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グレゴリ・ジェルメン 360 Reality Audio 作成テクニック解体新書

2022.11.10

2022年10月14日-15日の2日間で開催されたMIFES2022にて開催されたグレゴリ・ジェルメンさんによる360 WalkMix Creator™を活用した360 Reality Audio作成テクニック。

45分のセミナーとは思えないほど濃密な内容のセミナーでした...
今回は時間の都合で解説しきれなかった箇所の追記を加えたグレゴリ・ジェルメンさんの360 Reality Audio作成テクニック解体新書をお届けいたします。

 

1:概要紹介

まず、冒頭でご紹介したのは360 WalkMix Creator™の概要紹介です。360 WalkMix Creator™は360度全天球の好きな場所に音を配置することができ、リスナー側は全身包み込まれるような没入感ある立体的な音場を感じることができる、新しい音の体験になる360 Reality Audioを作成する上で必須のツールです。

360 Reality Audioはオブジェクトベースの規格で、各オブジェクトの配置、移動から書き出しまで本製品1つで完結します。 複数本のスピーカーでの使用も可能ですが、ヘッドホンでのバイノーラルでの活用もできるので、パソコンとDAW、360 WalkMix Creator™があればどなたでも作成が可能です。

空間オーディオというとAppleMusicで配信されているDolbyAtmosも有名です。この2つの規格や、オブジェクトベースという聞き慣れない用語は下記コンテンツにて詳しく説明しています。

【どう違う?】 Dolby Atmos Musicと 360 Reality Audioの4つの違い

2021年、Apple Musicが空間オーディオに対応し大きな話題となりましたが、以降、Dolby Atmos Musicや360 Reality Audioといったイマーシブフォーマット対応の音楽コンテンツが続々とリリース…

pro.miroc.co.jp(Rock oN PRO) にて続きを読む

 

360 WalkMix Creator™にて作成されたファイルは現時点で下記8種類の書き出しが可能です。

360 Reality Audioの納品フォーマットであるMP4 / MPEG-Hの書き出しはもちろん、選択されたスピーカーでの書き出し、ヘッドホン用バイノーラルでの書き出し、さらには最新のアップデートでDolbyAtmos用のADMファイルへの書き出しに対応しました。

これらを活用することで、360 WalkMix Creator™のみで5.1chサラウンドやDolbyAtmos形式での制作が柔軟に行えます。

 

2:楽曲の視聴とテクニック紹介

360 WalkMix Creator™の画面で球面上に配置されている丸いもの全てが各オブジェクトです。

音の出ているオブジェクトは点灯し、オートメーションで位置情報が書き込まれているオブジェクトはその情報に合わせて移動します。

今回の音源はステレオ作品がすでにある楽曲の360 Reality Audio版とのことで、ある程度ステムにまとめられたオブジェクトを活用しています。

360 WalkMix Creator™には最大128オブジェクトの配置が可能なので、ステムを活用せず全ての音源を好きなように配置することも可能です。

 

3:360 Reality Audioのオブジェクト配置のコツ

ステレオですでにある楽曲の360 Reality Audio版を作成する際に360度球体のどこに音源を配置していくのかが大きなポイントになります。

この音源はここに置くべきだというようなセオリーもまだ存在していないので、楽曲のストーリーやアーティスト/エンジニアさんの個性に合わせて自由に配置できることも魅力のひとつです。

 

4:360 Reality Audioで変化のあったエフェクト・テクニック

ステレオの場合音のマスキングを防ぐためのEQ処理を行うことが多いですが、360 Reality Audioの場合音をぶつかることなく配置できます。そのため音の被りを無くすEQ作業は大幅に削減可能です。

その代わりにバイノーラルに変換された際に音色に変化が起きてしまう音源も存在するため、補正が必要になる場合があります。

また、360 Reality AudioにはLFE(サブウーハー)の概念がないため、Waves R-Bassやsubmarine等で低音を増幅するのもテクニックのひとつです。全球面での配置のためリスナーとオブジェクトの距離感の調整が音量以外で行えないのですが、トランジェント処理を活用することで距離感を作り出すことも可能です。

 

5:360 Reality AudioとDolbyAtmosミックスの違い

先ほど転載したROCK ON PROのコンテンツにて概念の違いを紹介しています。Dolby Atmosは映画など映像から派生した音声規格ですが、360 Reality Audioは音楽を中心としてできた規格なので、より音楽的にクリエイティブな表現が可能です。

 

6:リスナーさんからの質問

1:ベッド・トラックについて

ベッド・トラックの概念はないのですが、360 WalkMix Creator™ではステレオ、5.0、7.0、7.0.2、7.0.4.2B、13.0など様々なスピーカー・レイアウトでのモニタリング&書き出しが可能です。

2:リバーブについて

リバーブのインサートされたAUXトラックに360 WalkMix Creator™をインサートすることでリバーブも活用できます。

ステレオ・リバーブだけでなくサラウンド・リバーブのインサートも可能なので自然に近い空間表現はもちろん、非現実的な立体空間を作り上げることも可能です。

※360 WalkMix Creator™にインサートできるチャンネル数はDAWのチャンネル数に応じます。

 

まとめ

今回のセミナーではステレオ音源としてすでに配信されている楽曲を360 Reality Audio化するテクニックをお届けいたしました。

作成した360 Reality AudioはArtist Connectionでの配信や、Tullyというミュージックデリバリーサービスを活用することでどなたでもAmazon Music Unlimitedなどの商用サービスを介して全世界に配信可能です。

既存のDAWに360 WalkMix Creator™をインサートするだけで作成できる手軽さと360度から降り注ぐ音の新体験をぜひあなたの手と耳でご体験ください!


グレゴリ・ジェルメン

Gregory Germain

レコーディング・エンジニアを目指すべく20歳でフランスから来日。専門学校卒業後スタジオ・グリーンバードを経て2011年Digz, inc Groupの専属エンジニアに。
2021年より独立し、Sonic Synergies Engineering LLCを設立。バンドものからR&BまでのJpop、Kpop、Dolby AtmosのMIXなど多岐にわたって活躍。

公式WEB: https://linktr.ee/mixedbygreg

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