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ニラジ・カジャンチの Analog Magic!第3回:Neveコンプレッサー編

2025.05.16

25年間、Neveのマイクプリを毎日使っているという ニラジ・カジャンチ氏のスタジオ「NK SOUND TOKYO」を訪ね、アナログサウンドの魅力をうかがう連載企画「ニラジ・カジャンチのAnalog Magic!」
第3回は、Neveコンプレッサーをテーマにお届けします。

アニメソング制作をはじめ、個人でもボカロPとして活躍されている「ねりきり」氏をゲストに迎え、氏の楽曲素材を題材に、Neve 33609 Stereo Compressor Neve 2264ALB Mono Limiter/Compressor Module をハンズオンして頂きました。

左:ねりきり氏 右:ニラジ氏 

Neve 33609のアナログマジックは、バッファー回路を含む入出力段の設計

Neeraj Khajanchi(ニラジ・カジャンチ)氏(以下敬称略):

僕のスタジオにAMS NEVE 33609がたくさんある理由は、ダイナミクスのコントロールもありますけど、ラインアンプとしてバッファー回路を通したいというのが一番大きいです。33609のゲインで増幅した音が大好きで、自分の聞き馴染みある音に絶対なっちゃう。まさに「Neveアナログマジック」なんですよ!

この15年間、僕が録ったドラムの約500曲、その全てがNeve 33609を通っています。これはもう100%絶対なんですよね。たとえば、キックのイン/アウト、スネアのトップ/ボトム、ルームマイク2ペアにはもう常に使っているので、僕のスタジオでは33609の全リビジョン A / B / C / J / JD / N(現行モデル)が、6台フル稼働しています。

リビジョンによってサウンドが若干違いますが、僕は全リビジョンのオペアンプをほぼ全て同じものに変えているので、ゲインで得られるサウンドの色付けが統一されています。なので、コンプレッサーのキャラクターでリビジョンを使い分けているんです。キックとスネアにはどれを使うか、オーバーヘッドやルームマイクにはどれを使うか、また、ロック、ジャズ、ポップスなど、楽器やジャンルによってセレクトしています。

33609現行モデル Neve 33609/N

Neeraj Khajanchi: 現行モデルのNeve 33609/Nは、過去のリビジョンに比べてコンプレッションを深くかけることができます。大きなリダクションでもトランジェントが潰れずに、音のダイナミクスを生かしてくれるのが特徴ですね。なので、サウンドの印象を変えずにダイナミクスをコントロールしたい場合や、「音を完璧にリミッティングしたい」場面で活躍してくれるんです。

放送局がセーフティーツールとしてNeve 33609/Nを採用していますし、たとえばオーディオインターフェースのA/Dコンバーターが非常にセンシティブな場合には、Neve 33609/Nを使うことで、レベルオーバーの心配なく確実に機能させることができますね。

過去リビジョンの A / B / Cあたりは時々修理していますが、現行モデルのNはこの3〜4年間使っていて1回も壊れていないので、そういう意味でもコストパフォーマンスが高いと思います。


ねりきり氏の楽曲素材でNeve 33609/Nをハンズオン

ねりきり氏が制作した楽曲のセッションデータを開いて、ドラムのステムトラックとシンセトラックに、Neve 33609/Nを通して頂きました。

Neve 33609 Stereo Compressor

ドラムのステムトラック試聴

※モニタースピーカーまたはモニターヘッドホンにてご試聴頂きますと、サウンドの違いがよりお分かり頂けます。

Neve 33609/N使用後

ねりきり氏(以下敬称略):サウンドの質感がとても温かいですね!ドラム全体のほど良いまとまり感と、KickとSnareのアタックの整い方が心地よいです!


シンセトラック試聴

Neve 33609/N使用後

ねりきり:音の芯の面積がしっかりと太くなって、存在感のあるサウンドになったと思います!

2264ALB Mono Limiter/Compressor Module

Neeraj Khajanchi: Neve 2264ALBは結構ガッツリとコンプがかかってくれて、かなりクリエイティブな攻めた音づくりができます。ドラムとの相性が良くて、実際に生ドラムのレコーディングで使ったんですけど、キックやスネアに使わないでルームマイクに使いました。ミックスした時のサウンドの印象がとても良かったんですよね。しかもS/Nがいい!現代音楽シーンでのレベル感を考えるとき、やっぱりS/Nはとても大事だと思っています。

このNeve 2264ALBにしても、Neve 1073LBEQにしても、アナログオールドNeveのサウンドでありながらS/Nが本当に良いです。だから昔みたいにS/Nを気にして、使う場所を選ぶ必要がなくなったのも嬉しいですね。

プロのエンジニアって、1つの楽器に対してマイクを2本以上使用することがほとんどです。1本目は割とクリーンめなコンプレッサーをかけて、もう1本にはガッツリとかける。どちらのマイクも違うサウンドで録っておいて、あとからマイクのバランスで音作りをしています。そのテクニックを考えた時に、Neve 2264ALBを2本目のマイクに使うのがお勧めです。

クリエイターの皆さんもマイクを2本立てて、録りの失敗を恐れずにどんどん録りを楽しんでみてください!


ねりきり氏の楽曲素材でNeve 2264ALBをハンズオン

ねりきり氏が制作した楽曲のセッションデータを開いて、ベーストラック、ピアノトラック、シンセトラックにNeve 2264ALBを通して頂きました。

Neve 2264ALB Mono Limiter/Compressor Module

ベーストラック試聴

※モニタースピーカーまたはモニターヘッドホンにてご試聴頂きますと、サウンドの違いがよりお分かり頂けます。

Neve 2264ALB + Neve 1073LBEQ 使用後

ねりきり:Neve 2264ALBを使うと、音の粒だちがはっきりとした印象になりました。さらにNeve 1073LBEQを通した後は、ローの存在感も強まってアグレッシブな感じですね!


ピアノトラック試聴

Neve 2264ALB使用後

ねりきり:アタックが太くなって、中低域あたりのピアノアクション部の響きも感じられてかっこいいです!


シンセトラック試聴

Neve 2264ALB使用後

ねりきり:輪郭がはっきりして、中低域もファットになって、リードシンセとしてしっかり目立ってくれそうです!


コンプかけ録りのススメ(1)

Neeraj Khajanchi:アナログモデリングのプラグインは実機をモデルにしているので当然ですが、実機を使う上で最適なインプットレベルを考えて開発されているんです。

たとえばNeveのコンプレッサーであれば、-18db〜-16dbくらいでインプットするとユニティゲインになります。それをモデリングしているプラグインを使うときに、実機のユニティゲインを考えずに-12db〜-10dbくらいでインプットしてしまう人が多いです。そうすると、インプットレベルがユニティゲインよりも大きくなって、コンプレッサーのかかりが強くなる。それでプラグインのインプットを下げるわけですが、その使い方だと「実機のキャラクターを生かした美味しいサウンド」から離れてしまうんです。

なので、プラグインを上手に使うためにはある程度、コンプレッサーでダイナミクスをコントロールした状態で録っておいた方がいいんです。そんなにガッツリかけないで、2~3dbくらい叩いてレベルをある程度ととのえて録音する。そうすることで、プラグインメーカーが意図しているコンプレッサーのサウンドが得られます。

レベル管理の意識が低いと、意図しない所でプラグインの音が歪んでしまいます。各トラックで使用しているプラグインの音が少しずつ歪んでいて、その状態からマスターにEQ、ステレオエンハンサー、マキシマイザーをかけて音量を上げるじゃないですか。そうなった時、色々な音の間にある「間」の部分が悪いノイズで埋まってしまうんです。でもそのことには気づかないんですよね。狙っている歪みではない、プラグインの使い方を間違えた「悪い歪み」を出さないように、ダイナミクスの下準備をしてあげる必要があります。

コンプかけ録りのススメ(2):もう一つの大切な理由

かけ録りをお勧めするのにはもう一つ、大きな理由があるんですよ。機材面のテクニカルなことをたくさん話しましたけど、1回全部忘れてください(笑)。

一番大事だと思うことは、かけ録りをするとプレイヤーの演奏が変わります。それが狙いです。

たとえばアコスティックギターを録るときに、プレイヤーがヘッドフォンで自分の音をモニターしますよね。そのとき、コンプレッサーをかけた音を聞きながら演奏するのと、かけない音を聞いて演奏するのでは演奏が明らかに変わるんです。自分のサウンドの仕上がりが見えている状況だと、楽曲の中でどれくらいのパワーで弾けば自分が狙っている音になるのかが明確になります。バースはこれぐらい強く弾いてもいいんだとか、サビではこう弾けば自分がイメージしているサウンドになる、みたいな感じで、プレイヤーのパッションまでが演奏に反映されるんですよ。

エフェクト無しのダイレクトな音で1曲録っておいて、あとからプラグインでレベルを整えたり歪みを足したり、楽器の音に表情を持たせることも可能ですけど、プレイヤーの演奏でそれをやるのが一番音楽的なので、コンプのかけ録りはお勧めですよ!

Neeraj Khajanchi(ニラジ・カジャンチ)

レコーディング&ミキシングエンジニア

マイケル・ジャクソン、ボーイズIIメン、ティンバランド、リルジョン、 ジャヒーム、ヨランダ・アダムス などの海外一流アーティストを始め、YOSHIKI, 三浦大知, 大貫妙子, 木村カエラ, 南佳孝, 青田典子, 渡辺貞夫, Hana Hope, Mrs. Green Apple, Hana Hope, 小林愛香, 白銀ノエル, あんさんぶるスターズ!! などの国内アーティストまでを幅広く手掛ける、いま最も多忙なレコーディング&ミキシングエンジニアの一人。


ねりきり

作・編曲家

楽曲提供や、自身でボカロ曲の投稿等のアーティスト活動も行うクリエイター。幼少期にエレクトーンを習っており、鍵盤楽器とギターの演奏を得意とする。

Works

【ARCANA PROJECT】硝子玉の世界(作詞・作曲・編曲) / 【TVアニメ『魔王様、リトライ!R』OPテーマ/ ASCA】明日世界が終わるとしても(作曲・編曲) / 【アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism / 鈴木 羽那】無垢(作曲・編曲) / 【アイドルマスター シャイニーカラーズ / コメティック】平行線の美学(作曲・編曲) / 【藤城リエ】LIFE(作曲・編曲) / 【異世界のヘリオン 羽黒ヘリオン(Vo.前田佳織里)】Another-self(作曲・編曲) / 【TVアニメ「デュエル・マスターズWIN 決闘学園編」エンディングテーマ / 上月せれな】BRAND NEW MOMENT(作曲・編曲) / 【おはスタ ガル学 クリスマスエンディング曲 / Girls2 from South2】HolyMagic大人になっても解けない魔法(作曲)


33609 Stereo Compressor

1073LB Mono Mic Preamp Module

世界で最も優れたオーディオ・コンプレッサーの一つ
Neve 33609ステレオ・コンプレッサーは、音楽録音、マスタリング、ポストプロダクション、放送アプリケーションのための包括的なリミッティングとコンプレッサーを提供します。他に類を見ない使い勝手の良さと相まって、33609は30年間にわたり世界的なスタジオ・スタンダードとなっています。

¥xxx,xxx (税込)

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ストア

2264ALB

88RLB Mono Mic Preamp Module

500シリーズに搭載可能な伝説的なLimiter/Compressor
1974年に設計されたNeve 2264A mono Limiter/Compressorユニットは、瞬く間に伝説となりました。英国のNeve社のエンジニアによって製作された2264ALBは、同じアーキテクチャ、マッチングコンポーネント、オリジナルの手巻きトランスを使用することで、オリジナルの2264Aのユニークなサウンド特性を維持しながら、新たな機能を追加しています。

¥xxx,xxx (税込)

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