2025.02.14
イベント冒頭、Apogee社 CEOのベティ・ベネット氏と、その夫で伝説的エンジニア/音楽プロデューサーのボブ・クリアマウンテン氏が登壇。ロサンゼルス近郊で発生した大規模な山火事により、本社は幸い火災の影響はなかったものの、二人の自宅とボブ氏のスタジオが全焼してしまいました。
ボブ氏のインスタグラムには全焼した家の残骸が投稿されており、火災の脅威が伝わります。
「自分たちよりも大変な思いをしている人がまだ多くいる、なので前を向いて次に進むためにやるべきことをやろう。様々なかけがえのない思い出は機材や場所ではなく、使用してくれるアーティストやそれを楽しんで聞いてくれるユーザーの中にある。家は無くなってしまい、次に何をするか考えた際にみんなが集まって楽しめるパーティーをしよう。そして地域復興のために何ができるか、微力ながらApogeeは全力で支援を行います。まずできることから1つずつ始めていこう。それが私たちのミッションなんだ。」
というボブ氏の発言に、会場では自然と拍手が湧き起こりました。
地域や社会貢献との関わりが深いことは以前から知っていましたが、自身も被害を受ける中で地域の笑顔のための活動を最優先するApogeeのポリシーには、我々も勉強することが多いと感じます。
2人の挨拶が終わると雰囲気は一転し、40周年のイベントプログラムがスタートです。
Dolby社のスタッフが登壇し、Dolby Atmos の世界的成長の様子や関わる企業の紹介を行いました。
日本では販売されていないですが、Dolby Atmos対応の車も増えており、イマーシブ環境でのリスニングのハードルは年々下がっていることが伺えます。日本の自動車メーカーにも早くリリースしてもらいたいですね!
また、AudibleのDolby Atmos対応も予定しているとのことで、イマーシブのダイアログコンテンツがどういった体験を産むのか、、、早く試してみたいです。
その後IKmultimediaとEventideのスタッフが、今回のイベント展示協賛をしているとのことで登壇。Apogee社の裏にあるスタジオでは、昨年完成したGenelecスピーカーによるDolbyAtmosシステムのとなりの部屋に、コンパクトなIK multimedia MTMシリーズで構成されたDolbyAtmosスタジオも完成していました。
そしてボブ氏が再度登壇し、現在の彼自身のワークフローシステムを紹介。
2024年4月に来日した際に紹介されたシステムは、Symphony I/O MkIIとカスタムされたSSLコンソール、そしてモニターコントローラーとしてGinjerAudioというものでしたが、「イマーシブはまだまだ発展段階で、今日お伝えした内容が明日には変わるかもしれない」と当時彼自身が発言した通り、大きく変更されたものでした。
新しくApogeeからリリースされたSymphony Studioを主軸に構成されており、DAWのマルチトラックはDante Virtual SoundCardを介してSSL System-Tにインプットされ、コンソールで処理された音源が再びDanteでPCに戻る流れです。
Danteは通常のオーディオインターフェースには出力できないのですが、Audiomovers Omnibus 3を使用して、Symphony Studioにアサインしているようです。Symphony Studioのアウトプットにはスピーカー補正用のEQ、ディレイ、ベースマネージメントが搭載されており、これによってシステムを簡易化することが実現したとのこと。
最新のSymphony Studioを使うのはもちろんですが、先日のISEで発表された128ch対応のDante Virtual SoundCardを早速取り入れているフットワークの軽さも注目のポイントです。
今回イベントを実施したスペースはApogee本社にある「Apogee Studio」にて行われました。会場はイマーシブのイベントにも対応するため、7.1.4chのライブスピーカーが常設されています。セミナー内ではロキシーミュージックのアバロンなど、ボブ氏が手がけたDolbyAtomos作品をADMファイルから視聴することができました。ボブ氏のこだわりとして、ボーカルはセンタースピーカーから鳴らすことが徹底されていました。
40周年という節目で、創業当時のApogeeのロゴが各所に散りばめられており、ノベルティーの帽子をなんとか入手できないか…と声をかける間もなくイベントは終了。NAMM Show会期中にブースにて再チャレンジしてみます!
メディア・インテグレーションは、この度のロサンゼルス山火事被害に被災されたミュージシャン、エンジニア、スタジオなど、音楽 / 映像制作関係者を支援いたします。ぜひ皆様も支援の輪にご参加ください。
LA支援プロモーション・募金ページはこちら >>