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Focusrite ISA Two x 橋爪徹

2022.09.02

自宅で音声コンテンツを制作・配信する行為は、今ではすっかり特別なことではなくなりました。
声優やナレーターなど声で表現することを生業とする演者の方も、自分自身で機材を揃えて録音し、音を整えて、作品を公開・配信しています。コロナ禍でその流れは急激に加速、演者同志はもちろん、エンジニアも交えての技術交流は盛んに行われるようになりました。台詞やナレーション、ASMRからWEBラジオなど音声だけの制作物は言うに及ばず、動画配信やVTuberといった映像分野においても、音声クオリティは無視できない重要な要素の一つです。

私が宅録を始めた2000年代前半と違い、今は機材もツールも多様化し、その多くが一般の方でも買える値段になりました。それはもう天を仰ぎたくなるほどに恵まれた時代です。
一方で参入するクリエイターや演者が全世界にひしめき合い熾烈な競争が起こる中で、中身の面白さはもちろん、音質面のクオリティも求められる厳しい時代になっています。コロナ禍でこの傾向は、もはや決定的なものになったといえるでしょう。

しかし、実際に世に出ている音声コンテンツや映像内の音声はどうでしょうか。
部屋の反響が入って聞きにくいナレーション、ノイズ除去のプラグインをかけ過ぎて劣化した台詞、空調やマシンのノイズが気になるCM音声、重心が高く高域に癖のある音声のWEBラジオ、等々クオリティに課題を抱えた音声は珍しくありません。ここまであからさまではなくとも、聞く人が聞けば「あ、宅録だな」と分かってしまうような録り音は、作り手側にとって『どうすればプロのスタジオに近い音に出来るのだろう』と悩みの種になっています。私も去年くらいから宅録するナレーターの方々の相談を受けることがあり、『スタジオが制作会社を兼ねているので恥ずかしくない品質の音声を納品したい』、といったクオリティの高い音が必要になる具体的な背景を伺う機会がありました。エンジニアの経験はない、あくまで演者の方々が、時代の流れを受けて、あるいは自ら発起して、本業のエンジニアのような試行錯誤をされている訳です。


マイクプリの存在

では、音のクオリティを高めるには、どうすればいいのか。
星の数ほどあるノウハウの内、本稿で紹介したいのはマイクプリアンプという機材です。単にマイクプリとかHA(ヘッドアンプ)と呼ばれたりもします。マイクプリは、皆さんもお使いのオーディオインターフェイスに元々内蔵されています。マイクから送られてくる信号というのは、とても小さい信号のため、適切なレベルまで増幅してあげる必要があります。また、コンデンサーマイクは、一般に直流の48Vというファントム電源を供給してあげる必要がありますが、その役割も担います。マイクプリは、オーディオインターフェイス内蔵のものでも特に問題はありません。最近のインターフェイスは、質の良いマイクプリを使っていますし、音の傾向も癖の無いものが多いと思います。しかし、プロの商業スタジオは、ほぼ間違いなく単体のマイクプリアンプを常備しています。音楽目的であれば、マイクプリの持つキャラクターを得るために使用するという意味もあるでしょう。

では、音声コンテンツのために使用する意味は何なのでしょうか? 宅録音声の、しかもダイアログ(ナレーションや台詞など)という用途においては、商業スタジオのような音を録るために使用すると考えています。「それってどんなだよ?」と思われるでしょう。言うまでもなく、マイクプリアンプを使ったからといって、すぐさまプロのような音が録れるわけではありません。ただ、間違いなく何かが変わります。本稿ではその意味を少しでもお伝えできるように筆を進めていきたいと思います。

私は、自宅の一室に防音スタジオ兼シアターを2017年に作りました。専門の設計施工会社に依頼して、6畳の防音室と2畳弱の収録ブースを併設。歌モノを除く音声収録を行います。SONYのマイクC-100を購入したことをきっかけに、よりハイレベルな録り音を実現したい欲求が高まり、マイクプリアンプの導入を決意。FocusriteのISA Twoを購入し現在も使用しています。

Focusrite ISA Two review

Focusriteとは

Focusriteは、1985年にジョージ・マーティン卿が伝説のレコーディングコンソール設計者ルパート・ニーブ氏に、Air Studios Montserratのコンソール用に妥協のないマイクプリとEQを作るように依頼したことから生まれました。ISA(Input Signal Amplifier)の頭文字をとったそのモジュールは、まずForteコンソールに、次いでStudioコンソールに搭載され、その妥協のない透明なサウンドを確立した後、アウトボードユニットとして販売され多くの名声を得ていきます。そして、宅録勢にとっては、オーディオインターフェイスブランドとしての活躍が知名度の源泉でしょう。

遡ること90年代後半には、業界標準のDAWであるPro Tools 向けハードウエアをdigidesignと共同開発。初代MBOXはベストセラーに。現代では、ScarlettやClarett+とあえて名前を挙げるまでもないほど有力なブランドの一つになりました。Focusrite ProのオーディオインターフェイスとしてはRedシリーズがありますが、今回紹介するISA TwoもProシリーズに含まれます。
そんなプロも使えるマイクプリ、ISA Twoの概要を見ていきましょう。


ISA Two

1Uサイズの筐体は、ブルーとグレー、イエローがセンス良く使われたカラーリング。一目でFocusriteと分かるデザインです。本機のようなラック機材はベタ置きでももちろん使えますが、ラックマウントできると操作時にも安定感があり理想的ですね。

Focusrite ISA Two review

内部には、オリジナルのISA 110モジュールに搭載されていたマイクプリアンプを2つ組み込んでいます。Forteコンソールに使用されていた伝統的なソリッドステート電子回路と、ルパート・ニーブ自身が特別に指定したオリジナルのインプット・トランスLundahl LL1538で構成されます。このマイクプリは、ISAシリーズで共通となり、上位機種428mkⅡや828mkⅡの多チャンネル版と同一のクオリティです。

インプットは、マイク入力の他、ライン入力やエレキギターやベース用にDI入力も備えています。単体マイクプリとしてもトップレベルといえる、最大80dBものハイゲインに対応。ゲインを稼ぎにくいダイナミックマイクや、リボンマイクのような出力の小さいマイクにも余裕を持って対応可能です。カットオフ周波数可変のハイパスフィルター(16Hz~420Hz 18dB/oct)は、録り音の段階で不要な低域のカットをするのに役立ちます。詳しくは後述しますが、インピーダンス切り替えによって、マイクとのマッチングをより最適に調整できる機能がユニーク。可変は、600Ω / 1400Ω / 2400Ω / 6800Ω(Low/ISA 110/Med/High)から選べます。何気に嬉しいポイントは、出力ピークメーターがLEDで光ること。OUTPUTからオーディオインターフェイスへ送る前、マイクプリの時点で音が割れていないか、余裕はどの程度あるかを教えてくれます。この他にも機能面で言及できる点はあるのですが、音声コンテンツ制作に関わる部分はこんなところです。

Focusrite ISA Two review

私がISA Twoを選んだのは、ブランドの信頼感です。音声コンテンツを制作するスタジオにはFocusriteが置かれているイメージがあって、実際にスタジオのWEBサイトでも載っているケースがあります。

また、Focusriteのマイクプリ全体に言えることですが、面構えがとにかくお洒落で、レビューを見ても自分好みのサウンドに近そうなのも安心感となりました。癖のないフラットで忠実な録り音を求めている私にも合いそうだなと。

可変式のハイパスフィルターと、インピーダンス切り替えでサウンドキャラクターを変えられるのも面白そうです。ゲイン幅が大きく、リボンマイクも余裕で使えそうな将来性にも惹かれました。2chモデルを選んだのは、自分がネットラジオから音響エンジニアとしてのキャリアをスタートさせているため、対話ができる最低チャンネル数という部分と、バイノーラルマイクへの対応も想定してのことでした。

まずWEBラジオは、1人パーソナリティーもありますが、レギュラーとして2人、ゲストが1~2人というケースが多いと思います。メインの出演者をフォローする意味で、2chの入力は必須でした。続いて、いわゆるASMRコンテンツについては、以前から「耳かき」や「添い寝」などシチュエーションものが盛んに同人界隈で制作されていたのを把握していましたが、ここ数年でさらに旺盛を極めている様子。成人向けも含め、その市場は圧倒的なようで、自ら100万円越えのバイノーラルステレオマイクKU100を購入する声優さんも珍しくありません。

某大手同人系ダウンロードサイトは、自らASMRコンテンツ制作などを想定したスタジオを新たに立ち上げるほどです。KU100は雲の上としても、3DioのFree Spaceシリーズなど宅録レベルで導入できるデバイスも存在します。当然、耳は2つなので2chは確保する必要があります。
フォーマットもハイレゾで配信されている作品も存在しますので、音がショボくては勝負になりません。

なお、可変式ハイパスフィルターは、ご覧のとおり等間隔の目盛りになっていません。16/34/210/420Hzの目盛りを頼りに、実際に音を聞きながら調整する感じです。録り音の段階でローカットを掛けるのは、いろんな意見があるでしょうが、明らかに不要な暗騒音のカットなど微調整しながら使えるのは便利だと思います。

Focusrite ISA Two review

ここで可変式入力インピーダンスについて、詳しく触れておきましょう。おそらくISA Twoで最もユニークであり、個性的な機能でもあるからです。オリジナルのISA110のインピーダンス1400Ωをスタンダードとして、下に1種類(600Ω)、上に2種類(2400Ω / 6800Ω)の可変インピーダンスを用意しています。マイクプリの入力インピーダンスとマイクの相互関係は、主にレベルと周波数特性に影響を与えるとFocusriteは述べています。プロ用のマイクは耐ノイズ性能などを考慮して出力インピーダンスが低く設定されているため、マイクプリの入力インピーダンスを高く設定することで、より大きなレベル(録音レベル)を得ることができます。周波数特性については、入力インピーダンスを高くすると、高周波特性が強調され、明瞭な音になります。全4種類を使い分けることで、好みの音色感を作り出せるのは、よりクリエイティブに音を作り込みたい人にとって使いこなす楽しさを提供してくれるでしょう。

Focusrite ISA Two review

マイクとのマッチングという意味では、リボンマイクは注意が必要です。マイクのインピーダンスが30Ω~ 120Ω の場合、入力インピーダンスを600Ω(Low)に設定し、120Ω~ 200Ωのリボンマイクでは、1400Ω(ISA110)に設定することを推奨していますので、留意しておきましょう。
ざっくりとした説明は以上なのですが、なんだかピンとこないですよね。私も面白いなとは思いましたが、実際にやってみるまでは意味あるの?って懐疑的でした。インピーダンスを変更することによる音の変化は、いわゆる劇的に変わるというものではありません。ただ、聴き比べれば明らかに違いが分かります。貴方の声をより魅力的に活かすため、録り音の段階でさりげない味付けをする意味でも、使いこなして欲しい機能です。

Focusrite ISA Two スペクトラム

ISA110

Focusrite ISA Two スペクトラム

High

Focusrite ISA Two スペクトラム

Mid

Focusrite ISA Two スペクトラム

Low

せっかくなので、実際の音声を聞いていただきたいと思います。本稿のために、プロのナレーターさんにご協力いただき、なるべく同じマイクワークと声量で同じ原稿を発声していただきました。まずは、以下の4種類を聞いて見て下さい。


インピーダンス別聴き比べ音源


高音質バージョンのダウンロードはこちら

    《録音環境》
  • マイク:SONY C-100
  • マイクプリ:ISA Two
  • オーディオインターフェイス:TASCAM US-20×20
  • クロックジェネレータ:TASCAM CG-1000
  • DAW:Pro Tools 2022.6

ナレーター・俳優:鈴木健太さん
https://www.kentavoce.art/

いかがでしょうか。もしかしたら、ある程度のクオリティを持ったモニターヘッドフォンやスピーカーでよく聴かないと分からないかもしれません。実際、無料のアナライザーアプリWaveSpectraで読み込んでみても、4種類の波形はほとんど同じ傾向で、目立った特徴は見られませんでした。ただ、聴き比べれば違いは明らかですし、演者の方もリアルタイムに返ってくる音が明確に違うと仰っていました。

Lowは、高域が穏やかで、刺激成分がほとんどありません。声質によっては、少し籠もった感じに聞こえるかも。

ISA110は、一気に空気感が生まれます。不自然さがない程度に高域が持ち上がって、音の粒立ちが引き立ちます。高域の変化によって、相対的に低域のキレも増したように感じます。

Medは、さらに高域がブライトになって主張を感じます。Pro Toolsで見る波形の大きさはそれほど変わらないのですが、聴感上の音量は大きくなっている気がします。押しが強い音です。

Highになると、さらに高域が持ち上がって、全体的にギラギラしてきます。声質やマイクによっても結果は変わると思いますが、ちょっと不自然さは否めません。

具体的には、どのように使い分ければいいのでしょうか。私ならこうするという話ですが、数kHz付近の高域に目立つピークがあるマイクを接続するときはLowに設定して癖を打ち消してあげたり、低い声の演者さんで明るさや清涼感が欲しいときにMedに設定してほんの少しブライト感を加えてあげるとかはあり得ると思います。
基本は、ISA 110に設定しておいて、録り音に不満や違和感があるときにそれを補正してあげる目的で使うとよいのではないでしょうか。


まとめ、最後に

マイクプリアンプという機材は、導入したからといって、何か致命的な問題を解決するとか一発逆転みたいなことは起こりません。しかし、オーディオインターフェイス内蔵のマイクプリでは味わえない独特な音の感動をもたらしてくれます。これは言葉にするのが難しい、なんとも実態のない効果なのですが、私はオーディオライターでもあるので、具体的に説明してみましょう。

私がISA Two使って思ったのは、C-100のようなハイクオリティなマイクのポテンシャルを引き出すことができたという実感です。それは、音の太さ、質感の豊かさ、有機的な音色、実在感といった要素が格段に向上したことからも明らかでした。なんといえばいいのか、音に生命が宿るという例えが適当でしょうか、血が通った音なのです。内蔵マイクプリが無機質だとまでは言いませんが、比較すると断然こっち!と即答できる良さがあります。
これらの要素は、「そこまで高いレベルで実現しなくても、納品物としては成立してしまう」類いのものではあります。だからこそ、他と差を付けられる、プロのスタジオの音に一歩近づけると思うのです。

きっと、貴方もマイクプリアンプを導入すれば思うことでしょう。

「まだまだレコーディング技術を磨きたい」
「さらにルームアコースティックに気を配りたい」
「ノイズ対策や振動対策を見直してみよう」
「オーディオインターフェイスも買い換えたい」

実際、私もISA Twoの導入をきっかけとして、さらなる音質アップを模索した結果、クロックジェネレータを購入しました。こんなにいい音が録れるなら、AD/DAの性能上げたいなと。ひとつ峠を越えてみたら、もう一段階上を目指してみたくなる、そんな機材は良い機材の証だと私は考えています。

音声コンテンツ、動画コンテンツを自宅で制作する方にとって、音質のクオリティアップは避けては通れません。従来までの一般的な妥協点では、埋もれてしまうかもしれない厳しい時代です。他に負けないワンランク上の音質を実現するために、Focusrite ProのISAシリーズマイクプリアンプは、優良な選択肢の一つだと思います。ぜひこれを機会に検討してみてはいかがでしょうか。


プロフィール

橋爪徹

橋爪徹

オーディオライター・音響エンジニア

1982年静岡県生まれ。浜松市出身。
2006年よりエンジニアとしての活動を開始。ポッドキャスト、公開録音イベント、ネットテレビ、ボイスサンプルなど、声の録音・編集・ミキサー・PAに関する業務を担当。
2012年より、プロ作曲家和田貴史氏とハイレゾ音楽を制作するプロデュースユニットBeagle Kickを結成。768kHz/32bit整数、384kHz/ネイティブ32bit整数録音といったモンスターフォーマットで世界初の配信販売を実現。MQA-CDを同人音楽界で初めて発売するなど、先進的すぎる活動は密かな話題に。
同ユニットの活動を通じて、オーディオ業界に関わるようになり、2014年オーディオライターとして活動を開始。数年後には、自宅にDolby Atmos対応の防音シアターと併設する録音ブースを設ける。
9年ほど声の役者を目指して活動していた経験があり、録る側と録られる側、両方の気持ちを理解したオペレート&コミュニケーションを強みとする。

ホームスタジオ「Studio 0.x」公式WEB
https://studio-0x.web5.jp/

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