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EDo-mae Recordings Studio BFD3レビュー 後編

江戸前レコーディングス 鹿間氏が作成するBFD3プリセット

2015.02.17

BFD3の第一印象

ドラムソムリエ、江戸前レコーディングス 鹿間氏が作成するプリセット

アコースティック・ドラムの「本物の鳴り」を熟知したドラムソムリエであり、エンジニアでもある鹿間氏にBFD3のミックス・プリセット作成を依頼するのは、なかなかの緊張感だった。しかし、ドラム・レコーディングを完璧に再現しているBFD3だからこそ、ドラムを知り尽くした方にお願いしたかったのだ。


MI : ドラムやドラムレコーディングに精通している鹿間さんに、(ソフト音源のプリセット作成という)このようなお願いをしていいものかどうか、当初非常に悩んだのですが、私たちも自信をもってオススメしている製品ですので、よりアコースティックドラムを熟知した方にサウンドを作って頂きたいと思い、お願いをさせて頂きました。

最初にこのお話を頂いたとき「こんなアナログ人間の自分にどうしてそんな依頼を?」と驚きました。周囲にも「打ち込みドラムなんか大っ嫌い」って言いまくっているほうですからね(笑)。ただ、お話をちゃんと聞いたら面白そうだなとも思いましたね。

MI : 私たちもBFD3のクオリティには自信を持っていますので、厳しく判断してくださる方が良かったのです。

それもお引き受けした理由の1つですね。「ダメな部分はダメと言っていい」と事前にお聞きしたので。もともと「江戸前」という名前も、頑固な職人をイメージして「自分もそうありたい」と願って付けたものなので、ダメなものをイイとは言えないんです。それでも良いのであれば、お受けしましょうという事でしたよね。

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MI : BFD3を約2週間触って頂いたのですが、第一印象はいかがだったでしょうか?

第一印象はですね「むずかしい~!」です(笑)。こういったソフトを普段触ることがあまりないし、普段使っているProToolsもレコーダーとして最低限の機能しか使っていないので、最初の一週間はマニュアルとの戦いでしたね(笑)

MI : 各マイクの「カブリ」や「共振」など、ドラムにまつわるおなじみの単語もあるので、その辺のご理解は早かったのではないでしょうか?

そうですね。単語として理解しているというよりは、ドラムレコーディングの重要要素は理解しているつもりなので、パラメータの理解は難なくできました。ただソフトの動かし方が分からなかっただけというか。

MI : そういう意味では、無茶ブリをしてしまってすみませんでした…。サウンドについての印象もお聞きしたいと思います。BFD3の収録ライブラリのサウンドを聞いて、いかがでしたか?

今までこういった音源もののドラムを聞いてみて、もっとも不満というか、評価できなかった部分がありました。クリエイターの人がミックスしやすいようにするためなのか、ドラムの最もオイシイ濃密なローエンドをカットしていたり、鳴りを生かしきれていない録り方をしていたりという部分ですね。その点BFD3は、録ったままの音をちゃんとそのまま生かしていますね。ここは素直に関心しました。

MI : 皮もの、金物類ともに印象は良かったですか?

はい。キックやスネアには複数(3本)のマイクが用意されているし、ちゃんと良いところを狙って録られているなと思います。もちろん全てのマイクを使う必要はなくて、使いたいマイクのフェーダーだけ上げればいいわけですからね。

MI : アンビエントマイクに関してはいかがでしょう。特にレコーディングスタジオによって一番変化する部分で、好みもあるかと思います。BFD3では様々な場所にセットされた8種類のアンビエントマイクを用意しています。

いい鳴りのスタジオでレコーディングされているなという印象ですね。ちょっと8種類というのは多すぎる気はしますけど(笑)もしもドラムレコーディングにあまり詳しくない人がBFD3を使って音作りをするなら、まずは全てのアンビエントフェーダーを1個1個聞いてみて、好みの傾向のものを1つか2つ選んで(それ以外のフェーダーをミュートして)から音作りしてみる事をお勧めしますね。

それから試してみて面白かったのは、特定のアンビエントマイクに任意のピースを「拾わせない」という設定ができるところ!トップマイクにキックを拾わせない、とかですね。これは実際のレコーディングでは絶対に無理ですからね!

 

ドラムが発する本当の「太さ」

MI : BFD3では、新たに「タム・レゾナンス」という機能が追加された上に、マイク同士の「カブリ」もより自然なサウンドになるよう強化されましたが、これらはアコースティック・ドラムのレコーディングでは「当たり前のこと」であると思います。サウンドをチェックしてみて、どう感じられましたか?

ドラムをリアルに再現したいのであれば、絶対に必要な機能ですね。ドラムキットの共振はスネアやキックだけでなく、タムも重要です。

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MI : タムが共振することによって、もっともサウンドに違いが出てくるのはどの部分でしょう?

立体感やドラムキットの一体感などももちろんあるのですが、オケに入ったときのヌケの部分がもっとも違うでしょう。キックを踏んだときにタムが「ウオーン・ウオーン」と共振しますよね?キックの音というのはキックだけでできている訳ではなく、フロアタムやスネア、これらが共振した音が「一緒に」なるからこそドラムサウンドになるんですね。

実際のドラムレコーディングでも、タムのマイクにゲートをかけたり波形で切ったりしてこの共振やリリースをカットしちゃう人って結構いるんですよ。これはドラム単体で聞いた時は、非常に分離もよくて奇麗に聞こえるんです。でも、オケに入った途端に「ドラムがいなくなってしまう」んですよ。ギターやベースが入ってきたときにこの濁り(共振)成分こそが重要になってくるんですね。ドラムが発する本当の太さはここにあるからです。つまりここが「存在感という意味のヌケ」だと思っています。FXPansionのBFD3制作チームの人たちは、この重要性に気がついているのだなと嬉しくなりました。

ブリーディング(マイク同士のカブリ)も非常によくできています。例えばスネアのマイクにカブるキックの音というのは、キックの音ヌケのために必要な要素なんですね。もっとも良かったのは、タムを叩いたときにスネアのスナッピーが「ジャリッ」と漏れてくること。タムを叩いたときにスナッピーが一緒に響く音こそが「タムの音」なんです。

 


BFD3 Presets

BFD3のみを使用したプリセット作成

MI : 今回、9個のBFD3プリセットを作成していただきました。プリセットというのは、ドラムキットの選定、それぞれのマイクのバランスであるミキサー設定、そしてエフェクトの設定を複合したものです。全てBFD3の内部ミキサー、内部エフェクトのみを使用して作っていただきました。

自分が録った音でないしっかり録られたものをミックスするという経験が新鮮でしたが、元の素材が良かったので結構楽しめました。コンプやEQを多用しないとキツい(好みの音に仕上がらない)かなぁと思っていたのですが、実はもっとも活用したのがEnv Shaper(編注:素材のアタックやリリースをコントロールするエフェクト)でした。自分でレコーディングするならこういった部分はチューニングで行うものですが、このエフェクトのおかげである程度はその調整もできましたね。

作成していただいたプリセットをチェックしてみると、いくつかのプリセットでBFD3特有の「リンク機能」が活用されている。このリンク機能は、例えばスネアとハンドクラップを同じタイミングで鳴らす、スプラッシュとクラッシュシンバルを重ねて同時に叩くキットを作るときなどに利用する機能だ。

ところが鹿間氏のプリセットでは、キックを2つ、あるいはスネアを2つをリンクさせて同時にならすプリセットとなっている。これらについて鹿間氏は、

「いくつかのキックを順番に試してみて、キックの中(のマイク)の音は良いんだけど、外の音がちょっと不満だとか、あるいは逆のパターンがあったりしました。同様にスネアでも『いい具合に枯れたスネア』がないかなぁと探してみたのですが、好みのものがなかった。その時にこのリンク機能を発見して、これを使って新しいパーツを『作ってやろう』と思ったのです。2つのパーツでお互いに得意なところを生かしたサウンド作りといった感じですね」


 

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EDM Country V1

枯れたカントリーや、60年代風の雰囲気に似合うプリセットです。特徴としてはスネアが2台同時に鳴るようにしていて、Ludwigのスネアはトップのマイクだけ、TAMAのスネアはほぼそのままの状態で使用しているところ。TAMAのスネアだけでは足りなかったボディー感、奇麗な倍音の伸び方をLudwigで補っている感じです。どちらも金属製のスネアで派手な音がするものですが、あえてウッドのようなフィールになるように処理しています。

EDM Country V1プリセット・ダウンロード

 

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EDM Country V2

V1とV2の違いはスネアの違いだけです。V2のほうがスネアの重心が低くなるような調整をしています。V1、V2ともにキックは同じものですが、これも2つのキックを重ねて作っています。スネアよりも目的が明確で、DWはキックの中のマイクだけ、MapleWorksは外のマイクだけをブレンドして作りました。実際のレコーディングなら1つのキックを綿密にチューニングして目的の音を作るのですが、今回はソフトウェアならではの利点を使って、頭の中のシミュレーションを形にしているという感じですね。

EDM RV プリセット・ダウンロード

 

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EDM ToreJ

カーディガンズのようなサウンドを狙ったもので、(プロデューサーの)トーレ・ヨハンソンから名前を拝借したプリセットです。ガレージでのレコーディングのようなレンジ感の狭さが特徴です。もっとも、カーディガンズのレコードで聞けるようなサウンドはもっと「振り切った」ものになっていますが、さすがにそこまで振り切ってしまうのは使いづらいかなと思ったので、ほどほどに定位や位相がデタラメな雰囲気にしあげています。

このプリセットが生かされそうなシーンとしては、ヘタウマなプレイがいいでしょう。スネアのマイクもトップのみ、ドラムセットから離れた場所のアンビエントマイクをメインで使用しています。パートのいくつかではフィルターを使ってハイファイさを消していて、マスターチャンネルのリミッターで強烈に潰し、やはりここでもEnv Shaperでアタック感をコントロールしているところをチェックしてみて下さい。

もしかしたらBFD3の開発者から「最高の環境でレコーディングしてきた素材なんだから、そんな音作らないでくれよ!」なんて怒られるかもしれませんが(笑)、ここまで広い音作りはできるぞ、という意味を込めて作ってみました。

EDM ToreJ プリセット・ダウンロード

 


プロフィール

20150217_fxpansion_user_edomae_shikama-san鹿間朋之

江戸前レコーディングス代表
(サウンドプロデューサー、ベーシスト、エンジニア)

なんといってもミュージシャン、演奏する立場を尊重する「ミュージシャン型エンジニア」。
「ドラム原理主義」を掲げ、専門誌の付録やドラムメーカーのテストレコーディングも手掛けるなど業界の信頼も厚い。

また、日本の伝統・感性に美を見いだし、民謡や純邦楽のレコーディングも行う。リアリティの有る音作りが信条。

ソニーミュージック信濃町スタジオにてキャリアをスタート。 2005年より脇阪忠明、五十嵐公太(ex. JUDY AND MARY)らとEDo-REPORTにて活動(ベース•プロデュース)。

ベーシストとしては2009年より『chemical reactional session』を主宰。ロック~ジャズ~クラシックまでの幅広いジャンルの演奏家のセッションをコーディネート。 観客参加型巨大打楽器イベントユニット、ドライング・ハイ!のベーシスト。

【過去の共演およびエンジニアリング参加作品】
  • スティーブエトウ
  • デーモン閣下
  • 大槻ケンヂ
  • m.c.A・T
  • 足立祐二(DEAD END)
  • 水樹奈々
  • atomic poodle
  • 山木秀夫(gym)
  • AAA
  • cyntia…e.t.c.

【サウンドプロデュース作品】
  • 小松原沙織
  • 琵琶デュオ…他多数

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