2022.03.03
新しいサウンドを求める多数のエンジニアから意見をフィードバックし、Lewittが数年間に渡る研究・分析・開発を経て作り上げたフラッグシップモデル「LCT1040」。Lewittのテクノロジーを詰め込んだフレキシブルな機能はもちろん、ニュー・スタンダードとも言えるそのサウンドも大きな魅力です。
エンジニア グレゴリ・ジェルメン氏、そしてシンガーのナミヒラアユコ氏に実際にマイクを通して歌ってもらいながら、そのサウンドや先進的な機能について語っていただきました。
メディア・インテグレーション(以下、MI)
マイクの選ぶときの基準はありますか?
グレゴリ・ジェルメン 氏(以下、グレゴリ)
歌に関しては、本人の声とマイクの相性を考えて決めます。例えば声が明るい人だったら、マイクにはその逆の特性というか、暗めのマイクを選ぶことが多かったり、逆にパワフルで太い声であれば明るめのマイクを選んだりと、EQと同じようなイメージで逆のカーブを選ぶ事が多いです。明るい声に明るいマイクを合わせてしまうと、ブーストされてさらに明るくなっちゃうみたいなことも起こるので、声の特徴に合わせて組み合わせを考えます。ソフトに歌う人、声を張って歌う人など、歌い方によってもマイクがどこまで対応できるかというのが変わってくるので、そのあたりも意識しています。
あとは長年一緒にレコーディングをしている仲であれば、経験で選んでしまうことも多いです。逆に初めてレコーディングをする人であれば、マイクを3本ぐらい立てておいて一緒に録っておいて、どれがいいか試すという方法もよく使います。
MI
真空管マイクとFETマイクはどう使い分けていますか?
グレゴリ・ジェルメン 氏(以下、グレゴリ)
僕は完全に真空管派なので(笑)9割方真空管でいくことが多いですね。なぜ真空管を選ぶかというと、歌であればダイナミクスレンジが広いことが多くて。例えばAメロは静かに歌って、サビが思い切り広がるような曲で声に音量差が出ても、真空管がコンプレッサーのような働きをしてくれるんですね。入力のピークが上がったときに自然にサチュレーションがかかるような感じで音楽的な飽和感も出してくれるので、さまざまなシチュエーションに対応しやすいです。
高いレベルでご自身の歌をコントロールされているようなボーカリストの場合には、FETを選ぶ場合もあります。
MI
LCT1040の音を聞いて、率直な感想はいかがですか?
グレゴリ
革新的なマイクですね。ビンテージなどの伝統的な真空管マイクはちょっと音が暗くなるイメージがあって、もちろんそれがいい意味でマイクのキャラクターにもなっているんですが、LCT1040は真空管のいいところもしっかりと活かしつつ、暗くならない。理想的な真空管サウンドを持ったマイクという印象です。
歌ってもらいながらいろいろセッティングを試してみましたが、例えばスピード感のある曲はFETとTUBEと50:50くらいでブレンドした音がいいですね。ちょっとメローだったり、テンポ遅めであれば、フル・チューブでCLEARとかWARMを選ぶといい感じです。CLEAR 100%のTUBEサウンドと、FET:TUBEが50:50でキャラクターをDARKに設定した音が特に好きですね。
ナミヒラ
実際歌ってみて、真空管なのに明るい!っていう印象です。私の声は成分的に暗くなってしまうことがあるんですが、真空管なのに明るさや軽さを引き出してくれて、でも中音域、ミドルのところもちゃんとキャッチしてくれてる感じがあってすごい歌いやすいです。
歌いながらでもTUBEキャラクターの違いが分かりやすく、シンガー側としてもキャラクターの使い分けがしやすいと思います。「ちょっと変わったね」くらいの変化だと多分そういうことは難しいと思うんですが(笑)今の2つのセッティングもキャラクターがはっきり伝わってくるので「ちがうけどどっちもいいね」って感じなので好みに合わせて、細かいところまでこだわれると思います。
グレゴリ
リアルタイムでセッティングを変えながらその曲の雰囲気を探ることができるのも大きなメリットですね。普通のレコーディングだと一度マイクの設定を決めたらそのままで通すことが多いんですが、このマイクはその常識を完全に破壊することができます。普通だったらマイクやセッティングを変えようと思うと全部を入れ替えなくてはならなくて、そうするとすごい時間のロスにもなってしまうので。
ナミヒラ
その変化をこちら側で聞きながら、「変わってるな」って確認しながら歌えるから意思の疎通もしやすいですね。エンジニアとアーティストが「一緒に演っている」感じがする、すばらしいマイクです。
ナミヒラアユコ