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田辺恵二 Focal Alpha Evo レビュー

2023.02.16

1991年、Charaのデビューアルバムにてシンセプログラマーとしての参加を皮切りに、古内東子、ゴスペラーズ、及川光博、AKB48など数々のJ-POPヒット作に携わってきた田辺恵二氏。DAWの黎明期よりコンピュータを使用した制作環境を構築し、数多くのモニタースピーカーをテスト/使用してきた同氏が「発売から気になっていた」と話すのは、Focal ProfessionalのAlpha Evoシリーズ。Focalの中では最も安価なモニターながら、随所に散りばめられたこだわりの構造を持つこのモニタースピーカーは、田辺氏の耳にどう響いたのか。


今の音楽にマッチした製品、2020年代のスピーカー

MI

田辺さんはこれまでもたくさんのスピーカーを使ってこられていますよね。

田辺 恵二さん(以下敬称略)

そうですね、定番のNS-10Mも大昔は使っていましたし、その後も大手ブランドのものから、スピーカー界で歴史あるブランドのもの、もちろんFocal Professionalも含めてたくさん使ってきました。Focal Professionalからコストを抑えたスピーカーが出る、というのでこのAlpha Evoシリーズは気になっていたんですよ。

MI

Alpha 65 Evoをこのスタジオでお試しいただきましたが、率直な印象をお聞かせください。

田辺 恵二

箱から出してポンと置いただけですぐに音を出してみたけど、何も調整しなくてもクリアで、いい意味で今っぽい音がするスピーカーだなと感じました。誇張されている感じもしない。

「クリア」っていうと、何だか高域が痛いのかなって誤解されたくないので補足すると、ちゃんと高域の広い音像を確認することができて、音色の微妙なキャラクターの違いが分かる感じ。1つ1つの音源がちゃんと聞き分けられる。解像度が段違いのクオリティですね。

MI

田辺さんがスピーカーのチェックをされるとき、解像度の判断はどういった素材で行われるのですか?

田辺 恵二

ボーカルと、ボーカルにかけたリバーブですね。そのトランジェント(音の立ち上がり)と消え際。解像度が高くないスピーカーだと、トランジェントが潰れたように聞こえたり、リバーブがどれを使っても大差なく聞こえてしまう。解像度のチェックはこの辺を重点的に聞きますね。


MI

Alpha EvoシリーズはFocal Professionalの中ではエントリークラスの価格帯となりますが、音質面はいかがでしたか?

田辺 恵二

比較用に同じFocalの上位機種、STシリーズのST Solo 6と並べて比較してみました。もちろん価格帯が全然違うので「まったく一緒だ」とは言えませんが、Focalが目指しているであろう上質なローエンドの質感は共通しているし、ツイーターの伸びも素晴らしい。こうして並べて聴いてみると、Alpha Evoシリーズの価格は信じられないコストパフォーマンスだなと思いました。

それから、クロスオーバー(ツイーターとウーファーの境目)が今までのスピーカーと違っていて、まとまった自然な感じで聴こえます。

田辺さんFocalアップ

MI

2Wayスピーカーである限り、高域と低域を切り分けているポイントがあって、ここの聴こえ方を気にされるクリエイター、エンジニアは多いですよね。

田辺 恵二

そうですね。Alpha Evoはその切り分けられているような「2ウェイ臭さ」がなかったのも好印象です。ツイーターがすごく優秀だから、ウーファーが余裕をもって再生できている感じ。だから近年の低域を重視したミックスにもすごく合いますね。

MI

ここ最近、50Hz以下の超低域の扱いについて評価が変わってきていますよね。

田辺 恵二

そうですね。すごく大事なポイントだと思っています。超低域ってEQカットしちゃう人も結構多いんですけど、僕はカットするよりもコンプで抑える程度の処理の方が好きで、その時の判断がしやすいスピーカーだと思いました。

最近のスピーカーだからかセンターもバッチリ出てるし、この価格帯でサブウーファーなしでも超低域が感じられるのはすごいことですね。

高級機で感じられる正確なモニタリング体験ができるので、このスピーカーで耳を慣らしておけば、いつか上位機種に買い替えたときもスムーズでしょうね。Focalは、そういう高級機への橋渡しができるモニターを作ったんだなという意思を感じますね。


MI

Alpha Evoの低域の質感は多くの方から評価をいただいていますが、「ある程度の音量で鳴らさないとダメなんじゃないか」という意見を見かけることもあります。実際使っていただいてその辺はいかがでしたか?

田辺 恵二

まったく気になりませんね。音量を下げても低域の判断のしやすさには変化がありません。それから、イメージング(左右の広がり)も変化しないので、好きな音量で使えますよ。

MI

田辺さんは作編曲だけでなく、ご自身でミックスをされることもあるかと思いますが、エンジニアの方にもおすすめできるスピーカーでしょうか?

田辺 恵二

全然大丈夫、むしろ使って欲しいと思いますね。今の音楽って、例えばグラミー賞を取っているアーティストの作品なんかをアナライザーとかで見てみると20〜30Hzを平気で詰め込んでるんですよね。だからそういう超低域が確認できるスピーカーは今後重要になってくるでしょうね。最近のスピーカーはどれも高性能なものが揃っているけど、Alpha Evoは飛び抜けていると思います。シンプルに今の音楽にマッチした製品、2020年代のスピーカーだなと思いますね。

田辺さんデスクイメージ


田辺恵二プロフィール

作・編曲家

田辺 恵二 Keiji Tanabe

1991年よりCHARAや古内東子のデビューアルバムに参加
及川光博やゴスペラーズのアルバム、ツアーに音楽監督、作編曲家として参加
以降SMAP 浜崎あゆみ 柴咲コウ 岡本真夜 AKB48 SKE48 に楽曲提供
2002年 2006年 日本レコード大賞金賞受賞(編曲)
2021年【映画ゾッキ】サウンドトラック(プログラミング、録音)
2022年中国ネット映画【狂虎危城 Mutant Tiger】劇伴(作編曲、ミックス)
現在は作家活動の他ネットTV MCやラジオパーソナリティ等
他分野にも精力的に活動中

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