2024.06.12
Apogeeは1985年に創立された会社で、ソフトウェアのUV22やAD-500、AD-1000といったコンバーターを使用していた方も多かったと思います。1997年にはAD-8000というマルチチャンネルオーディオインターフェイスをリリースし、当時レコーディングスタジオ界隈ではそれまでのAVIDを凌ぐアイテムになり一世風靡をしたのを記憶しています。
今回レビューするのはまだ記憶に新しいサウンド・シティスタジオBstで開催されApogeeセミナーで来日した伝説的レコーディング・エンジニアであるボブ・クリアマウンテン氏が監修するSymphony I/O Mk II。2011年には前身となるSymphony I/Oがリリースされています。
Symphony I/O Mk IIの特徴は最大で32入出力が可能で、正面には直感的に使えるタッチスクリーン・ディスプレイ、Thunderbolt、ProTools® HD、Waves SoundGrid®ネットワーク、Dante へのダイレクト接続ができ、それぞれ環境の異なった幅広いユーザーに使ってもらえる様配慮されています。Ginger Audio 社のGroundControl SPHEREというモニターコントロール機能を持ったソフトウェアを組み合わせることで近年制作が増えてきているAtmosなどのイマーシブ制作環境構築を追加でモニターコントローラーなど購入せずに始められます。
第3世代となったモジュールの音質は手元に来た資料によると、Symphonyシリーズの最高音質のAD/DA変換を32x32提供、ダイナミック・レンジ124dB (A)、THD+N -115dBのA/D入力と、ダイナミック・レンジ128dB (A)、THD+N -119dBという驚異的な低さのD/A出力とあります。
背面を見てみるとカードは必要に応じて選択購入でき、Avid ProTools HDXシステムとはDigilink端子で、CoreAudioを使用しているNative環境の場合はThunderbolt端子、更にDante端子も選べるのでDanteでネットワークを組んでいることの多いPA周りの機材ともデジタル接続が可能です。
今回はスタジオで使っているDAWでもあるAvid ProTools HDXとDigilink接続でProTools内に様々なジャンルの楽曲を取り込んでの試聴。試聴した環境には Avid HD I/O、Avid ProTools MTRX studio、Apogee Symphony I/Oもあります。
Symphony I/O Mk IIを使って音を聴いてみるとレンジの広さ、解像度と音質もさることながら、ブラインドでも圧倒的な表現力で音楽的、16分の刻むハイハットの強弱や、スネアゴーストの質感、ドラムのパンチ感、ピアノタッチ、ボーカルの子音のスムーズさ、リバーブの奥行き感など細かなディティールまで聴こえるのは作曲やミックスに大きなアドバンテージになるだろうと感じました。
クリアの中に感じるApogeeが今まで大事にしてきているだろうアナログ的要素、それに加え印象的で大事に感じたのは『静かなところがちゃんと静かに聴こえること!』うーん汗、正直Symphony I/O Mk IIを今まで聴いたことが無かったので驚き。インターフェースの違いでこんなに表現の差が出るのは興味深いですね。
一聴してSymphony I/OからSymphony I/O Mk IIへの音質の向上は大幅にアップデートしており、昔のイメージをお持ちの方は是非試してみて欲しいです。
さて、特徴的なのは音質だけではなくイマーシブ環境をこれから構築しようと思っている方の選択肢にもなるでしょう。16x16あれば充分なのかも知れませんがI/Oは最大で32x32まで可能なので、複雑なスピーカーセッティングも問題ありません。
Ginger Audio 社のGroundControl SPHEREという、何処までも痒いところに手が届く配慮のされたモニターコントロールソフトウェアを併用することでSymphony I/O Mk IIを内部ルーティングして自由度の高いモニター環境を構築できるのは新たにハードウエアのモニターコントローラーを別途購入必要がなくなるため、予算削減にもつながるのではないでしょうか。
Symphony I/O MkIIとGingerAudio Sphereでイマーシブのベースマネジメント
多くの名曲をミックスしてきたボブ・クリアマウンテン氏監修だからこそインターフェースApogee Symphony I/O Mk IIは、その高い音質、柔軟な拡張性、直感的な操作性で、プロフェッショナルな音楽制作において非常に頼りになるツールだと思いました。ミュージシャン、エンジニア、プロデューサーのあらゆるニーズを満たすこのインターフェースは、音楽制作の新たな可能性を広げること間違いないでしょう。
株式会社Mixer’s Labにてチーフ歴任後独立、フリーランスを経て株式会社サウンド・シティ、イマーシブDiv.の部長就任。
Bandサウンド、Vocalもの作品を得意としており、生きた声、艶やかな 楽器の音色は数多くのLiveレコー ディング、劇伴、大編成録音の経験からきており、Sound&Recording Magazine で3年間にわたるサラウ ンド記事連載、専門誌などへの執筆活動をこなす一方、 日本工学院専門学校非常勤講師を長く経験、現在 は専門学校(HAL東京、HAL大阪、HAL名古屋、東放音響専門学校)などの特別講師 として現場で培った知 識や経験を学生に伝えながら、近年はイマーシヴ作品に活躍の場を広げている。
株式会社ワイルドオレンジアーティスツにて音楽プロデューサーや作家マネージメントとしても活動中。
Symphony I/O MKII シリーズ