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1073OPXが「Ringo & Friends at the Ryman」で完璧な現場を実現

2025.04.11

伝説のステージ、象徴的なアーティストたち、そして業界で最も信頼されているエンジニアのひとり——Rob Dennis氏(以下敬称略)が、Neve 1073OPXの力を活かして一生に一度のパフォーマンスを見事に収録しました。

Ringo & Friends at the Ryman

左から:Paul Franklin、Rob Dennis、T Bone Burnett、Daniel Tashin、Greg Strike(敬称略)

Ringoなら、迷うことなく『Neveしかない』と思った

ナッシュビルのRyman Auditoriumで開催された「Ringo & Friends」を振り返って、Rack-N-Roll AudioのオーナーであるRob Dennisが口にした言葉があります。ツアーエンジニアやスタジオプロデューサーとしての豊富な経験を持ち、レンタル機材の提供も行うDennisにとって、これは大きな意味を持ちます。

Rob Dennis:完璧なギグでした。もう二度と、こんな仕事はできないと思います。

Dennisはこれまで、Ryman Auditoriumで何度も仕事をしており、Live at the Rymanシリーズの収録も数多く手がけてきました。この会場の音響特性を熟知しており、まるで観客がその場にいるように感じられるライブ録音を行うために、どんな工夫が必要かを誰よりも理解しています。

Rob Dennis:ここで仕事ができるのは本当に恵まれていると思います。この会場の響きをしっかり収録すること、そして観客の音を捉えること。この2つは別物として考えています。僕のセッティングはかなり細かく調整されていて、それが理由で呼んでいただけているのだと思います。

Ringo StarrがT Bone BurnettとともにRymanでのショーを計画していると知ったDennisは、すぐに連絡を取りました。Ryman側と、これまでにも多くのプロジェクトで一緒に仕事をしてきたBurnettのチームのレコーディングに自分が参加できるよう準備ができていることを伝えたのです。

今回の現場はスケジュール管理が完璧で、会場が4日間も押さえられており、1日目は機材搬入のみ。ヴィンテージ機材を慎重に設置・動作確認する時間が十分に確保されていました。2日目はまるまるリハーサルに使え、3日目と4日目が本番のパフォーマンスという流れでした。Dennisはそのライブレコーディングを担当し、CBSでの放送に向けてクリーンな収録を行いました。

Dennisは今回のライブ録音に集中するため、自身が信頼する機材を選定し、その中核としてNeve 1073OPXのプリアンプを使用しました。Carrie Underwood、Jellyroll、Keith Richards、Post Malone、Lee Brice、Red Clay Strays、Dusty Slayといったアーティストのパフォーマンスでも1073OPXを使用してきた実績があるため、今回も迷うことはなかったとのことです。

Rob Dennis:複数のフライト用リグを持っていますが、Ringoなら、迷うことなく『Neveしかない』と思いました(笑)。ビートルズの一員とT Boneを録音するんです。これ以上Neveが似合う現場はないですよね!

「魔法」はマイク入力のトランスにある

こうしたリグを構築できるのも、Dennisの多彩なキャリアがあるからです。

Rob Dennis:もともとはツアーエンジニアでしたが、スタジオでも20年活動しているので、私たちのモバイル録音機材は、いわばスタジオそのものなんです。1073OPXで気に入っているのは、自分が「トーンシェイピング」と読んでいる作業が行える点です。インプットトランスをあえて強めにドライブさせることで音にサチュレーションを加えることもできますし、逆に繊細で開放感のある音にしたいときは控えめにもできます。フェイズインバート、ハイパスフィルター、パッドなど必要な機能がすべて備わっていて、特にNeveらしい「魔法」はマイク入力のトランスにあると感じています。

Ringo & Friends at the Rymanは、Ringo StarrとT Bone Burnettがタッグを組んで進めている大規模なプロジェクトの一環です。このプロジェクトでは、The VillageのStudio ZにあるNeve Genesys Black(48ch G96コンソール)も使用されており、そこには1073OPXと同じプリアンプが採用されています。つまり、1073OPXリグをライブ録音に使用することで、プロジェクト全体を通じて一貫したサウンドを実現できるのです。

Ringo & Friends at the Ryman

1073OPXのラック

Dennisは、8台の1073OPXを使って合計64チャンネルを用意し、1073OPXでゲインを上げただけの素の音を収録しました。この手法により、セッティングの状態を非常に細かく把握できると言います。

Rob Dennis:モニターエンジニアやFOHがインイヤーでサウンドチェックをしているとき、彼らはコンソールの音を聴いているんです。そこにはEQやゲート、コンプレッションがかかっています。でも私はピュアなゲインだけを聴いているので、低レベルのノイズやハムを察知することができます。だからサウンドチェックの後で一緒に話をして、ミックスをよりクリアにする手助けができるんです。彼らも私が聴いているディテールに驚いてくれることが多いですが、私はただマイクプリの音をそのまま聴いているだけなんです。

またすべてアナログで操作できるのが良いですね。ノブを手で回して調整できますし、専用のアプリを使ってPC上で設定を保存することもできます。たとえば、メインアクトと前座が2組いる場合、それぞれのサウンドチェックの設定を保存しておいて、本番でボタン一つで呼び出すことができます。サウンドチェックと同じ状態を即座に再現できるんです。もしスネアの叩き方が本番で変わったら、大きな赤いノブを手で回してすぐに対応できるのも便利です。

1073OPXは信頼できるツール

1073OPXは、Dennisにとって非常に信頼できるツールとなっています。アナログの操作感とデジタルの利便性を併せ持った設計、そしてNeveのサポート体制にも満足しているそうです。しかし、何よりも重要なのはやはり「音」そのものだと語ります。

Rob Dennis:1073OPXは、まさにロックンロールの音です。私の子ども時代に聴いていた、好きなレコードの音そのものなんです。耳障りな高域成分があるときでも、あのインプットトランスがちょっと落ち着かせてくれるんですよね。トップエンドのトランジェント(立ち上がり)処理がうまいというか、少しだけ遅らせてくれるような印象です。マイクプリの中には非常に速くて細かいトランジェントまで全部拾うものもありますが、それが必ずしも適しているとは限りません。Neveは十分に速いんですが、必要なときにだけ美しくスローにしてくれるように感じます。

今回のように放送用のレコーディングを担当する場合、機材の信頼性は何よりも重要です。ライブパフォーマンスの音はまさに「命」であり、使用する機材には絶対的な信頼が求められます。1073OPXでのこれまでの経験から、ハイレベルな現場でもDennisは安心してこの機材を使用しています。

Rob Dennis:リモートレコーディングのリグにとって信頼性は最優先事項です。1073OPXを導入してから一度もトラブルが起きていません。

Rob DennisとGreg Strike

Rob DennisとGreg Strike

Rob Dennis:「Ringo & Friends」は完璧なギグでした。これまでの人生で唯一、完全に完璧だった現場です。それはチーム全体の功績です。全員がベストを尽くし、才能と人手にしっかり投資してくれました。それがこのプロジェクトの哲学であり、そして見事にそれが機能したのです。

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