今まで外のスタジオなどでレコーディングをするときは、コンピュータを必ず持ち歩いていたスタッフH。コンピュータだけならさして重いものではありませんが、他にも荷物があります。なるべく荷物を減らしたいと思ったのですが.....
2015.05.13
スタッフHです。
先日、世界トップクラスのエンジニアであるボブ・クリアマウンテン(世界的なエンジニアであるだけでなく、彼がかつてYAMAHAのスピーカーNS-10Mを使い出した事をきっかけに、世界中のエンジニアがこぞって10Mを物差しとした、という逸話からも、同業者からの評価の高さもうかがえます)の「たった2本のマイクだけでドラムをレコーディングする方法」というムービーをアップしました。
冒頭から流れてくるドラムサウンドがまさにこの「2本だけ」ムービーなのですが、このドラムサウンドに不足があるでしょうか。輪郭、ドラムの鳴り、全体のバランス。もちろん優れたドラマーだからこそという前提もあり(ドラマーが注意すべきポイントもムービー中盤で触れられています)ますが、ドラムの魅力が全て収められているのではないかと思います。
私などドラムレコーディングの経験は数えるほどしかありませんが、それでもホリデーミュージシャンとしてこのムービーは目から鱗でした。「ドラム録音はたくさんのマイクが必要」なんて雑誌記事やウェブページを妄信していた部分もありましたので、なおさらです。さっそく週末はドラム録りにリハスタに行ってみよう!そんな事を考え始めました。
ビデオのボブ・クリアマウンテン氏がムービーで使用しているオーディオインターフェースは、ApogeeのDuet。なんとサンプリングレート192kHzにまで対応しているだけでなく、Apogeeの真骨頂ともいえる音楽的で正確なAD/DA。USB1本だけでつなげる簡単さ。多くのエンジニアが好んだだけでなく、デジタルレコーディングのあってはならない過大入力を防止してくれるSoft Clip機能。そして、多くのフォロワーを生んだそのデザイン(近年Duetと似たようなデザインの機器が増えましたが、このデザインはApogee Duetが初です)。
キックに良さそうなマイクは、リハスタでShureのSM57(これなら、貸してくれないリハスタもほぼないでしょう)でテストしてみたいなと思っています。
ビデオではトップマイクにビンテージのノイマンM49(入手かなり困難)を使っているボブ・クリアマウンテン氏ですが、コンデンサマイクやリボンマイクなら色々試してみようぜ、的なメッセージを感じたので、私の(私物)お気にいりマイク、Lauten AudioのClarion、または過去に「マイキングがうまくなる」という無料の電子書籍を作成したときに使用したEarthworksのSR20。この2本をスタジオで試して、設置されているドラムキットに合いそうな方を選ぶことにしました。
ビデオでボブ・クリアマウンテン氏が使っていたのはPro Tools。私も自宅ではPro ToolsまたはLogicを使用していますので、どちらでも対応可能。ApogeeのDuetは小さくて軽くていいのですが、マイク2本(+ケース)を持ち歩くとなると、なかなかの荷物です。車でもあればこんな事は気にならないのかもしれませんが、残念なことに私は車を持っていません。
ここに来てレコーダーのMacを持ち歩きたくないなぁという気分になりました。なんとか荷物は減らせないものか。
面倒くさがりの私、たかだか2本のマイク(+ケース)の重さに心が折れそうになっています。ダイナミックマイクなら裸でもよかったかもしれませんが、さすがにコンデンサマイクは裸で持ち歩きたくありません。しかしケース入りは大きくて重い。
なんかこう、コンピュータじゃない小さいレコーダーないものかなと自宅のなかで悪足掻き。ふと視線をずらすと、iPhoneがありました。ああ、Apogeeがレコーダーアプリを出していたような...しかし...。
iPhoneの日本上陸以来さまざまなレコーダーアプリを試してみましたが、上陸当初はメモ程度であったり、遊びの延長くらいのアプリが多かったように思います。OSの制限、容量の問題や転送速度の問題からか、圧縮フォーマットか、よくても16bit/44.1kHz。スペックがよければ良いわけではありませんが、ちょっと物足りません。
ところが先日突如リリースされたApogeeのMeta Recorderは、なんと24bit/96kHzのレコーディングが可能。つまり、コンピュータを持ち出してレコーディングすることとなんら変わりはないのです。さらにいえば、今回持ち出しているApogeeのDuetはMacだけでなく、iOSデバイス(iPhone/iPad/iPod touch)でも使えるのですから、MacにインストールしたDAWでレコーディングすることと、違いはないわけです。
Mac本体を持たなくてもいいという事になります。持ち物はマイクとApogee Duetだけ。iPhoneならポケットにも入りますし、大抵いつでも持っています。
先に書いた通り、キック用のShure SM57をスタジオでレンタル。トップはSR20とClarionを交互に試しました。ケーブルの長さの問題があり、iPhoneが手元に
置けなかったのが誤算ではありましたが、レコーディングそのものはクオリティの高い24bit/96kHzでできてしまったのです。
これで「iPhoneで録音って、クオリティ的になんだかなぁ」という頭の固かった私の不安はくずれました。
私たちメディア・インテグレーションの社員は、新しいものが大好き。発売されたばかりのApple Watchも「スタッフで順番に試してみて」という事で、社長が1つだけ持ってきてくれました。
あれ…そういえばこいつ、ApogeeのMeta Recorderのリモコンになるんだったっけ…という事を思い出したのです。そう!ドラムに座りながら、手元で録音のスタート、ストップ、マーカー打ちなどの作業ができてしまうわけです。
「あ、間違えた!」→「録音停止」→「もう一回REC」なんて作業のときも、いちいちスツールを立つ必要もありません。なぜなら腕にリモコンが巻かれているからです(運動がお好きな方なら、消費カロリーもApple Watchが計算してくれるかもしれません。私は絵に描いたようなメタボまっしぐら体型なので、ここはレポートできません)。
** 最後の余談ですが、上の写真はメタボの私・スタッフHではなく、随分昔に一緒にスタジオに入った痩せ型ドラマーさんの写真を使用したものです。
ということで、ボブ・クリアマウンテン+Apogee Duetの素晴らしいビデオを見たところから途方もないほどに話題は展開してしまいましたが、お気に入りのマイク2本とApogee Duet、そしてポケットにiPhoneを持って気軽にリハスタに向かうのはいかがでしょう。