Earthworks User Stories
2015.10.05
原音を忠実に捉えるEarthworksハイ・ディフィニション・マイクがもたらしたモダン・マイキング・テクニックとは?2012年7月27日おそらくは日本初と思われる実際にレコーディングしながらのセミナー、わずか15名のためのプレミアムなセミナー、いよいよコトリンゴさんが登場してのピアノ・セクション収録です。
間瀬:録音経験はないとしてもピアノを弾く、聴くなど、ピアノの音を聴いたことはあると思います。ピアノはおそらく、楽器の中でレンジが最も広く、しかも1本の鍵盤に対し、3本の弦を使っていることもあり、倍音も非常に多く、更に弱音から音圧が高い音までダイナミクスが非常に大きな楽器です。またペダルなどのノイズ成分も多い楽器です。本来、あのような大きなサイズである理由はレコーディングやSRを想定したのでは無く、楽器単体で大きな音を出すためです。反射板があることも同様の理由ですね。本来、大きな音を出す楽器であるので、それをいかに綺麗に、上手に録るかがエンジニアにとっての大きな課題です。Earthworksを使い始まる前は僕も一般的なNeumnanU87やAKG414やB&Kなどを使いわけ、使用マイク数を加えてみたり、マイクのポジションを変えるなど試行錯誤したのですが、中々、納得が行く音が録れずにいました。「中域の押しはあるけど、上と下がイマイチだな」とか「曲によって使うレンジが決まっていてそのレンジ合わせた対応」だったり、考えることが多い楽器なんですね。
間瀬:PM40を使ったときに、驚いたことは、とりあえず、セッティングするだけで、良い音が録れる。先ほどみていただいたとおり、弦の近くにセッティングされています。そこには独自技術*があるそうですが、一般的なマイクだと無指向性、単一指向性のどちらであっても近接効果で低域が持ち上がってくるのですが、しかも、パンを振り切り(LRに振り切った状態)にしても音像が拡散せず、存在感がちゃんとあります。教授はご本人の好みでもう少しセンターよりですが、今日は完全に振り切りです。それと教授のツアー の時に感じたことはセッティングが楽で再現性の高さが非常に助かりました。ピアノにセットするだけで、あとはPAシステムを会場に合わせてチューニングするだけで、安定してバランスの良いピアノ・サウンドが得られました。
*ランダム・インシデンス・オムニ: ピアノ内部のあらゆる方向からのサウンドを正確に収音可能な無指向性を持たせる技術。
実際に聴いていただきましょう。今日はPM40Tに加えてQTC40がアンビエンスとしてセットされています。
オン過ぎず、また、ポップスにも使える音です。簡単なセッティングでマルチに録れるマイクです。今日の曲の感じだともう少しオフ気味の音も欲しかったので、ほんのわずかですが、QTC40の音も混ぜています。
PM40Tをセット中の間瀬氏とコトリンゴ氏。
司会:これは昨日、リハにお邪魔した際にたまたま聞いたのですが、コトリンゴさん、先日、別のレコーディングでピアノの音をお使いになられたそうで、その時の印象をお聞かせください。
コトリンゴ:その時はバンドの時で、ピアノと歌だけの時はピアノの音がすごく気になるのですけど、バンドのピアノの時はそれほど、ピアノの音は気にならないんですけど、その時は「ガツッと弾いた時には、ちゃんとガツッとなっているのに、ここらへん(高音域を軽くプレイ)何か、いいフレーズを弾いたときにはふんわり、優しい音なんだけど丸すぎず、とんがりすぎず、すごく良く録れていたので、エンジニアさんに聞いたら、PM40を使っていたのです。
間瀬:聞いたままの良い音ですよね。後で聞いていただくと分かりますが、非常にカブりが少ないです。ピアノ・マイクにはヴォーカルの音はほとんど入っていません。
レコーディングでも卓越したパフォーマンスのハンドヘル・マイクSR40V
間瀬:コトリンゴさんには今日、始めてSR40Vを使いますけど、素直で非常に合っていると思います。強弱が忠実に再現されているようです、あと、距離感とかは歌い手さんからしたらどうでしょうね。
コトリンゴ:さっき離れ気味に歌っていたんですけど、それでもあまり、気にならなかったです。
間瀬:そうですよね。
コトリンゴ:私はよく、マイクにもっと近づいて歌ってください。と言われるのですが、言われなかったですね。
間瀬:僕もさっき言おうと思っていたのですけど・・・映像を見た特に無茶苦茶、離れていたので・・・
でもこちら(コントロール・ルーム)で聴いた印象ではちゃんと音が前に来ているので、問題ありません。(この収音能力は)歌い手さん、特に弾き語りをする人には良いですね。だって、ピアノプレイするときはプレイする音域に合わせて体が動くのに、歌のためにマイクの前から動かないよう注意しなかればならないのはやりにくいですよね。
それとPM40はカブりが非常に少ないです。これは、後のダビング、ミックスを考慮すると非常に重要です。
司会:最後になりますが、いよいよ、バンド・レコーディングです。始めていただきましょう。今日、レコーディングする曲はライブで人気の「minoru」です。今日のレコーディングはニューアルバムに収録される予定です。
レコーディング終了後、ベースの村田シゲ氏から、Earthworksマイクについてコメントをいただきました。
村田シゲ氏:尋常でないクリアーさですね。普通はモニターで聴く音と録られる音は実際には違うという認識なのですが、コレぐらい再現力があると考え方が変わるものだと感じました。
セミナーでは言及しませんでしたが、ベースについては今回ラインを使用せずGlockenklangのSoul ヘッドにquatro‘4x10”SPキャビネットをSR30にて収音しています。
間瀬:今回はオール・Earthworksでのレコーディングとなったのですけど、今日、あらためて思ったことが「原音を忠実に録る」という一貫した製品哲学のもとに開発されているため、非常に混ざりが良いですね。例えばピアノに使っているPM40とQTC40の音を足しても違和感が無いんです。これが他のマイクだと違和感があって、満足出来ないことが多いです。Earthworksだと破綻が無く、綺麗にさえ録れていれば、(音作りの)選択肢が広がって良いですね。それとEarthworksを使用する場合には、HAにも、良いものを使いたいです。これも重要なポイントです。
セミナー当日のうちに、リズム録りからコーラス・パートなどのダビングまで1曲のレコーディングが完了。セミナーをやりながらレコーディングという特殊環境下ながら、エンジニア、アーチスト、Earthworksマイクの卓越したパフォーマンスにより、素晴らしい作品が誕生しました。その作品はコトリンゴ with 村田シゲ & 神谷洵平の次回アルバムに収録される予定とのこと。リリースをお楽しみにしてください。
セミナーの最後に間瀬氏が語ったEarthworksマイクについてコメントにモダン・マイキングの重要なポイントがあります。
間瀬:Earthworksマイクは音を作るためのマイクでは無く、素直にその音を捉えるマイクです。僕もEarthworksマイクと出会って、アプローチ、マイクに対する考え方が変わりました。
技術の進歩とともに高解像度化、高音質化が進む、現代のレコーディング、ライブサウンド。その大きな器に必要なマイクはアーチストの奏でるパフォーマンス、楽器の音色、その空間に存在する音を忠実に捉えるEarthworksハイ・ディフィニション・マイクに他なりません。Earthworksによるモダン・マイキング、是非、体感ください。
ゲスト・バンド:コトリンゴ with 村田シゲ & 神谷洵平
2011年春に卓越したピアノ演奏と柔らかな歌声で浮遊感に満ちたポップ・ワールドを描きだす女性シンガー・ソングライターとして各方面から注目を浴びているコトリンゴを中心にベースに村田シゲ(□□□、Cubismo Grafico Five、Circle Darko)、ドラムに神谷洵平(赤い靴)を迎え、スリーピースバンド編成でライブ活動を開始。2012年3月にはスリーピースバンドで録音したミニアルバム『La mèmoire de mon bandwagon』を発売。Panasonic VIERA - Experience the Smart VIERA Worldのプロモーション映像テーマソング「Today is yours」の他、それまでのライブで温めてきた4曲を収録。ますます注目度が高まっている。
PM40T: ツーリング・ピアノ・マイク・システム
DrumKit: DK50R
SR40V
SR20
SR30
SR40
QTC50
ハイ・ディフィニション・マイキング・セミナー Part 1:
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日時:2012/7/27 (金)
会場:ハートビート・レコーディング・スタジオ(web)
講師:間瀬 哲史 氏(セカンドドリップ)
ゲスト・バンド:コトリンゴ with 村田シゲ & 神谷洵平
主催:(株)メディア・インテグレーション MI事業部
協力:commmons、ハートビート・レコーディング・スタジオ、(株)バラッド、 (株)黒澤楽器店