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ボーカルマイクの被りを排除し、ライブサウンド全体を 底上げ

~ MY FIRST STORY / LEWITT MTP W950導入事例 ~

2023.08.03

現在の音楽シーンを牽引するMY FIRST STORY、ヨルシカ 、Fear, and Loathing in Las Vegas 、Tani Yuukiを始めとする多ジャンルのアーティスト・プロダクションから支持を受けるサウンドエンジニアの佐々木 優氏。
同氏は、サウンドエンジニアの中でもWaves DiGiGridなどの最新のテクノロジーを積極的に導入し、最先端の技術を巧みに駆使することで高い評価を得ているエンジニアの一人です。

そんな佐々木氏に、同じく最先端の技術を用いて数々の革新的なマイクロフォンをリリースしているオーストリアのLEWITT社が送る最新のハンドヘルド・コンデンサーマイクロフォンMTP W950を使っていただきました。

MTP W950は「スタジオクオリティーのサウンドをステージ」で実現するために数々の厳しい検証を突破し、LEWITT社からリリースされました。MY FIRST STORYのツアーでこのMTP W950を導入した株式会社ライブデートのサウンドエンジニア佐々木 優氏に製品のインプレッション、現場での活用方法についてお話をお伺いしました。
加えて、MY FIRST STORYボーカルのHiro氏、また、コンサート現場でモニターエンジニアを務められた株式会社TWOMIX前崎 元気氏にもお話をお伺いすることができました。


佐々木 優
PA/SoundEngineer

20歳でPA会社に入社。その後様々なジャンル、分野を経験。多くの経験により作り出されたオリジナリティサウンドは多くのアーティスト・プロダクションから支持を受ける。2013年にフリーランスへ転向。その後2018年設立の株式会社ライブデートを立ち上げに参加。プラグインなどデジタルへの知識からWAVES DiGiGridなどを積極的に導入し、最先端の音作りをライブで行っている。 現在はMY FIRST STORY,ヨルシカ ,Fear,and Loathing in Las Vegas ,Tani Yuukiを始めとする多ジャンルのアーティストを担当。


MTP W950の製品概要
MTP W950 – a live sound revolution

サウンドエンジニア:佐々木 優氏コメント

MI

LEWITTのハンドヘルド・マイクロホン MTP W950ですが、佐々木さんはワイヤレスでヘッドのみをお使いと聞きました。

佐々木 優
(以下、佐々木)

知り合いのPAエンジニアでフリーランスの金子さんという方とライブハウスで仕事をした時に、「最近、マイク買ったりしてる?」みたいな話になり、金子さん「Lewittのボーカルマイクは結構良いよね」という話になり、別アーティストで既出のマイクは使っていたのですがその話を元に最新の製品で見つけたのがLewitt MTP W950だったんです。バンド物のPAの場合、ボーカルとドラムが大体の立ち位置で同じ軸上のセンターになる事が多く、ボーカルマイクにドラムの音が被ってくることに対しての処理が現場での戦いなんです。「声が細いボーカリストだと、ボーカルマイクでバンド全体の音が入るくらいゲインを上げてしまうことになるよね」みたいな笑い話もしながら(笑)。MTP W950を物は試しでデモ機を使ってみたら、「マジ!? そんなに変わりますか?」みたいな感じで、本当に良い意味で「どぎつい」製品だったんです。怖いぐらい被りがなく、ボーカルだけを狙って集音できたんです。丁度、MY FIRST STORYの47都道府県ツアーの本番が始まる前の日に、MTP W950を手配できたんですが、モニターエンジニアさんは「いや~、ツアーリハーサルも終わってるタイミングで本番初日にマイクを変えるのはちょっとな。。」という風に心配されてたんですが「ワンチャンやってみない?」と提案してみました。

初日の会場はZepp Haneda (Tokyo) だったんですが、そこで、ボーカルのHiroにMTP W950を紹介してみたんです。MY FIRST STORYでは、これまで、他のメーカーのマイクを色々と使ってきてましたが、ドラムのKid’zは非常にパワフル且つ繊細なプレイをするドラマーで、音量に関しては別格なんです。僕としては、ドラムの出音、音作りがしっかりできるのは非常にありがたいのですが、嬉しい反面ボーカルマイクへの被りも悩みどころではあったのです。本番前のリハーサルでMTP W950を使ってみたら、Hiroが「びっくりしたよ! なにこれ?」って言ってくれて。自分もモニターエンジニアも「やっぱり何これ!」ってなり、FOHの音作りも今までとは違った作り方が出来る様になったんです。それまでは、マイクの被りありきでそれを活かしつつ調整しつつボーカルだけ1個ポンと前に出す感じでやってたんですが、ボーカルに立てたMTP W950は完全にデッド。まるでボーカルだけレコーディングスタジオで歌ってるみたいなんです。Hiroも「なんでこんなの早く見つけなかったの!」とびっくりしていました(笑)。それまでは、Hiroも、他の音がボーカルマイクに被ってるのはわかってるので、マイクの方向を変えたりしてコントロールしていたと思うし、エンジニア側も場合によってはドラムの音量を調整してたんですが、MTP W950の導入でそういう必要があまりなくなりました。

ツアー初日のZepp Hanedaは、コロナの影響も緩和されてきたタイミングで、キャパシティーの2,925人パンパンに入ってたんです。個人的にも、それまでのコロナのうつうつとした環境から、久々に熱くなって、加えて音も良くなって「混ぜなきゃ! 混ぜなきゃっ!」って盛り上がりました(笑)。

MI

EQについてですが、処理の方向も影響を受けたりしましたか?

佐々木

今までは先ほど言った通り、被りとの戦いで声以外の被ってくる邪魔な部分をEQなどで削る方向でした。周波数特性のグラフを見ながら、ピークを切って声自体のフラットに近い状態に持っていくんですが、「削っては上げる~削っては上げる」を重ねる感じで(苦笑)、その処理にハマり込んでしまう手前のギリギリまでやってました。その上で、ボーカリスト自身の声のピークをWaves F6で処理をするのですが、MTP W950導入後は、今までのマイクの被りに対する処理とは全く違うやり方になったんです。MTP W950のピーク特性は、ちょっと面白いところにあって12k~14kHz付近が立ってくるので、そこは抑える処理をしていますが、それ以外は自然な感じにフェーダーワークができるようになりました。いつもはボーカルフェーダーは割と手放す事なく操作調整をしていたのですが、このマイクに変えた後は丸まる1曲フェーダーを放っておいたまま、会場内をぐるぐる歩き回ったりもできたんです(笑)。あと、本体に120Hzローカット・フィルターが付いてるので、ちょっと下の帯域が膨らんでる場合は、ローカット・フィルターを入れることもあります。指向性はスーパー・カーディオイドにしています。

MI

なるほど、Hiroさんが歌いやすくなるような状態に持っていくことができた訳ですね。

佐々木

そうです。さらに驚いたのが、Hiroが今回のツアーでのホール公演の際に会場の花道に移動した時ですが、背後にはメインのPAスピーカーあるので、その音がマイクに入ってくることになります。その場合ボーカルチャンネルを立ち位置と逆サイドへパンニングしてハウリングを起こさない様に逃げるんですが、以前は、80/100以上の位置まで振ってたんです。でもこれだと、明らかにボーカルの声が移動したなということがわかってしまうんですが、MTP W950では、30/100くらいの位置で、あからさまなパンで逃げ切らなくてもOKでした。本番中に出音の音量データを取ってみたんですが、ロックの現場なので平均で105~8dBAくらい。ピークだと110~5dBAくらいの最高音圧レベルなんですが、そんな中でも、ハウリングを起こさずOKだったんです。「そんなことある!?」と、もう笑っちゃうくらいびっくりしました(笑)。

MI

じゃあ、MTP W950の導入一つで、ライブの現場が色々変わった、ということなんですね。

佐々木

出したいものが出せるようになったので、ミックスが変わリました。ボーカルなしのリハ時で音が決まり「あ、今日なんかいい感じかも」と思っていても、ボーカル入ると、ボーカルマイクの被りのせいでバランスが崩れてしまっていました。もちろんそこから被りを含めて、改めて整えて着地点を目指すんですが、MTP W950の場合ならボーカルが入ってもほぼ変わらないんです。整えたバンドの音にボーカルを載せるだけで問題ないイメージ。以前は、ボーカルを載せると前に出すぎちゃうので浮いちゃう感じがしてたんですが、MTP W950は気持ち良く混ざるんです。ボーカルを載せても、綺麗に作った各楽器の音が濁る事なく変わらないのが素晴らしく、特にドラムが濁らないのが1番嬉しいです。一番音が変わったのはスネアかな。本当に卓で作ったEQカーブの見た目まんまの音で、パーンと前に出るようになりました。ロックバンドでスネアの音はかなり重要じゃないですか。ドラムのKid’zは、ピッチチューニング含め、自分で細かくキットの音作りをする人なので、以前のマイクの被りの影響についても把握してたんですが、MTP W950にマイクを変えて、すごく楽になったことを彼も気づいてたんです。毎回ライブ後にメンバーに渡す同時録音の音も良くなり、いい影響が出ています。 冗談混じりで言いますが、モニターエンジニアと「MTP W950のことを周りに教えたくないよね」みたいな話もしています(笑)。弊社のスタッフも、みんな興味を持っている製品です。

MI

ホール規模で活用いただいたお話をお伺いしましたが、ライブハウスでも試していただいたんですよね? キャパシティーが狭くなると、MTP W950を使うにあたって、何か変わるポイントありますか?

佐々木

郡山にHIPSHOT JAPANというライブハウスがあるんですけど、今年の4月にMY FIRST STORYの今回のツアーがあったのでそのままライブにMTP W950を持ち込んでみました。ライブハウスなので、ボーカリストとドラマーとの距離は、一番近づくと1mくらい。それでもやっぱりボーカルマイクへの被りで結構苦労するのが普通なんですが、MTP W950は全然オッケーでした。小規模ライブハウスでも、こんな音が出せるんだ、と驚きました。ドラムがそんなに大きくないバンドやジャンルだったら、MTP W950は、もっといろんな可能性が出てくると思います。

MI

今まで、現場での使い勝手の部分を中心にお伺いしてきましたが、音質面について話を持って行きたいのですが。レコーディングの現場ではボーカルにはコンデンサーマイクが使われる比重が大きいですが、ライブの現場でもコンデンサーマイクが使われることも増えてきたと聞いています。

佐々木

もちろん、コンデンサーマイクには艶やかな高域を中心としてダイナミックマイクでは出せない部分があるのはもちろんですが、「ロックで使いたい」、「大きな音でバーンってやりたい」という場合は、かなりの覚悟が必要ですよね。そんな前提の中でも、MTP W950には艶やかな高域があり、かつ、ハウリング対策にも優れてるんです。今別の全国ホールツアーアーティストでも使用してるんですが、そのボーカリストの声はウィスパーボイスが大事なポイントだったりするので、繊細な表現を押さえるのに細心の注意を払ってるんですが、ここでもMTP W950は活躍しています。従来は、「ゲインを上げて余分な帯域を切って~」の繰り返しを重ねて調整してたんですが、「切らなきゃハウるけど、切ると美味しい部分がなくなっちゃう」というジレンマとの戦いだったです。でも、MTP W950を導入して、そういった問題も解決して、メンバー本人も「部屋の中で歌ってるみたい」と言ってくれてます(笑)。被りの音がなくなり「もはや寂しい」って言ってました(笑)。それで、ステージにエアーマイクを立てることにして、それをシンガーのモニターに返すようにしたんです。勿論それなりな処理を施しつつボーカルの繊細なニュアンスを出していっているのですが、前回のツアーよりマージンが5dBくらい余裕が出て、だいぶ処理が楽になりました。本番中、平常時はボーカル処理をほっといても大丈夫なくらい安定した音作りができるようになったので、他の楽器のミックスを触れる余裕が大分増えました。以前は、ずっと曲頭から終わりまで追っかけてたんで、もう歌詞も全部覚えてるレベルだったんです。ずっと一緒に歌ってたんで、、、(笑)。

MI

なるほど。そういうお話を聞くと、確かに、他のエンジニアに教えたくないというのも分かる気がします(笑)。

佐々木

そうなんですよ。しかも、あの品質であの値段なので「もう買うっしょ!」みたいな感じです。


ここで、別の日に、モニターエンジニアの前崎元気氏にお話をお伺いできたので紹介します。

モニターエンジニア:前崎 元気氏コメント

前崎 元気
(以下、前崎)

MTP W950を使った第1印象は、Hiroが、単純にIEM Mixの中で「1人になった」と思ったんですよ。それは他の楽器の被りが無くなったからなんですが。でも、周りの音に包まれないと気持ちが乗らないんじゃないかと、心配な部分がありました。実際にMTP W950を使ってもらったら「1人になる」という印象は一緒だったんです。それで、モニターのオケを大きめに返して、リバーブも少し増やし、包み込む感じの音を作りました。その結果、Aメロ~サビの声を張った時も自然に聞こえるので、問題がないと言ってくれました。被りがない部分はすごく良い、という印象だったそうです。

MI

MTP W950導入後で、モニターのミックスのやり方に変化はありましたか?

前崎

それまでは、バンドの音からボーカルを立たせる音作りをやっていましたが、今はイーブンぐらいのバランスでやってます。

MI

佐々木さんからもお話しをお伺いしましたが、表の音(ハウスPA)も中の音(モニター)も結構やり方が変わったみたいですね。

前崎

そうですね。イヤモニでモニターすると、ボーカルブースで1人で歌ってる感じになるでしょうね。

佐々木 優 氏(右)と前崎 元気 氏(左)

モニターミキサーの前崎元気氏(左)、FOHミキサーの佐々木優氏(右)


MY FIRST STORY Hiro氏コメント

MI

本番直前のスタジオリハでマイクをMTP W950に変えていただきましたが、印象はいかがでしたか?

MY FIRST STORY Hiro 氏

MY FIRST STORY
Hiro

ダントツでレベルが違う印象でした! 以前からこのマイクの情報は頂いてたんですけど、好みもあるので、実際に使ってみないとわからないと思ってましたが、音の被りが全然なく自分の声がダイレクトに聞こえます。以前だと、マイクを通した自分の声のローやミドルの感じが聞こえない時もあったりして、パフォーマンス中にフェイクを入れる時など、自分の声を一瞬見失なってしまうこともあったりして、そういう時は正直気持ちよくなかったんです。

「ちょっとロー欲しいな」とか「ハイを上げて」と細かく調整してモニターの音作りに時間をかけてたし、当日の会場の音響や、自分が前日まで聞いていた音楽による耳の状態など、細かい部分からも影響を受けてたんですが、MTP W950に変えてからは、全部がクリアに聞こえて、逆に外れたら瞬間でわかるぐらいクリアで、歌ってて気持ちいいんですよね。僕の声の倍音成分も綺麗にキャッチしてくれてるし、 耳の鳴りがめちゃくちゃいいので、本当に歌いやすいんです。音が早くて綺麗なので、変にリバーブをかけたりとかすると逆に濁ってしまうので、そのままクリアで歌った方が歌いやすいです。本当に手放せないマイクだなと思いました。「みんなこれにすればいいのに」ぐらい思ってます(笑)。

MY FIRST STORY

Nob(Ba.) / Hiro(Vo.) / Teru(Gu.) / Kid′z(Dr.)(L→R) 2011 年夏、東京渋谷で結成。2012 年 4 月に 1st FULL AL「MY FIRST STORY」でデビュー以降、 確かな楽曲、ライブパフォーマンスが話題を呼び、全国の大型フェス出演や海外アーティストとの共演も数多く務め、 着実に実力を付けた。

2016 年 4th FULL AL「ANTITHESE」をリリース。 自身最高位であるオリコンウィークリー初登場 4 位を記録し、 そのアルバムを携え、日本全国 47 都道府県を回るツアー。 最終公演は日本武道館にて開催し、12,000 人を動員し SOLD OUT。

2017 年 "MMA" TOUR を開催。その最終公演として 12 月千葉 幕張メッセ 国際展示場 9 ~ 11 ホールにて開催し、 外国人奏者による全曲フルオーケストラコンサートで、18,000 人のオーディエンスは驚愕した。

2018 年、S・S・S TOUR として全国ライブハウスを回り、 大阪、福岡、仙台、名古屋にて初のホールツアー。 最終公演はこちらも初となる横浜アリーナ 2days 公演を行った。

2019 年、「MY FIRST STORY TOUR 2019」として、 ライブハウス・ホール編に加え、神戸ワールド記念ホール・さいたまスーパーアリーナにてアリーナツアーを開催。

2020 年、「MY FIRST STORY TOUR 2020」の開催が発表された。 今年もライブハウス・ホールに加え、 ファイナルシリーズとして初の東名阪 3 都市でのアリーナツアーを開催!

2021 年、 「STORYTELLER TOUR 2021」を開催。 8 月にリリースした 6th Full Album「V」はオリコンウィークリーチャート自身最高位となる 2 位を獲得。TOUR FINAL として LINE CUBE SHIBUYA 公演を実施し、 MY FIRST STORY が結成された渋谷にて、初の都内ホール公演が行われた。7 月からは「MY FISRT STORY TOUR 2021」を開催。 1 月からは東名阪でのショートツアー「We promise, 4 you once again Tour 2021」、さらに TOUR FINAL として 2022 年 2 月 10 日に 5 年ぶりとなる日本武道館公演を開催した。

2022 年、 MY FIRST STORY デビュー10周年を記念して、ファンのリクエストによるベストアルバム「X」を発売! そして MY FIRST STORY TOUR 2022 をライブハウスとホールで全国 22 公演を開催した。 12 月にはツアーファイナルと自身の企画ライブ「Giant Killing」を横浜アリーナにて 2days で開催。

そして 2023 年、 「12ヶ月連続楽曲リリース」と7年ぶりの日本全国47都道府県ツアー「MY FIRST STORY -THE TWO-」の開催が決定!

絶えず進化を遂げる孤高のロックバンドMY FIRST STORYの躍進を見逃すわけにはいかないだろう。

https://myfirststory.net/

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