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気鋭プロデューサーが語る、BIAS Headの魅力 – 保本真吾

2017.05.02

「こだわる」って、こういうことなんですよ
保本真吾BIAS Head導入インタビュー

音楽プロデュースユニット、CHRYSANTHEMUM BRIDGEとして、ゆずやSEKAI NO OWARI、シナリオアートなどを手がけ、アーティストの新たな魅力を引き出す保本真吾氏。スタジオには壁一面にストンプボックスやビンテージ機器で埋め尽くされた棚があり、日々の音楽制作に活用されているという。

そんな保本氏が「本当に楽しい」と評して導入したのが、Positive GridのアンプヘッドBIAS Headと、ディストーションペダルのBIAS Distortionだ。いずれもパーツレベル、回路レベルでカスタマイズ可能なハードウェアで、保本氏はその自由度の高さと、実験性に惚れ込んで導入を決めたという。氏のプロデュースの根幹にある思いと共鳴した部分もあるというBIASハードウェア。ここではBIAS Headについて、どのように活用をされているか話を聞いた。

音楽や音作りをするなら、やっぱりハードウェアがいい

MI:ちょうど1年ほど前にこのスタジオに初めて訪問をさせていただいて、壁一面を埋め尽くしたストンプボックスに驚きました。保本さんはきっとハードウェアが大好きであろうことも分かったのですが、「本物を知っている方」だからこそ、Positive Gridが作っているソフトウェア、BIAS FXやBIAS Ampなどを試して頂きたいなと思った記憶があり、ご紹介をさせていただきました。当時はまだコンピュータ用のDesktop版と、iPhoneやiPadなどのiOS版、いずれもソフトウェアのみの展開でした。

保本:紹介してもらって「面白そう!」と思ったので、すぐにデスクトップ版も、iOS版も購入しました。すごく完成度が高くて、近年のアンプモデリング系では随一のクオリティなだなと思いましたね。

- 導入していただいたソフトウェアのBIAS AmpやBIAS Pedalは、実際にレコーディングなどでも使用されたのでしょうか?

実は、音の良さには何の不満もなかったのですが、コンピュータやiPadなどで使う場合に「オーディオインターフェイスも用意しなくてはならない」というのがどうにもしっくりこなくて、正直なところ「ハイクオリティな遊び道具」という位置を超えませんでした。特にiOSデバイスの場合には使用できるオーディオインターフェイスも限りがあって、そこも残念に感じていた部分ですね。でも、そんなことを感じているタイミングで「ハードウェア版のBIAS Amp(BIAS Head)が発売になる」という連絡をもらいました。

- 弊社スタッフの中でも保本さんとお付合いの長いスタッフから、発売のご連絡をさせていただきましたね。喜んでいただけるのではと思いました。

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あの音のクオリティと、パーツレベルまでカスタマイズできる機能がハードウェアになったわけですから、自分の中では大盛り上がりのニュースでしたね。「これはいいものに違いない」と試す前から確信してしまいました。特にここ数年は音楽を作る人たちの間で「ハードウェア回帰」のような空気も感じていて、だからこそPositive Gridがソフトのみならずハードウェアでも製品をリリースしてくれたことは嬉しかった。

- Positive Gridとしてはソフトウェアであっても、ハードウェアであってもユーザーに同じ体験・音を提供するという「クロス・プラットフォーム」を掲げています。ハードウェアになったことで何が違ったのでしょう?

音の良さはソフトウェア版からも素晴らしいと思っていたのですが、やっぱり音楽や音を「作る」ときって、実物のツマミを回しながら音作りをしたいんですよ。BIAS Ampがハードウェアになって、直接手でガシガシ触れるようになったというのが何より嬉しかったんです。それから、BIAS Headは今までにないレベルでハードウェアとソフトウェアのいいとこ取り、あるいは融合をしてきましたよね。

- おっしゃる通りです。Positive GridチームはBIAS Headを単なる「BIAS Amp(ソフトウェア)のハード版」としては考えておらず、ハード版となるBIAS HeadはコンピュータやiOSデバイスなしでも十分な音作りが可能です。より深い音作りをしたい方はコンピュータやiOSデバイスをコントローラとして使っていただければいい。そういう理由から、BIAS Headでは液晶ディスプレイの類は搭載していません。

そう!それがいいんです。ギターの音作りをするのに、本体の小さなディスプレイを見ながらやりたくない。耳で聞きながら、自分が”いいな"と思うところまでツマミを回して作りますからね。その大事な部分をハードウェアで意思表示してくれているのがいい。

- 実際に、ハードウェアだけの音作りで不満を感じることはありませんか?

僕はBIAS Headを「アナログもアンプと同様の感覚で使えるアンプヘッド」として見ているので、全く不満を感じていません。一般的なギターアンプと同様に一切マニュアルを見なくても使いこなすことができますが、一般的なアンプヘッドに比べたらありえないほどの音作りの幅を持っていますよね。

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- 工場出荷時の状態で、25種類の代表的なギターアンプを本体にセットしています。ツマミを1つ回すだけでアンプが切り替わり、クリーンからメタルまで対応できる音作りができますね。

コンピュータやiPadなどがなくてもできるというのがいいですよね。「コンピュータがなかったらほとんど音作りはできません」という製品だとあまり魅力がない。同様にハードだけで音作りはできるものの「本体の小さなディスプレイを使って、深い階層まで潜ってカチカチ操作すれば音作りできます」というものにも魅力は感じないですね。

僕がBIAS Headを使うときは、まずは本体だけで音を作るんです。そこで音が決まればそのままレコーディングしますし、もうちょっと微調整をしたいなと思ったときにはじめてiPadやコンピュータを使ってカスマイズをします。発売してから今までその方法でかなりのレコーディングをしてきましたが、まったく不満を感じたことはありません。

「こだわる」ってこういうことなんですよ

- 必要に応じてソフトウェアを使ってカスタマイズされるとのことですが、ハードウェア以前にソフトウェアの方は使い尽くしていらっしゃった保本さんとしては、どういったカスタマイズが面白かったですか?

実は僕、かなりの真空管のマニアなんです。実際自分で所有している真空管の機器も真空管を変えてみたり、専門の方に手伝ってもらいながらメンテナンスをしたりしているんですよ。そういう僕としては、簡単にクリック1つで真空管を変えられるのは何よりも楽しいカスタマイズですね。

- インプットステージの真空管、カソードフォロワーの真空管はもちろん、パワーアンプやレクチファイアーの真空管まで、あらゆる場所の真空管をクリック、またはタップだけで変更できます。

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こんなに細かいところまでは実際のアンプでもほぼ無理ですからね!状態のよい真空管を揃えないといけない、バイアス調整もしなくちゃいけない、変えたとしても「いい結果」になるなんて保証もない。それが簡単にできるだけじゃなくて、僕みたいなマニアにも「そうそう!」という共感ももたせてくれる音に仕上がっている。Positive Gridチームの特徴の捉え方が好きなんです。

- 一意的な特徴だけでなく、複数の要因によって変わるさまも、Positive Gridチームがこだわったポイントです。

その思いをすごく感じます。だって、マニアックすぎるもん(笑)でも「こだわる」ってこういうことなんですよね。ここまでやってはじめてカスタマイズと言えますから。僕もこういった製品が登場する以前からいろいろな機器の真空管を変えてカスタマイズしてきましたけど、決していい結果ばかりではないんです。ときには大失敗したりすることもありました。でも失敗を恐れずに実験を重ねて、その先に求めていたサウンドが出てきたときの喜びは、言葉にしつくせないものがあります。BIASではそれが「簡単」にできるようにはなった。バリエーションも豊かだし、実際の真空管で幾多の実験と経験を重ねてきた僕は絶対にいい音をつくる自信もありますよ。とはいえ...いい時代だなぁとも思いますね。

セーブは一切しない。

- ハードだけでも十分な音作りができ、かつソフトウェアを使ったカスタマイズを実践されているとのことですが、ということは保本さんが所有されているこのBIAS Headには、絶妙にフル・カスタマイズされたアンプがセーブされているのですか?

実は、本体になにかをセーブするといったことは全くしていないんです。このBIAS Headも工場から出荷されたときのままですよ。

- 今まで数多くの現場でレコーディングでも使用したと先ほどお聞きしましたが、その時作ったアンプは保存されていないのですか?

はい、全くしていないんです。こういった機器の謳い文句によくあるような「セーブしておけば、どこに行っても自分の音が出せる」といった言葉があまりピンとこなくて。音というのはやっぱり現場で、その時の空気や温度を感じながら作るべきだと思うんですね。BIASを持っていった先のスタジオや会場でも、その場所によって音や響き方は変わるじゃないですか。なので「ボタン1つで自分の音がリコールされる」という事に、あまり喜びは感じない。その場所にいってはじめて音を作りたいんですね。

- セーブのできない、ビンテージアナログシンセと同じ考え方でしょうか?

そうですね。リコールできることはデジタル機器の最大のメリットだと思うけど、僕はBIAS Headをアナログのギターアンプヘッドと同じ感覚で付き合いたいんです。だからここにある僕のBIAS Headは、工場から出荷されたままの(なにもセーブされていない)状態ですよ。

- 外部のスタジオなどの場合には、時間のリミットもありますよね。そういった場合でも1から音作りをされるのですか?

はい、そうしています。たしかに時間ももったいないし、手間もかかります。ですが、その「手間をかけた分」がいい音楽を産む一要因になるんですよ。スタジオで実験を重ねた分の時間こそがオリジナリティーや深みにもつながる。僕はそこを大事にしているんですね。しかしBIAS Headにはすでに25種のアンプが「スタンバイ」されているわけですから、これでもかなり楽できていて、かつ音作りも素早くできますよ。

- その場で感じる雰囲気や反応、あるいは空気や温度まで感じながら行われるからこそ、音にも人柄がでてくるということですね。

そうなんです。もう一つ言うと、セオリーに縛られないつなぎ方や音の出し方も僕ならではの使い方ですね。つい先日も現場にギター用のキャビネットではない、一般的なモニタースピーカーにBIAS Headを繋いで鳴らしてみたらどうだろうっていう実験をしたんですよ。で、そのモニタースピーカーに向けてマイクを立ててみたんです。普通のギターキャビネットのように。そしたらそれがいい意味ですごく個性的な音になって、そのままレコーディングもしてしまいました。

- へぇ!それは面白いですね。まさしく実験的です。

でも、モニタースピーカーの方が帯域は広く綺麗に鳴ってくれるから、思ったよりマイキングも楽でした(笑)こうして録った音と、元のラインの音を混ぜたら、芯のある強い音になりましたね。BIAS Headには複数のアウトプットコンポーネントがあるから、固く考えずにいろいろと実験してみればいいんです。発想を自由にもっておけば、新しい音作りがもっと広がるはずですよ。

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- デジタル機器なら当たり前のセーブ機能をまったく使用されていないということですが、BIASシリーズの機能の1つである、Amp Match(実際のアンプの特性をキャプチャして、アンプを複製してしまうような機能)は使っていないのですか?

全く使っていません。だって、BIAS Headはオリジナルのアンプを1から作ることができるんですから。そういう「コピーもの」じゃなくて、自分だけのアンプを作ることができるのがこいつの最大の魅力じゃないですか?どんなに回路に詳しくなくても絶対に音はでるんだから、コピーものじゃなくて自分だけのアンプを作ったほうが断然楽しいですよ。


- 保本さんの使い方を拝見していて、Positive Gridのスタッフが話していたことを思い出しました。彼らも「ハードのBIAS Headは様々な機能を搭載しているけど、何よりもアンプヘッドとしての完成度を高めたつもりだから、まずはiPadやコンピュータを繋がずに、本体だけで鳴らしてみてほしい」と。

日によって音の好みって、微妙にも変わるものなんです。変わって当然なんですよ。レコーディングの現場だって綿密な打ち合わせをしたはずなのに、当日になって思いつきでギター本体を変えてみることだってあります。ギターを変えたら、当然アンプのセッティングも変えますよね。BIAS Headは真空管を変えたりトランスを変えたりといったエディットはソフト上で行いますが、ギターを弾くときに直感的に考える歪みの量やトーンは本体のツマミを直接触ってコントロールできる。この仕組みが今の僕には最高にマッチしていて、手放せないですね。

- BIAS Headの機能面だけでなく、スタンスまで気に入っていただけて、Positive Gridチームや私たちも嬉しいです。

でも、最も気に入っているのは「BIAS Headでギターを弾いている瞬間が一番楽しい」ということ。これが一番大事です。


保本氏にはギターアンプヘッドのBIAS Headだけではなく、オーバードライブ/ディストーションペダルのBIAS Distortionも導入いただいている。続くインタビューでは「モデリング元となったビンテージエフェクターをほぼ全て所有している」という保本氏がどうしてBIAS Distortionを導入するに至ったのか。またサウンドの評価などを掘り下げて聞いてみた。

BIAS Distortionインタビューへ

Profile

保本真吾

(CHRYSANTHEMUM BRIDGE)

サウンドクリエイターとして活動していた保本真吾とライブなどのプロデュースを手掛ける August Flower が 2010 年 にプロデュースチームを結成。 SEKAI NO OWARI、ゆず、でんぱ組 inc.、Silent Siren、シナリオアート、Charisma.com、GO-BANG’S、みみめめmimi、Q-MHz等のアレンジやサウンドプロデュースを手掛ける。また、 楽曲提供や劇伴、ライブ音源制作やコンサートのサウンドプロデュースなど幅広く手掛けている。

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