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時代が必要とする[レジェンド]の個性! AMS Neveがもたらす圧倒のアドバンテージ – 山田ノブマサさんインタビュー

2020.12.28

時代が必要とする[レジェンド]の個性!

AMS Neveがもたらす圧倒のアドバンテージ

誰もが人生のどこかでそのサウンドに触れてきたサウンド、1073マイクプリアンプを生み出したNeve。今もなお多くのエンジニア、ミュージシャンに愛され続け、最高のマイクプリアンプとして君臨しています。

AMS Neveはそのサウンドの伝統を守り、現在もなお当時の生産方法で、1073を始めとする多数の製品を送り出しています。

そんな1073そしてNeveについて、アナログ機器の造詣も深く、自身のスタジオでも長くヴィンテージ1073ユニットを所有、愛用されてきたプロデューサー・エンジニアの山田ノブマサ氏をお招きし、エンジニア視点によるNeveサウンド、ヴィンテージと現行の新旧1073の比較、ミュージシャンが導入すべきモデルなどについて語って頂きました。

本記事は2020年11月21日に配信されたMI FESTIVALのプログラム内容を編集・再掲したものです。


Neveだけが持つ、豊かな高次倍音

それではエンジニア・プロデューサーの山田ノブマサさんにお話を伺っていきたいと思います。山田さんは長くオリジナルのビンテージNeve 1073を所有されていらっしゃますが、初めてNeveサウンドを体験されたのはいつごろでしたか?

山田氏所有のヴィンテージ・オリジナルNeve 1073。ボリューム・トリムを追加するなど独自の改造も追加されている。

僕がエンジニアを始めた1980年代から90年代に、1073はすでに現行モデルではなくて、Neveサウンドという意味では、よく行くスタジオにあったV Seriesからですね。ビクターはSSLでしたが、そこで録音するとビクターの音と違うなぁと感じました。Neveコンソールには独特の非常に豊かな倍音感があって、サウンドにパンチがあるんですね。当時有名だったSSLやFocusriteといったコンソールが綺麗にまとめてくれるタイプだとしたら、Neveはロックなどの音楽にすごく向いている卓だな、という印象を持っていました。

僕の仕事自体がロックやポップスが多かったこともあって、Neveをよく使っていたんです。それで、気に入ったNEVEサウンドをいつでも使える様に、ヴィンテージの1073を自分で購入して、揃えていきました。

ロックやポップスに向いているサウンドとは、その倍音が大きく作用しているんでしょうか?

倍音だと思います。ビクタースタジオに在籍していた当時、メンテナンスの方とNeveやSSLのコンソールに1kHzの正弦波を入力して、出力がどうなるかチェックをしたことがあるんです。

Neveは高次倍音、特に3k、9kといった奇数の高次倍音の帯域が上がる傾向があって。 対して SSL はそれほど倍音が載ってこない。原音再生という意味ではそっちのが正しいのかもしれないけど。Neveはこうした倍音によってパンチだったり色気、音色的なものを付加してくれているんだと思いましたね。

実際に見てわかるくらいの違いがあったということですね。

高域と低域は本当にそっくり

今回1073DPX、2chプリアンプのモデルを試していただいたんですが、マイクプリ、EQなど各セクションごとの所感をいただけるでしょうか。

まずマイクプリアンプ部分、1292と呼ばれていると思うんですけど。ギターやボーカルでチェックしてみたけど、かなりヴィンテージと似ていますね。高域と低域はかなり似ています。唯一違うのが中域の部分で、ヴィンテージの方が張り出しがあるかなと思いました。Neveサウンドを印象付けるところではあるんですけれども、そこが少しすっきりしている。でもかなり近い印象でしたね。

新しいAMS Neveの1073は、以前にも何度か使わせて頂いていたんですけど、実際に同じソースを入力してオリジナルと比べてちゃんとチェックしたのは今回が初めてだったので、ここまで似ているんだな、というのが正直な感想です。

それは嬉しいです。EQについてはいかがですか?

EQの部分も高域と低域がすごく似ています。例えば1073の高域は周波数固定なんですけど、フルテンであげた時の感じ、ボーカルだったりアコースティックギターにかけてみたんですけども、ほぼ遜色がない。これはちょっとびっくりしましたね。ここまで似てるのかという。

自分の印象では、EQはヴィンテージと違うのかなって思っていたんですけど、意外でしたね。

そして唯一違うのが、やはりミッドの部分。3kHz付近がヴィンテージの方が上がり方が少し柔らかいというイメージですね。3kHzを上げているけど倍音で10kとか12kも若干上がってくる感じは、ヴィンテージの方が少し多めかなと。

先ほど仰られていた、高次倍音こそがヴィンテージならではのキャラクターなんですね。

そうです、でも本当に思っていた以上によく出来ているなと思います。

次にフィルターですが、これは結構違いました。全体的にカットする周波数がヴィンテージの方が緩やかな印象で。AMS Neveでは、例えば300hzならばっちりカットされて、余計な低域の成分が完全に除去される。ノブでいうと160Hzから300Hz付近でワンノッチなんですが、それくらい印象が違う。

ひょっとすると、僕の持ってるヴィンテージの方が経年変化でコンデンサーの特性が抜けたりして個体差が出てきているのかもしれません。新しいほうがすっきりカットされるので、フィルターという意味ではむしろ使い勝手は良いとも言えますね。

Low-Zの魅力、倍音の伸びにぞくっとするものがある

Low-Zインピーダンス設定などAMS Neveモデルの新機能はどうでしょう?

ヴィンテージにないLow-Z設定、この印象がとても良くてですね。Neumann U67で試したんですが、音の近さとか倍音の伸び方は、本当に新しいモデルの方がいいな、と思うぐらいでした。

僕がマイクで歌やアコギを録るとき、これはいい・いまいちだな、と判断する基準は、やっぱり音を聞いた瞬間に、ぞくっとするものを持ってるかどうかなんです。

Low-Zはインピーダンスを300Ωまで下げるんですけど、インピーダンスが下がることによってレベルも少し上がる。その音の近さがすごく魅力的で、本当に買ってもいいかなって思うくらいで。ヴィンテージもすごくいいんですけど、こういうサウンドが欲しい時に新しいNeve 1073はありだなと思いましたね。

ヴィンテージに忠実な部分と現代的な仕様が同居しているような印象ですね。

そう、新しい方は使い勝手も良くなっている。ヴィンテージの1073って写真でも分かるように、本当にシンプルです。マイクプリ部分とEQとフィルター、後は逆相スイッチがあるくらい。新しいモデルにはフロントに入力端子があって DIで直接ラインの楽器も入力できる。

フロント入力は、1台で色々やりたいミュージシャンの方には重要ですよね。僕らエンジニアと違って、この価格の機材を2台、3台と追加するのは難しいですし。制作中に裏に回って楽器の接続を変えるなんて、創作意欲が湧いている状態のフローを壊してしまう。この使い勝手の良さはとても良いと思います。

あと、新しいモデルではボリューム調整が追加されてますね。オリジナルの1073はアウトプット調節ができないので、僕は改造してボリュームアウトプットのトリムをつけてもらったんです。

ビンテージよりも新しいモデルを選ぶべき理由

当時はコンソールへの搭載が前提でしたが、1073N以降のモデルは、より広範な方やワークフローに向けてチューニングされています。

そうですね。ミュージシャンの方にも相談されるんです。スタジオで聞いたヴィンテージの1073のサウンドが大好きだから買ってみたいんです、って。でも僕はミュージシャンの方にヴィンテージはお勧めはしていないんですよ。

その理由はクラシックカーと同じで。自分のガレージを持って、部品も確保して、壊れたら直して。その知識と技術を持った人なら問題ないかもしれません。もう数十年経ってる機材ですから、やっぱりあちこち壊れやすくなっているし、特性も落ちてくる。ペアで揃えたユニットの左右の特性もずれてくる。それが日常茶飯時で起きるんです。いくらヴィンテージの音がいいからと言って、半年、一年とそれが維持できるかって言うと難しいですよね。

締め切りがあるレコーディング中に、故障したので換えのユニットを、と言っても、ビンテージだと2chで200万円近い。予備ペアを含めて400万円です。AMS Neveなら2chで実売で40万くらいでそのサウンドを導入できる。価格差や使い勝手を考えると、現行モデルをお勧めしますね。

デジタルアウトの追加など、現代の仕様に合わせてどんどん便利になっていくのは、制作をされるクリエイターの方にとってすごく良いことだと思います。

使い続けていくことを考えると、新しいモデルのメリット活きてくるということですね。

ただビンテージとすごく近いとはいえ、新しいモデルも40万円以上する。ポンと出せる金額ではないですが、やっぱりいいマイクといいプリアンプを揃えると、その音から制作意欲が湧いてきたり、インスパイアされたフレーズが出てきたりすると思うんです。

より安価なモデルも数多くあってそれぞれに良さがありますが、このクオリティのマイクプリを使ってみると、高額であることの理由がわかる。

Rock oN Companyさんなどでもチェックできると思いますので、機会があれば一度こうした高価格の機材を体験して頂くと、新しい世界が生まれますよ。

ご自宅での作業が増えている方も多くいらっしゃるでしょうから、独自のサウンド、個性のあるサウンドを持つことは、制作に必要となるかもしれませんね。

特に作業が煮詰まっている時、こうした機材に助けてもらえることが多いんです。ちょっと目先を変えてこっちを使ってみようと繋いだ瞬間、この感じだよね!って。別に高い機材だからというわけではなく、バリエーションの一つとしても検討してみてほしいですね。

先ほどの1073DPXのLow-Zスイッチ入れたサウンドはすごく魅力的だったので、これ買っちゃうかもしれない。チェックして良かった機材ってどうしても買ってしまって、どんどん増えてしまうんですよ(笑)

ぜひご検討ください!(笑)ヴィンテージを使われてきたからこそ、新旧Neveそれぞれの良さや違い、クオリティを改めて実感できたかと思います。本日はありがとうございました。

ありがとうございました。


レコーディング・エンジニア/ドラマー/プロデューサー

山田ノブマサ

青5歳からオルガン、エレクトーンの演奏を始め、その後ジャズ、ロックなどのバンドでドラムを演奏。
家電メーカーで半導体の設計技術者を経て1985年にビクター・スタジオに入社、1993年にフリーランスとなり、現在は湘南・茅ヶ崎にある自身のスタジオamp'box Recording studioを拠点に活動中。
ラブサイケデリコ、moumoon、ダイヤモンド☆ユカイなどの作品ではドラムも演奏している。
主な参加作品は、ラブサイケデリコ、福山雅治、ゴスペラーズ、OKAMOTO'S、moumoon、南佳孝、元ちとせ、SMAP、ダイヤモンド☆ユカイ、広瀬香美、一十三十一、近藤等則(Tp)、トニーニョ・オルタ、等の幅広い音楽のミキシング、レコーディング、マスタリングを担当

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