2024.06.11
MI
1073 OPXを8台導入されたとのことですが、そのきっかけを教えてください。
河野哲朗氏(WOWOW)以下、河野
スタジオでHAの新規購入を検討していたときに、録り音がよく、かつライブ現場でも活躍できる便利な物を探していました。PAチーム間との繋ぎや、自分たちのシステム自体もネットワークが中心になっていたなかで、Dante対応の本機は上記のどちらの条件も兼ね備えていたため採用となりました。
MI
1073OPXのラックは、どんな現場で使われているのですか?
河野
弊社では8ch x 4台の32chラックが1つ、8ch x 2台の16chラックが2つの計64ch分を所有しています。
64ch分を全て舞台袖に持ち込んで収録する事もありますし、収録ベースが舞台から離れている際には16ch分のみをベースに設置して会場の端子盤経由で来た音声を取り込み、残りを舞台袖で使用することもあります。全てが1つのネットワーク内で監視できるため、とても気に入っています。
MI
1073OPXを実際に使ってみて、これまでNeveに抱いていたサウンドのイメージと比べてどうでしたか?
河野
従来のイメージ通りの音の太さはもちろんありつつ、そこにクリアさが加わった印象があります。
ライブ現場では音の回り込みも多く、少しこもった印象の音になってしまう事が多いのですが、1073OPXで録った音は明るく抜けがよく、トラックダウン時に作業時間の短縮にも繋がりました。2Uサイズで、Neveの音で8ch録れるというだけでもかなり嬉しいです。特にライブ現場ではコンパクトさやスピード感も求められるので。
最近はDolby Atmosなどの3Dサラウンドを目指したライブ録音も増えています。それに向けた会場のアンビや拍手の録音にも向いていますね。
MI
機能面で利便性を感じた点があれば教えてください。
河野
Danteカードを増設できる点がとてもありがたいですね。Danteが使えることで、他のAD機器に頼ることなくシグナルフローを完結できるため、システム全体を簡略化することができました。
DanteはProTools MTRXとの接続がメインとなりますが、その他にもPAさんからの「もらい」をDanteで行う際には、同じネットワーク内に入れてもらうだけでいいので非常に便利です。
またそこまで深くは試せていないのですが、ヘッドホンアウトが付いていることも大きなアドバンテージになると思います。DAWやコンソールがなくてもHA単体でマイクチェックや回線チェックができるので、現場ではとても助かります。
MI
マイクプリのリモートコントロール機能は使われていますか?
河野
頻繁に使うわけではありませんが、数回使用しています。
欲を言えば、複数台を繋いだときにアプリケーション側で同時に全台監視できると嬉しいなとは感じましたが、ネットワークケーブル経由でステージラック感覚でコントロールできるのはありがたい機能です。
MI
今後使用してみたい録音対象や録音環境があれば教えてください。
河野
まだクラシックオーケストラで1073 OPXを試したことがないので、ぜひやってみたいです。サウンドイメージ的にも、とても良い音が録れるのではないかと期待しています。
どのようなケースにおいてもDanteの存在は非常に大きく、私たちと同様にライブや中継業界でコンパクトかつスピード感が必要な方に、自信を持ってオススメできる機材です。
ライブレコーディングエンジニア
広島県出身の30歳。業界歴10年目。ライブレコーディングのシステム構築を中心に、生中継、配信などのエンジニアとして活動中。
伝統のサウンドと現代のニーズを融合 – 1073OPX