MI

2017年末というと、Dehumaniserがリリースされて間もないころです。導入に至ったポイントはどのような点でしたか?

北村

自由なパッチング、参考になるプリセットの豊富さはもちろんですが、演技をリアルタイムで行いながら制作できるというレスポンスの速さが決め手でしたね。


死にかけているモンスターの「力の抜けていく感じ」

MI

Dehumaniserは "声のニュアンスをそのまま変換" できることが特徴で、いわゆるサンプル波形をたくさん用意して貼り付けていくようなものとはアプローチが異なります。シンセサイズ部にはグラニュラー、ピッチシフト、フランジャーなど様々なエフェクトも自由に配列できるので、縦横無尽に「モンスター」を生み出すことができます。

北村

はい、実際に自分の声を使って演技をしたニュアンスがそのまま変換されるので、シーンにピタリと合った唸り声や叫びなどの制作が格段に早く、品質も高くなります。

MI

Dehumaniserを導入される前はどうされていたのですか?

北村

古典的な手法ですが、ピッチシフターやハーモナイザー、ディストーション、グラニュラーなど様々なエフェクトを駆使したり、サンプルを加工して作ったりしていましたね。

MI

サンプルの加工だと、バリエーションを作ったりシーンに合った微妙な変化を出すのは難しそうですね。

北村

そうなんです。かなり大変でした。特にバリエーションは1つの作品の中でも膨大な量を求められるので、例えば動物のボイスを加工してバリエーションを作るというのは途方もない「作業」の時間になってしまうんですよね。

MI

Dehumaniserを使えば、マイクに向かって自分が放ったセリフや唸りがそのまま生かされ、バリエーションを作ることもより短時間でできるようになります。時短ができた分、ニュアンスや映像とのマッチングなどよりクリエイティブな部分に時間を使うことができますね。

北村

その通りです。セリフや叫び声のタイミング、長さのコントロール。マイクに自分が込めた思いまでもが反映されるので、非常に効率が良くなりました。

例えば、死にかけているモンスターの「力が抜けていく感じ」とか、声のニュアンスがそのまま反映されます。Dehumaniserを使用した作品の声は、全て僕の声なんです(笑)声優さんにお願いすることもなく、自分で演技をしながら声を当てています。

ちなみに、Dehumaniserを使って収録を行ったあとはよく風邪をひいてしまいます(笑)アフレコ演技のときに感情を入れすぎて叫んだり唸ったりしちゃうんです。

MI

リアルタイムに声が反映されるから、余計に感情をこめやすいのかもしれませんね(笑)

北村

そこまで感情をいれなくてもうまく変換されるんですが、つい力が入ってしまいますね。

MI

より使いこなす上で、どのような工夫をされていらっしゃいますか?

北村

自分なりの使い方として、例えば馬っぽいモンスターのときに、自分の声だけでなく馬の鳴き声のサンプルを一緒にDehumaniserに入れて処理をすると、少し馬っぽさを持ったボイスを自分の声のニュアンスで作り上げることができます。

MI

面白い使い方ですね!複数の音声を入力することでDehumaniserがより面白い反応をする、音作りの幅が広がりそうです。


Wwiseにこのエンジンが内蔵されてほしいくらい

MI

銃器の音を自在に作り出すことができるWeaponiserについてお伺いします。Weaponiserは実在の銃声サンプルなども豊富にプリセットされていますが、撃鉄を引いた音から発射音、爆発音、そして余韻などがサンプルレイヤーとして分割されており、自由な組み合わせで新しい「銃器」を作ることもでき、さらにシンセレイヤーもあるので、レガシーな銃器から未来的な仮想銃までをカバーすることができます。こちらもすでにいくつかの作品で使用されたとお聞きしました。

北村

例えばあるゲームでボウガンを使用するキャラクターが出てくるのですが「ボウガンを連射する」という現実ではあり得ない武器を使うんです。単発のボウガンのサンプルは以前に自分で作ったものがあったので、これをWeaponiserに読み込ませて作ることにしました。Weaponiserには「Burstモード」といういかにも連射っぽい機能があって、これをオンにするだけで簡単に自然に連射の音を作ることができるんですね。もちろん映像のタイミングに合わせて連射時間やタイミングなども調整することができます。レベルやピッチをランダムにすることもできるので、不自然な連射音ではなく「リアルな連射感」が得られるのは、とても便利です。

MI

Weaponiser導入以前にそういった依頼があったときには、どのように作成されていたのですか?

北村

ものすごくアナログな手法で、ワンショットのサンプルを映像に合わせてDAW上に貼り付けて作っていました。やっぱり「切った貼った」感が出てしまうし、長さの調節にも手間がかかってしまっていました。

MI

Weaponiserでの音作りは、どのあたりに重点を置いているのでしょうか?

北村

Weaponiserの特徴として、レイヤーが4つに分かれていることが挙げられます。銃声を例に取ると、アタックの音、ボディーの音、インパクトの音、テイルの音。特にテイルの音は「距離感」の演出に大事な部分なので、ここが独立していることは嬉しいですね。

ゲームの場合、自分が動かすキャラクターと敵となるキャラクターがいたとして、「自分と自分が持っている武器」の距離は一定ですが、「敵が持っている武器」までの距離は大きく変動します。Weaponiserは素材ごとにレイヤーが分かれているので、遠景、中景、近景それぞれの位置で打っている銃の音のバリエーションを簡単に作ることができます。Weaponiserがなかった頃はすべての音をゼロから作っているような感覺でしたが、これなら質感も統一したまま距離感だけをコントロールできる。

MI

同じ方向の音なんだけど、距離や材質や大きさが違う。KROTOSの製品はこういったバリエーションを作ることが得意とも言えます。

北村

そうですね。まさにそれに助けられています。Weaponiserなんかは機能過多なんじゃないか?と思うくらいパラメータが豊富ですが、かゆいところに手が届きます。一般的な銃器だけでなく、SF的な武器も得意。シンセだけで作った音だとおもちゃっぽすぎて現実味がでませんが、実銃の要素を加えられるので「空想上の武器なんだけど、リアル」という相反する音を作ることができます。例えばターミネーターとかエイリアンのような絵的にリアルな作品で音を作る場合、アニメっぽい音だと浮いてしまうし、かといってリアルなだけでもつまらない。この中間の微妙なさじ加減がしやすいんですね。

MI

ご自身でサンプルされた音は使いますか?

北村

はい、これまでたくさんの音を作ってきましたので、Weaponiserに取り込んで使うこともあります。自分のサンプルにWeaponiserでテイル音だけを足したり、アタックにインパクトや機構の音を加えたりとか。作品によっても音の作り方は異なりますが、例えばプレイヤー視点の場合は「カチャッ」という機構の音が大きくなるし、三人称視点の場合には火薬の爆発音が大きくなるので、様々なサンプルを都度用意して調整します。

MI

特に気に入っている機能などはありますか?

北村

やはり連射(Burst)ですね。ボタン1つでプレビューもできるし、連射の間隔調整も簡単。口径の大きなものほど間隔も広くなるので、例えば対空砲のようなものなら比較的間隔を広く、マシンガンは少し狭く、航空機などに搭載されている機関砲は30ミリ秒などかなり短いタイミングで設定します。間隔の調整は銃器の大きさ、キャラクターに大きく影響するので、重要なポイントなんです。連射をする時間もボタンを押している長さで調整できますから、かつての「切り貼り時代」から比べれば、圧倒的にやりたかったことに短時間でたどり着けるようになりました。

MI

サンプルライブラリだと種類こそたくさんあれど、同じ銃器の様々なバリエーションって少ないですよね。

北村

そうなんです。だからこそ、Weaponiserのバリエーションの豊かさは圧倒的。Wwise(ゲームサウンド開発用のミドルウェア)にWeaponiserのエンジンを内蔵してほしいくらい気に入っています。内蔵されれば、銃器のボディ、テイル、エンベロープなどをリアルタイムに演算して、距離感や視点などシーンに合わせた調整もできますしね。

MI

今後KROTOS製品は、北村さんの制作の中でどのような活用を予定されていますか?

北村

今後、セッションの全般を192kHzで行いたいと考えています。192kHzで録っておくと、思い切りピッチを下げても高精細な音質が保てるので、その音をDehumaniserに入力してみたい。きっといい結果になると思うんです。そのために100kHzまで対応するマイクなどもすでに用意しています。

MI

Weaponiserの「乗り物版」とも言える、Igniterという製品もつい先日リリースされました。トヨタからフェラーリ、バイク、ヘリコプターなど代表的なものはもちろん、Weaponiserのように「架空の乗り物」を作るために生まれた製品で、まさに北村さんにもお試しいただきたい製品です。

北村

面白そうですね!試してみたいと思います。


北村 一樹 氏

株式会社コネクテコ 代表取締役社長
洗足学園音楽大学音楽音響デザインコース 講師


同大学・コースを首席卒業後、株式会社カプコンへ入社。
2017年より株式会社コネクテコを創業。

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