土岐 彩香 賞
審査員コメント
2020.08.25
土岐 彩香 賞
受賞者:米津亮汰 様
選出コメント
正直、もっとバランスの良い整ったミックスは他にもあったので実は、選ぶのをかなり迷いました。avidilok2020さんの作品が1位に近いとも思いましたが、すでにグレゴリ・ジェルメンさんの方で入賞するとのことでしたので、あえて今回は米津亮汰さんによる作品の楽器のアンサンブルがすごく好みだったので選ばせていただきました。
特にサビで、ちゃんと各楽器のグルーヴが繋がるミックスになっていると思います。この辺りの感覚は本当に言葉にしづらいのですが、そこが聴けている=提案出来ているということは非常に良いことだと思います。(この感覚を磨くことより、他の技術を習得することの方が簡単ですので。)ただ各セクションに対するアプローチ、特に低音と歌に関してはもっと詰めれると思います。もう少しドラムと歌に芯があればいいな、と思いました。伸び代を見越しての期待を込めた1位です。
またavidilok2020さんの作品は、全体的にバランスがよく曲のダイナミクスも失われていない。必要以上に派手にしないところもとても好感が持てました。次回のコンテストが楽しみです。
本コンテストの感想
まずは皆さまミックスお疲れ様でした。お送りいただきありがとうございます。同じ録り音の素材で何通りものミックスがあるなんて本来現場ではなかなかない状況ですので、非常に興味深く聴かせていただきました。スネアの音色にはやはりみんな好みが出ていて面白かったです。
限られたプラグインでのミックスとはいえ頭に思い描いたものを形にしていく作業ですので、これだけあれば全く問題なかったんじゃないでしょうか。むしろいつも使ってなかったプラグインと向き合ってみた結果、新たな手法を見出した方も少なくないのでは。
ここからは個人の見解ですが“自分の好み=いつものパターン“になっていないか、ぜひ今後ミックスする際にちょっと考えてみて下さい。その”型“が曲に合っているとは限りませんので、毎回ミックスする曲に向き合ってどうしたら良くなるかイメージする時間を沢山取って下さい。エレキのバッキングといえばこう、キックといえばこう、なんて決まりはないですもんね。故に沢山の”型のパターン“を手に入れるのもミックス上達の鍵です。
さて、今回1位を“基本がちゃんと出来ているミックス”(大事)、第2位を“基本はまだまだだがセンスが光るミックス”(大事)とさせていただきました。選考するにあたりまずはバランスが良いか、音色はどうか、曲のダイナミクスは生かされているか、曲のイメージにあっているか、という基準で聴かせていただきました。4曲から最後絞るのが非常に難しかったです。
自分のミックスと今回の入賞作品を聴き比べて「なるほど!」となるも良し、「自分の作品の方が良い!」となるも良しだと思っています。なぜならそれぞれいいところがあったり、いいとこ取りってなかなか成立しなかったりしますから。ただ聴き比べる機会なんて本当にないので、これはとても良い機会だったと思います。一つの曲のもつ、色々な“良さ”に気づけたのではないでしょうか。
これからもお互い、音楽に誠実に向き合って沢山の“良さ”を残していきましょう。
Biography審査員情報
土岐 彩香
Recording/Mixing engineer
青葉台スタジオからエンジニアのキャリアをスタートし、現在はフリーランスで活動中。
打ち込みと生音の合わさるダンスミュージックを得意とする。ついベースとキックを大きくしがちな、グルーブ好きエンジニア。
長年にわたるfocalユーザーです。
Twitter:https://twitter.com/lemmingdisease