2025.07.31
音の立ち上がり(トランジェント)を調整して楽器の存在感や前後感をコントロールするとき、処理したい帯域だけいじりたいのに他の帯域まで影響を受けてしまい、音がイメージ通りにならない…。そんな経験はありませんか?多くのトランジェント・シェイパーは、サウンドの周波数全体に処理をかける設計になっています。そのため、ピンポイントの帯域を整えたい場面では、かえって音作りにハマってしまうことも。
そこで今回は、指定した帯域だけ処理できるトランジェント・デザイナー、FLUX:: BitterSweet Pro v3 をご紹介します。音の存在感や前後感だけでなく、まるでEQのようにサウンドの質感やニュアンスを自在にコントロールすることが可能です。
BitterSweet Proの大きな特長は、トランジェント処理を特定の周波数帯域に限定できる点です。「トランジェント=高域のアタック」というイメージをくつがえし、中域や低域のアタックを詳細にコントロールできることが大きな魅力です。
中央に配置された「Frequency Range」セクションで処理したい帯域を設定し、紫のボタンをオンにすると、指定している帯域だけをソロ試聴できます。つまり、処理したい帯域を視覚的、聴覚的にピンポイントでねらえる設計になっています。
加えて、右側の「Freq. Order」では、フィルターのスロープを6dB/Octから最大96dB/Octまで選択可能。このスロープ設定により、帯域を絞り込むフィルターカーブの幅をコントロールすることができます。
中心に位置するDYNAMICノブで、指定した帯域のトランジェントを「Sweet」または「Bitter」方向に調整します。
●Sweet:トランジェントをなだらかにして、音を柔らかく・なめらかにします。
●Bitter:トランジェントを強調し、シャープで抜けの良い音にします。
トランジェント処理は音量バランスに影響します。そのため、右側のSTATIC GAINノブを使って、トランジェント処理が適用された帯域の音量だけを補正できます。トランジェントを強調した帯域の音量を下げたり、逆に、強調したい帯域をブーストするEQのような使い方が可能です。
処理したい帯域の範囲指定と、トランジェントをコントロールするDYNAMICノブ、そしてこのSTATIC GAINノブ。おもにこの3つを操作することで、自在にサウンドのカラーや存在感をコントロールすることが可能です。
左上にあるメガネアイコンをクリックすると「Geek」モードに切り替わり、さらに3つの設定によって細かな音作りが可能です。
Diffボタンを使えば、実際に処理されている成分(原音との差分)だけをソロ再生でき、何がどう変わっているのかを耳で確認しながら調整できるのも便利です。
FLUX:: BitterSweet Proは、トランジェントを処理したい帯域を指定して、演奏のニュアンスや存在感を明確にコントロールすることが可能です。単体トラックだけでなく、2mixやグループトラックの低音/高音コントロールにも大変有用で、まるでEQのように音のテクスチャを描くことが可能です。
従来のトランジェント・ツールに限界を感じていた方や、簡単な操作でサウンドを一気にブラッシュアップしたい方にお勧めの、新世代トランジェント・デザイナーです。
BitterSweet Pro v3