2026年8月、東京・お茶の水のESP GROOVE LOUNGE TOKYOにて、Positive Gridが提案する次世代のサウンドメイク体験セミナー「Tone Lab」が開催されました。ゲストは、ギタリスト・プロデューサーとして幅広いフィールドで活躍する岡聡志氏。
ステージ上に用意されたのは、Positive Gridが誇るインテリジェント・ギターアンプREACTOR、そしてギタリストの間で爆発的な人気を誇るSparkシリーズ。岡氏のギターから放たれた圧倒的なトーンと迫真のデモ演奏に、会場は一気に引き込まれました。
テキスト指示だけで
「ブラウンサウンド」を瞬時に生成
イベント前半の主役はREACTOR。このギターアンプは専用の無料アプリ(iOS/Android対応)を介して、テキストでの指示や写真、演奏音源から理想のサウンドをAIが自動生成してくれるという画期的なシステム。
ステージでは実際にスマートフォンを操作して、テキスト入力による音色生成のデモンストレーションが行われました。お題は、エディ・ヴァン・ヘイレンの「ブラウンサウンド」を象徴する楽曲「Panama」のギターサウンド。指示を入力すると、REACTORのクラウドAIが音色を解析・生成し、わずか数十秒で3つの候補(Panama Crunch/Panama Flame/Punches Power)を提示してくれました。
岡氏:「Panama Flameが、特にエディに近いニュアンスのクランチトーンですね。弦の原音感がすごく似ている感じがしてジャリンと鳴る。アンプの手前にEQを入れて、2kHzあたりを少しだけ足してみてもいいかもしれませんね」
岡氏がその場でアプリ内のルーティングを操作し、アンプの前段にEQを挿入して2kHz付近をブースト。すると、ピッキングの食いつきが劇的に向上し、極上のブラウンクランチへと変貌を遂げました。この間、わずか数分。
岡氏:「セッションとかでパッと『こういう音を作りたい』となった時に、これが置いてあればめちゃくちゃ早いですよね」
岡氏が愛する「Dual Rectifier」
サウンドの再現
岡氏が普段愛用し、一時期は実機も所有していたというアンプがMesa/BoogieのDual Rectifier。岡氏が自分の楽曲用に、REACTORのAI機能を用いて作成したというトーンを紹介してくれました。
岡氏:「AIに『デュアルレクチファイア』と指示を出したら出てきた音です。何パターンか出てきた中からイメージに近いものを選んで、ほとんどいじることもなく出来上がりました。ものの5分くらいですね。僕は本番ごとにセットリストに合わせて音を作り込んでいくので、普段はものすごく時間がかかるんです。なので、AIのこのスピード感はギタリストとしては正直ちょっと悔しいですね(笑)」
直感的に音を追い込めるモディファイスイッチ
岡氏:「REACTORの天面には、サウンドの熱量や Mid-Lo の張り出し感をコントロールできる「Heat」スイッチと、サウンドの明るさ・暗さを調整できる「Push / Smooth」スイッチが搭載されています。EQを細かくいじることなく、もうワントーンだけ明るく、あるいは暗くしたい時には Push / Smooth スイッチがとても便利です。準備してきた音が会場の響きに合わないと感じた際の、ちょっとした調整にちょうどいいですね」
岡氏:「REACTORは最大100W、50Wモデルも用意されていますが、出力を1Wまで落とすことができます。1Wまで下げても音色が大きく損なわれず、日本の住宅環境でも無理なく鳴らせる音量になるのが嬉しいです。スピーカーからギターアンプらしい音をしっかり聴くことは、ギタリストにとって本当に大切だと思います。
ギター本体のボリュームを絞った時の反応もすごく自然です。歪んだまま音量だけが下がるのではなく、ナチュラルなクリーンサウンドへ変化して、ピッキングタッチにも素直に反応してくれますよ。」
岡聡志流
Sparkトーンメイキング
続いて、ギタリストの自宅練習アンプとして不動の地位を築いているSparkシリーズで演奏。岡氏がライブデモ曲用に作成した、実践的な3つのプリセットと、プロならではのイコライジングの極意が明かされました。
岡氏が構築した3つの実戦プリセット解説
極上クリーン
- セッティング
- 前段に「LA Comp」+アンプモデルは「JC(Jazz Chorus)系」。
- 現場の微調整
- 自宅で制作したプリセットを本番用のキャビネット・スピーカーで鳴らした際、低音がかなり出たため、アンプ側の「BASS」を思い切ってカット。
岡氏:「後段のキャビネットの影響でローが出すぎていたので、1番低いところまで下げました。LA Compのコンプ感がとても自然で、変な感じがしなくてすごく優秀です」
サステイン豊かなクランチリード
- セッティング
- 前段に「TS系(緑色の有名なオーバードライブ)」+アンプモデルは「JC系」。
- お気に入り空間系
- Spark内蔵リバーブの「Cool Natural」をチョイス。
岡氏:「そんなに歪んでいるわけではないのですが、LA CompとTS系を組み合わせることで、音の芯をパキッと出しながら豊かなサステインを稼いでいます。Cool Naturalというリバーブの質感がすごく好きで、これをかけています」
アンサンブルで抜けるハイゲイン・リード
- セッティング
- Dual Rectifier系アンプモデル+後段に5バンドEQ。
- プロのイコライジング術
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- ギター用EQではなく、ベース用EQをあえて選択。
- ピッキングのタッチが耳に痛くなりがちな「4.5kHz」付近を大きくカット。
- 逆に、空気感や音の抜けを補うために、超高域の「10kHz」付近をブースト。
岡氏:「デフォルトのままだとハイミッド(4.5kHzあたり)がかなり強調されて、ピッキングタッチが立ちすぎていたんです。そこをあえてEQで大きく削ることで、オケに綺麗に馴染ませています。逆に10kHzあたりは元々あまり出ていなかったので、思い切ってブーストしました。ガリガリしたdirtyなプレイがしたいバッキングならハイミッドを出した方がかっこいいですが、リードプレイを美しく聴かせるならこのセッティングがおすすめです」
アンプを通さない
「LAクリーン」の作り方
さらに、岡氏が普段からよく行うという、アンプシミュレーターならではの技もご紹介頂きました。マイケル・ランドウのようなパキパキとした澄んだクリーンサウンドを作る手法です。
岡氏:「パキッとしたクリーン、いわゆるミキサー直結のエレアコのようなサウンドを作りたいときは、アンプモデルをバイパスにして音を作ることがよくあります。インプットからダイレクトにコンプレッサー、EQ、コーラスを繋いで、最後にリバーブやディレイをかける。アンプのフィルターを通さないことで、非常にレンジの広い、クリスタルなクリーンが作れます」
現在のSparkの仕様上、アンプモデルを完全にオフにすると空間系エフェクトの配置に一部制約が出るものの、この「アンプを通さないアプローチ」は多くのギタリストにとって有用なTIPSとなりました。
自宅練習を加速させる
Spark NEO
セミナーではさらに、進化したSparkファミリーのニューギア「Spark NEO」も登場。ワイヤレスヘッドフォンで、いつでもどこでもトランスミッターをギターに挿すだけで、超低遅延かつ高品位なSparkサウンドが耳元に広がります。
岡氏:「ギターアンプをオーディオインターフェース経由でヘッドフォンで聴いたときと、スピーカーから出したときのギャップって結構大きいと思うんですけど、これはそのギャップが非常に少ないです。現場で作る音に、最初からすごく近い感覚で音作りができます。手軽だし、家で練習するにはすごくいいですね」
Q&Aセッション
セミナー後半にはQ&Aコーナーが設けられました。
Q1.ノイズゲートをかけた状態で、サステインやビブラートを違和感なく綺麗に伸ばすコツはありますか?
岡氏:「実は、僕は普段あまりノイズゲートをガッツリかけないんです。REACTORやSparkでハイゲインリードを弾くときも、ゲートは極力薄くセッティングしています。完全に音を止めた(ミュートした)瞬間にだけゲートが閉じるようにスレッショルドを設定して、サステインをしている状態では絶対に閉じないようにしています。まずはノイズゲートをできる限り外す(あるいは極限まで薄くする)ところから試してみてください。あとは物理的に、左手をしっかり指板に押し当ててビブラートをかけ続け、弦を鳴らし続ける技術も大切ですね」
Q2.岡さんのプレイスタイルに欠かせない、トレモロアームのバネやフローティングのこだわりを教えてください。
岡氏:「スプリングは2本、もしくは3本が好きですね。バネの数が多いとアーミングしたときのタッチが硬くなってしまってあまり好みではないんです。そして一番のポイントは、アームを完全にブラブラな状態にしておくこと。アームを離した時に、重力で自然に下に垂れ下がってくれる状態がベストです。アーミングするときは、下からすくい上げるように操作します。ネジをガチガチに締めて固定するスタイルだとカタカタと遊びが出てしまうことがあるので、カタカタ言わないギリギリの範囲でブラブラにしています」
A NEW ERA OF GUITAR SOUND
ギターサウンドメイクの
新時代を確信
岡氏のプロならではの技術論に、客席のギタリストたちも終始頷きメモを取る姿が見られました。イベントの締めくくりとして、パッチを足元で切り替えながら、岡氏の超絶クオリティのオリジナル楽曲デモ演奏が披露されると、会場のボルテージは最高潮に。ギターサウンドメイクの新時代を体験できる「Tone Lab」が、惜しみない拍手のなか幕を閉じました。
