2021.04.08
アレンジャーワークのみならず、楽曲制作、プロデュース、プレイヤー、自主レーベル[Studio Cubic Records]の運営とアーティストの育成にも力を注ぐ鈴木Daichi秀行さん。
地下から地上2階まで、まるまる1棟が「音楽の玉手箱」とも呼べる氏のホームスタジオ、Studio CubicにてAMS Neveのアウトボードを使用して頂いた。
数々のアウトボード 所持している氏に前回に引き続き、1073LBの活用方法をお伺いした。
メディア・インテグレーション(以下、MI)
前回は500シリーズのRMX-16についてお伺いしましたが、 今回はNeveを代表するマイクプリアンプの1073を500シリーズに対応させた1073LBになります。よろしくお願いします。
MI
お手持ちのNeveのマイクプリアンプは何をお持ちでしょうか?
ヴィンテージの1066を持っています。
他にも所謂1073系マイクプリも複数台持っています。
全部キャラクターが違うんですよね。
同じ1073系と謳っていても全然ベクトルが違う音がする物もあるので、それはそれで使い分けて使用しています。
MI
ヴィンテージのNeveって買えるんですか?
今はほとんど見ないですね。
コンディションが分からない1073を120万円くらいで見かけたことがあります。
どういう状態か分からないので、なかなか現実的じゃないですよね。
何より、一番のポイントはほとんどの人が新品の音を聞いてないということじゃないですかね。
当時の音を聞いてないので、コンディションの判断ができない人が多いと思います。
そうすると新品だとこうだったのかなとか想像の世界になりますよね。
MI
今、コンディションの良いヴィンテージのNeveがあったら買いますか?
ちょっと悩みますが、新しいのでいいんじゃないかなって思ってます。
作る音像が変わってきているし、ヴィンテージのNeveでないとダメというものでもないと思います。
ヴィンテージは音のキャラクター付けが濃いので、ヴィンテージの音がかっこいいという時もあるんですけど、逆に言うとその音になっちゃうっていう側面もあるので、それが果たしていいのかどうか判断に迷うこともあります。
MI
今回お使い頂いた1073LBはいかがでしたでしょうか。
声を張った時の倍音の出方は、ヴィンテージと違うと思いますが、Neveらしさがちゃんとあって、音が太くてすごく良かったですね。
今時だと使いやすい音だろうなと思います。
それこそ状態のわからないものを頑張って買うよりは、今買える現行のモデルを買った方がいいと思います。
MI
ヴィンテージに無い機能もあります。
フロントにコンボジャックがついていて、インピーダンスの切り替えと、トリムもついてます。
コンボジャックを使用してベースを録音したのですが、DIとしてもNeveのキャラクターが色付けされて、低域もしっかり出てて使いやすいです。
500シリーズ全般に言えるのですが、アウトプットレベルの調整が無いのが惜しいところですね。
インプットを突っ込み気味にしてアウトで抑えるっていうことができないのでそこがちょっと残念です。アウトプットフェーダーが欲しくなります。
そうするとさらに大胆なことができるんですけど(笑)
MI
近年、宅録ユーザーが増えていますが、安価なマイクプリアンプやオーディオインターフェイスのプリアンプを使う方が増えています。
あえて、Neveのマイクプリアンプを使う理由はなんでしょうか?
オーディオインターフェイスのマイクプリアンプは割と万能に使えるように設計されていると思うんですよね。
フラットで綺麗な音だけど音楽的な面白さみたいなのは感じられないので、楽器を演奏する人から見ると、どうしてもつまらない音だなって印象になってしまうんですよね。
楽器を演奏している人ほど、マイクプリアンプは変えたらその違いに感動すると思います。
マイクプリアンプを変えるだけで悩んでた事が解決してしまうケースが多いです。
マイクプリアンプを同じ曲で使い分けたりしてその曲の中で目立たせることもできますよ。
マイクプリアンプで作られたキャラクターは最後まで残ると思うんですよ。
プラグインと違って、コンプやEQはデジタルになってどんどん良くなると思うんですけど、マイクプリアンプだけは難しいと思います。
入力の部分っていうのは大事ですよね。
MI
どのような録音で使用しますか?
ボーカル、ベース、リズム隊ですかね。
僕はボーカルはNeveを好んで使います。
倍音が出るというか若干歪むんだと思うんですけど、その歪みが気持ちがいい歪み感でパンチが出る感じがします。
特に歌を歌ってる時のモニターが気持ちよく聞こえるので、パフォーマンスにも影響が出ますよね。やっぱり気持ちよく聞こえるといいテイクが録れますよ。