2021.05.13
アレンジャーワークのみならず、楽曲制作、プロデュース、プレイヤー、自主レーベル[Studio Cubic Records]の運営とアーティストの育成にも力を注ぐ鈴木Daichi秀行さん。 地下から地上2階まで、まるまる1棟が「音楽の玉手箱」とも呼べる氏のホームスタジオ、Studio CubicにてAMS Neveのアウトボードを使用して頂いた。 今回は1073®の50周年を記念してAMS Neveが2020年の初めに発売した、8chリモート・マイクプリアンプの1073OPXの活用方法をお伺いした。
1073OPXは、1073®の血統を引き継いでおり、2Uラックユニットに8つの伝説的なプリアンプを搭載しています。フロントとリアのコネクタは、あらゆるスタジオ/ライブ/ブロードキャスト環境への包括的な接続性を提供し、最新のリモートコントロールソフトウェアは、セーブ/ロード機能を備えたすべての設定をTotal Recall™で双方向にコントロールします。マイク入力ソースはMarinair®トランス結合入力ステージの恩恵を受け、ソースをフロントマウントのマイク/ライン/DI入力に直接接続してスタジオのコントロールルームで録音することができます。
550,000円(税抜)
メディア・インテグレーション(以下、MI)
これまでは500シリーズ対応のAMS Neve製品についてお話をお伺いしましたが、今回はAMS Neveが2020年の初めに発売した1073OPXになります。
よろしくお願いします。
MI
1073OPXの特徴のひとつはやはり8chマイクプリだと思いますが、サウンドの印象はいかがでしょうか?
ドラムを録音してテストを行いました。すごくクリアで綺麗に録音できました。
1073DPXや1073LBといった、現行のAMS Neveのプリアンプと同じような印象です。
ビンテージのNeveはどうしても味が濃くて癖があるので、曲によっては、合う合わないが分かれるのですが、ビンテージよりもレンジが広くて綺麗に撮れるけど、Neveらしさもちゃんとあって、使いやすい印象です。
ストリングスとかも綺麗に撮れると思います。
MI
ヘッドアンプのゲインコントロールが従来の1073とは違いデジタルエンコーダーになりました。使用感はいかがでしょうか?
つまみが回り続けるので、他のチャンネルとレベルを合わせても、つまみの位置が合わなかったりしますが、ゲインがフロントのディスプレイに表示されるので、視覚的にも分かりやすくて、コントロールしやすいと思います。
従来の1073シリーズは5dBステップで、間が欲しいなということが多かったのですが、この1073OPXは1dBステップでコントロールできますし、LRを合わせるのも数字で合わせられるのでよいですね。
あのガチャガチャとつまみを回す感触が好きな方は物足りないかもしれませんが(笑
MI
マイクプリアンプ部分の機能面はいかがでしょうか?
これだけの機能があれば十分だと思います。
1073のマイクゲインは20dBスタートなので、最近のゲインの大きいマイクとか、声量のあるボーカルとかだと結構ギリギリだったりするんですよね。
PADもついていますので、そういったマイクを使用する際や歌録り、リズム録りの時も重宝すると思います。
コンボジャックで楽器もそのまま繋げられるのもよいですよね。
強いて言えばアウトプットフェーダーは欲しいかなと思いました。
そうしたらもうちょっと攻めた使い方ができるかな(笑
MI
1073OPXの特徴のひとつでリモート機能が使用できます。
PCと1073OPXをEthernetケーブルで接続すると、専用ソフトを使用して1073OPXをPCから操作することができます。
ソフトのボタンの配置とかも見た目と似ているので直感的に操作できると思います。
MI
リモート機能はどんな時に使用しますか?
リモートマイクプリアンプの良いところは、マイクからプリアンプに行くまでの距離を短くできることです。
マイクからプリアンプまでの距離が長いとノイズが混入する可能性が高くなりますし、SNも悪くなります。マイクプリアンプでラインレベルにしてからケーブルを引き回した方が有利になります。
レコーディングではブース側に1073OPXを置いて、ラインレベルでコントールルームに持ってきて、レベルの調整はPC上からリモートコントロールできるというのは大きなメリットだと思います。
実際にリモートマイクプリアンプじゃなくてもブースを行き来してアナログ的にやってるエンジニアの方もいるくらいですから(笑
ライブレコーディングや配信でも活躍すると思います。
会場にもよりますが、ケーブルをかなりの距離を引き回す場合が多いので、ステージ付近に設置して、ラインレベルで引き回して、リモートでコントロールするというのがよいと思います。2Uで場所も取らないし、8ch入力できるというのも良いですよね。
MI
デジタルオプションを追加すると、Dante、USBオーディオインターフェイスの機能を使用できます。
Danteが使えるとさらにライブレコーディングとの相性は良さそうですね。
コンソールもDanteが増えてきて、ライブレコーディング用の回線もDanteで簡単に分配できますよね。
最近はライブの現場でもDanteの普及率が増えてきている印象です。
レコーディングだと回線がシンプルになっていいですよね。
最近ではネットワークオーディオの普及率も高くなってきましたし、現時点では当初より安定しているイメージです。現場で使っても不安はなくなってきた感じがします。
この先の機材構成を考えると相性がいいと思いますね。
MI
実はオーディオインターフェイスとしっかり押し出しているのは初めての商品です。
Neveでオーディオインターフェイスって他に聞かないですよね。
単純にマイクプリアンプとして使用する場合、アナログ出しすることになると思うのですが、よいこともあればよくないこともあります。
SNの部分だったり、別のインターフェイスのAD/DAとか、ケーブル問題とか様々な要素で音が変わってくるので、1073OPXをオーディオインターフェイスとして使用して、音をそのままダイレクトに入力するという意味では、シンプルでよいと思います。
DAWの入力までがシンプルになることで、Neveはこういう音だよというものが明確に出てきますよね。
MI
USBのオーディオインターフェイスとして使用するメリットはありますでしょうか?
1073OPXはPCとUSBで接続すると8in/2outのオーディオインターフェイスになります。
最近、リハスタみたいなところでドラム等を録音する方が増えてきていると思うので、自宅では2chしか使わないけど、リハスタではPCと1073OPXを持っていって、8chのマルチ録音を行って持って帰ってくるみたいな使い方はいいですよね。
持っていく機材が少なくて、接続もシンプルなので、そこまで気合を入れずに録音がスタートできるのもいいですよね。
MI
どんな方におすすめの製品でしょうか?
ライブレコーディングが多いエンジニアの方や生ドラムをリハスタで撮ることが多いエンジニア、ドラムじゃなくても劇盤とかマルチで録音する機会が多い方には便利なのではと思いますね。
2Uでかつ、8チャンネルが同じマイクプリアンプで揃っているというのがいいですよね。1Uのマイクプリアンプで揃えると8Uになってしまいますので搬入や設置場所の確保も苦労しますし。
また、8chのマイクプリアンプでこの値段もいいですよね。1chあたり7万円弱になるので、そう考えるとかなり安いですよね。
多分2台くらい使うと思うんですよ。8chじゃ足りないと思いますので。
オーディオサンプル 01
オーディオサンプル 02
オーディオサンプル 03
オーディオサンプル 04