2025.05.01
ラウドネス戦争は終わったと言われますが、楽曲をできるだけラウドに聴かせたいと願うアーティストは少なくありません。マスタリングの最終段階でリミッターを使用するとき、それまで丁寧に築き上げたミックスバランスや透明感が失われてしまうことはありませんか?
今回は、ていねいに積み上げたミックスを崩さず、音楽的に音圧を上げてくれる Sonnox Oxford Limiter をご紹介します。
Sonnox Oxford Limiterは、リミッターとしての機能を果たしつつも、音の透明感や繊細なディテールを損なわないことで高い評価を受けています。さらに、一般的なリミッターとは異なり「ATTACK」「RELEASE」「SOFT KNEE」といった、コンプレッサーに近い柔軟なパラメーターを搭載している点もポイントで、ジャンルや音源に応じて、より精密で音楽的なコントロールを可能にしています。
たとえば、ビート感が重要なヒップホップやEDMなどでは、速めのアタック設定が非常に効果的です。各パートのアタック感や定位を保ちながら音圧をしっかりと引き上げることで、ミックスの躍動感を損なうことなく仕上げることができます。一方でクラシックやジャズなど、繊細なダイナミクスが求められるジャンルでは、遅めのアタックやリリース設定が有効です。
プリセットも充実しており、さまざまな音楽ジャンルで簡単に、ミックスへ自然な広がりと華やかさを加えることができるでしょう。
Sonnox Oxford Limiterがほかのリミッターと明確に異なるのは、ENHANCE(エンハンス)フェーダーの存在です。ENHANCEはトラックに自然なトランジェントを加えることで、音圧を上げながらも中低域を過度に圧縮せずに、ヘッドルームに余裕を持たせる役割を果たします。
その結果、ミックス全体に明るさと躍動感が加わり、より豊かで洗練されたサウンドへと導いてくれます。アコースティック楽器はもちろん、ハードロック、メタル、EDMにおいてもENHANCEフェーダーは非常に有効で、厚みのあるサウンドを保ちながら、各楽器の存在感をしっかりと際立たせることができます。
また、このENHANCE機能だけを目的として使うことも可能です。たとえば、INPUTゲインを上げずにENHANCEフェーダーだけを上げてみると、まるでエンハンサープラグインのように活躍してくれます。音圧を上げずに音の明瞭さや立体感、存在感を加えたいときに非常に有効です。
リミッターにおいて最も重要なことは、「クリッピングを防ぐ」ことです。ここでは、Sonnox Oxford Limiter に搭載されているクリッピング回避機能について紹介します。
通常はAUTO GAINを常時ONにして使用するのが基本的な使い方ですが、あえて軽い歪みやディストーション感を演出したい場合には、SAFE MODE と AUTO COMP のみをONにすることで、クリッピングを回避しながら狙った音色のキャラクターを維持することが可能です。
Sonnox Oxford Limiter は、単なる音圧アップツールではありません。ミックスの持つ繊細なニュアンスやバランスを守りながら、リミッターとしてだけでなく、音作りの一部としても柔軟に活用できるのが大きな魅力。現代のラウドネス要求に応える、非常に高性能なリミッターです。
音圧を追求しつつも「透明感」や「音楽性」を失いたくない方におすすです。
Oxford Limiter