2024.11.26
こんにちは、都内を拠点に活動しているプロデューサー/トラックメイカーのSoratoです。
今回はApogeeのプラグイン「Soft Limit」をご紹介します。
前回お話ししたSymphony ECS Channel Stripに続き、このSoft LimitもApogeeプラグインの中では少し特徴的なサウンドを持つ製品です。
他のApogee製品はクリアで鋭いモダンサウンドが特徴ですが、ECSとSoft Limitはサチュレーション感と丸みのある「テープライク」なサウンドが魅力的な製品です。
今回は、この特徴に注目していきます。
Soft Limitは、1991年にリリースされたADコンバーター「AD-500」に搭載されているアナログテープエミュレーションが元になっています。
AD-500の開発中に、デジタルオーディオ技術は優れた性能と低い歪みを提供していましたが、アナログテープの技術的な欠点が、エンジニアにとって捨てがたい音の魅力を生み出していることに気づきこの「Soft Limit」が誕生したそうです。
以降、AD-8000やSymphony I/O Mk2、最新のDuet 3など、ほぼすべてのApogeeのADコンバーターにSoft Limitが搭載されるようになりました。
最大のピークリダクションを達成するレベルを設定します。元のアナログハードウェアプロセスと同様に、スレッショルド設定より3-4dB低い位置から波形を緩やかに圧縮します。
ゲインリダクションによって低くなった音量を補うために、プラグインの出力レベルを自動的に増加させます。
プラグインの出力レベルを手動で調節できます。
入力信号レベルを調節できます。
Soft Limitをレベル設定やメータリングに影響を与えることなくオン/オフします。
処理が実行されるサンプルレートの倍数を設定します。
オーバーサンプリングをオンにするとエイリアシングが排除されますが、16 サンプルのレイテンシーが発生します。
より高いオーバーサンプリングレートは、より多くの CPU パワーを必要とします。
初めて使ったときに感じたのは、「音が丸くなる」という印象です。
多くのプラグインメーカーからリリースされているSoft Clipperやテープシミュレーターとは異なる独特な音の太さや音楽的なキャラクターがあり、用途によって活躍の場が広がりそうです。
高音域がきつく、トランジェントが強めな歌やハイハットに対しても、このプラグインは効果的です。
過度にかけると存在感が薄れてしまうため、私は-1~-2db程度で引っ掛けてから、曲に合う値に微調整しています。
また、単にトランジェントを馴染ませるだけでなく、あえてリダクションさせてダイナミクスを抑える使い方も有効です。
たとえば、ボーカルにこの設定を適用すると、天井感のある安定した歌に仕上がるため、宅録するボーカリストにもおすすめのプラグインだと思います。
プラグインとしてではないですが、Symphony DesktopにもこのSoft Limitは搭載されており、Apogee Control上からインプットに搭載されているSoft Limitのオンオフが可能です。
レコーディング時にテープのような甘いサウンド感が欲しい際は簡単に取り入れることができます。
Soft Limitは、特にLofiやレトロなサウンドを好むプロデューサーにぴったりです。Lofiやチルな雰囲気の音楽が人気を集める今、こういったニュアンスを表現できるプラグインは貴重なアイテムといえます。
メーカーごとに個性が異なるため、選択肢の一つとして持っておくと、サウンドの幅が広がります。
MusicProducer/Remixer.
国内外アーティストへの楽曲提供、ビート提供、リミックス制作などグローバルに幅広い活動を見せ、The Chainsmokers「Takeaway Remix Contest」では世界9位、日本1位の実績を持つ。
マゴノダイマデ・プロダクション所属
Works(敬称略)
Snow Man “BREAKOUT”作曲(共) 編曲
IVE “Will“ 作詞作曲(共 )編曲
いゔどっと ”まほろば” 編曲
北山 宏光 “YOU&I” 作詞作曲(共) 編曲
THE JET BOY BANGERZ “Banger” 作詞作曲(共)編曲
etc…
大阪大学文学部音楽専修卒業。幼少期からクラシックピアノを学び、大学卒論でタイ音楽を研究。2018年より作家活動を開始し、幅広いジャンルで作詞作曲やボーカルディレクションを行う。