音も映像も同時にOrbaでコントロール
2021.12.06
 
メディア・インテグレーション(以下、MI)
今回ご提供させていただいて、初めてOrbaを手にしていただいたと思います。 よくあるMIDIキーボードやPADとは全然形も違う製品なのですが、第一印象はいかがでしたか? 実際使った感触なども教えてください。
事前に動画などは見ていて、普通のサンプラーというか、タッチパッドのサンプラーなのかなと最初は思っていました。開けてみたらBASSとかCHORDとかって書いてあって、「これ一個で曲が作れるんだ。という感じが第一印象です。あとすごい軽くて。質感は安っぽくなく、 軽くていいなと思いましたね。それから、ワイヤレスで使えるってところがすごく良いなと思いました。
結構自分の制作部屋とか、パソコンの前に張り付いて曲を作るというよりは、ノートパソコン一台とかiPhoneとか使って最初スケッチして曲を作ることが多いので、その時にめちゃくちゃ使いやすくて良いなと。
MI
ラフに使うときは、Orbaに入っている音源を使っていますか?
そうです。Orbaに入っている音源を結構使っていて、それをリサンプルしたりとか、あとはMIDIで取り込んで違う音色に変えたりとかしています。
製品の形も普通のMIDIコントローラーとは違うじゃないですか。
よくあるキーボードやパッドだと、手ぐせがどうしても出てしまうんですよね。だからOrbaを使うと今まで自分が使ってきた他の機材とかでついちゃってた手ぐせを解消できるというか。
Ableton PUSHとかも制作するときのマンネリを解消するには良いなと思って使ってたんですけど、また違った使い方で、スケールも決められるし、使ったことないですけどハングドラムみたいな感じでも使えるので、自分が意図してないフレーズを作るのにめちゃめちゃ活用してますね。
MI
プリセットを使っていらっしゃるとのことですが、お気に入りのプリセットはありますか?
アンビエントっぽいパッドがすごい好きで。アリのやつ(Ambeeant Artiphon)をよく使用しています。 これを使うときだけはラインでラインアウトして、ミキサーに入れてエフェクターとかで加工して、リサンプルしてみたいな感じで使っていますね。結構プリセットの音はこの内蔵スピーカーで鳴らすと一聴してわからないですけど、スピーカーに繋ぐとすごくいい音なんですよ。 言うなれば、『サンプルフレーズ製造機』みたいな感じで。めちゃめちゃ使ってますね。
MI
MIDIを使ってAbletonの中のソフトシンセを鳴らすのと、Orba自体の音だと今の所、割合的にはどちらが多いですか?
実際の制作やライブでは、Orbaの中に入ってるプリセットの音色をそのまま使うことはあまりありません。制作のときのコントローラーとか、Orbaの音を加工したものをAbletonのサンプラーとかに入れて鳴らす形で使っています。なのでライブ中っていう意味で言うと自前の音源よりもサンプルが多くて。
僕は映像も動かしたりするので、BASSとかCHORDとかREADとかに切り替えることはしなくて、DRUMしか使わないんですよ。Drum RackっていうAbletonのサンプラーの中に必要な音色を入れて、叩いたりとか、あとは押しっぱなしにしてるとドローンみたいな音を出すようにして、捻るとフィルターがかかるとか。
なのでMPCみたいなパッドでの表現がさらに拡がったようなイメージでライブでは使ってます。
ただ音をトリガーするだけではなく、そこからの「捻り」なんかのアクションを入れることで、ライブ感も演出できるし、音を鳴らすのと同時に映像の切り替えもトリガーしてたりとかしてますね。
MI
映像と音も一緒にコントロールしてるとのことなのですが、Ableton Live内でどのようにOrbaと接続させているのですか?
基本的に全てのコントロールをAbleton Live内だけで行っていて、Orbaは、MIDIコントローラーとしてライブ中は使っています。
まず、Drum RackにMIDIを送って、音を鳴らす役割。あとはArtiphonの公式からダウンロードできるコイツがめちゃくちゃ優秀なんです。(Orba mapping utility for Max for Ableton Live)
センサーで反応してくれるんで、音を鳴らすのとは別に加速度センサーとかの情報をフィルターに送ったり、映像のコントロールとかに送ったりしていますね。
映像に関しては、Maxのものだと思うんですけど、サードパーティのZwobotっていうソフトを使っています。
映像制作とかそういうのじゃなくVJよりもっと軽いノリで使えるので、とても便利ですよ。自分で撮影した気に入ったテクスチャーの動画や写真を加工して、コマ送りにしたりできて、Orbaから送られるMIDIでエフェクトをコントロールしたりしています。
MI
音の部分と映像の部分を切り替えながらOrbaでコントロールしてるということですか?
そうですね。Orbaは映像の切り替えにも使っていて、一つのボタンで音も映像も変わるように設定しています。
「このノートを出すと、この映像に変わる」っていう風に設計していて、ねじったりするアクションは映像を動かすエフェクトに使ったりしてます。音を変化させるのにも使ってるんですけど、割合としては映像にエフェクトをかける面で使っているという感じですね。
やっている内容としては結構シンプルなんですよ。プログラムとかを書いている訳でもなく、Max for Liveの機能だけでやっているので。
そんなに難しいことはやってないですね。
MI
音だけ、とか映像だけやってる人は結構いると思うんですけど、両方一緒にやりたい人にお勧めできそうですね。
MI
最後に、どんな方にOrbaをお勧めしたいですか。
Orbaって、初心者の方や音楽理論とか知らない方でも簡単に音楽を作れますよ、っていう訴求の仕方もしてるじゃないですか。
なんとなく自分でDTMとかやってトラックとか作ってるんだけど音楽理論があんまりわからない人とかにはすごくいいなって思います。これを使ってスケールとかアンサンブルの構成を学ぶことができるし、このコードを鳴らした時にこのベースが当たると気持ちいいんだとか、こういう響きになるんだとか体感的にも理論的にも理解することができると思うんです。
僕が実際にそうなので。笑
僕は音楽理論がわからないところもあるので、作曲補助ツールみたいな感じでも使っています。あと、パソコンを繋がなくても気軽に空いた時間なんかに使えるのも手軽にできていいですよね。初心者だけじゃなくて、中級者というか音楽理論をもうちょっと学びたい人、楽曲のクオリティを上げたい人なんかに使ってもらうのもすごくいいんじゃないかなって思います。
SUNNOVA(サンノバ)
東京を拠点に活動するサウンドデザイナー。ソロアーティストとして国内外のレーベルからの楽曲リリース、TVCMの楽曲制作の他、近年は映像作家としてファッションブランドなどの楽曲と映像制作を手掛ける。
2020年に日本のオルタナティブシーンを代表するバンド、downyに加入し、サンプラーとシンセサイザーを担当。最新作は2020年にリリースされたdowny - 第七作品集『無題』。
instagram https://www.instagram.com/sunnova_downy/