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私たちは、なぜ音楽を作るのか。MNTRA / Brian D’Oliveira氏インタビュー「音は生命と生きることの結果」

2026.04.03

AIによる音楽生成テクノロジーが急速に進化しています。たしかに効率だけを考えればAIは圧倒的です。しかし、ふと疑問が浮かびませんか?

私たちは、なぜ音楽を作るのだろう。

DAWを立ち上げ、音を選び、試行錯誤を重ねる時間。フレーズのほんのわずかな違いを探す瞬間。効率では説明できない創作の喜び。人間だからこそ感じられる音の世界。完成した楽曲だけではない価値。創作過程そのものの楽しさ。

本記事では「人が音楽を作る理由」のヒントを探すため、従来の製品とは一線を画した世界観を提示するMNTRA社の創業者・最高経営責任者のBrian D’Oliveira(ブライアン・ドオリヴェイラ)氏にインタビュー。

Brian D’Oliveira氏

MNTRA製品と、そのテクノロジーに込められた哲学、音とは何か、創作とは何か、人間が音を作る意味とは何か。率直に伺ってみました。

MNTRAについて

カナダ・モントリオールを拠点とするサウンドデザインスタジオ MNTRA のコンセプトは Animistic Sound Design(※Animisticとは全てのものに魂が宿るという思想)。映画やゲームサウンド制作を手がける彼らは、独自の音源エンジン「MNDALA」を開発し、音に生命を見出す思想と、文化や歴史を内包する音の世界で、AI時代の音楽制作に一石を投じているデベロッパーです。

質問目次(クリックでジャンプ)

Q:MNTRAというブランド名の由来を教えてください。

Q:MNTRA独自の 32bit / 384kHzサンプリングの利点について教えてください。

Q:32bit / 384kHzサンプリング収録する際はどのような点に注意していますか?

Q:サウンドデザインエンジン「MNDALA」が開発された経緯を教えてください。

Q:MNDALA搭載の「3 Axis Performance Matrix」はゲームオーディオから着想を得ていると聞きました。

Q:MNDALAという名前から、東洋的・仏教的な世界観を感じます。

Q:MNTRAは独自の世界観を持っていますね。

Q:MNTRA製品をどんなクリエイターに使ってほしいですか?

Q:AIと音楽制作の関係をどのように見ていますか?

Q:音楽を作ることの価値や意味について、どのように考えていますか?

Q:Animistic Sound Designを提唱されるなかで、音と精神性の関係についてどのように捉えていますか?

Q:ユーザーインターフェースには幾何学的なデザインが多く用いられていますね。

Q:ヒーリング・ミュージックなどの音楽制作において、MNTRA製品の活用方法やアドバイスをお願いします。

Q:サウンドデザインにおいて最も影響を受けた音楽家や思想家は誰ですか?

Q:日本の楽器や自然音をテーマにしたライブラリを制作する可能性はありますか?

Q:今後、音楽制作はどのように進化し、MNTRAはどう進化していくのでしょうか?

Q:MNTRAにとって「音」とは何ですか?

Q:最後に、日本のDTMユーザーやサウンドデザイナーに向けてメッセージをお願いします。

 

Q:MNTRAというブランド名の由来を教えてください。

Brian D’Oliveira氏(以下敬称略):MNTRAは、意図を持って繰り返される音を意味するマントラ(mantra)という言葉に由来しています。私の家族はインドとラテンアメリカにルーツを持っているため、仏教哲学と私自身の文化的背景を融合させたものです。

母音を抜いたのは、少し変化をつけて独自の視覚的アイデンティティを与えるためです。しかし重要なのはその語源となる意味、「音とは意図的なものである」という点です。MNTRAで製作するすべての楽器は、音にはそれを生み出した者の歴史と意図が宿っているという同じ信念から出発しています。

私たちは単にオーディオをサンプリングしているのではなく、そこに到達する前からすでに意味を持っていた「何か」を捉えているのです。

 

Q:MNTRA独自の 32bit / 384kHzサンプリングの利点について教えてください。

Brian D’Oliveira:384kHzで録音する場合、人間の耳に聞こえる範囲をはるかに超える情報、つまり超音波倍音、空間反射、楽器の周囲にある空気の物理的な挙動などを捉えています。そのため、音を4オクターブ下げてもデジタル的な粗さやアーティファクトが発生せず、オーガニックな響きを保つことができます。サウンドデザインにおいてこれは革新的です。

鐘のサンプルも、それだけの解像度があればサブベースに使用したり、テクスチャ、アトモスフェアに満ちた一つの世界全体へと変貌させることができます。私たちのお気に入りの一つは、Atma(アトマ)に含まれる火山岩のサンプルマップです。ピッチを下げた時の音は非常に興味深いものになります。

そして超音波倍音や空間情報は、単にピッチを下げる際のメリットをはるかに超えるものです。録音する楽器の多く、特に金管楽器、石、金属、共鳴体、その他のアコースティック・ソースは、従来の可聴範囲をはるかに超えるエネルギーを生成します。したがって「出来事のすべて」をキャプチャすることは重要であり、それは抽象的な概念ではなく、楽器の物理的現実の一部なのです。

フル・ハイレゾリューション・チェーンを通して192kHzや384kHzで作業すると、聞こえてくる音はオリジナルの体験に近く、より開放的で、広がりがあり、没入感があり、色付けが少ないと感じられます。その一部はマイクやコンバーター、モニタリング・チェーンによるものですが、それこそがポイントです。私たちは、そうした繊細さが失われないレベルでシステム全体を扱っているのです。そして、私たちの再生システムはその範囲とディテールの多くを再現するため、違いを聴くだけでなく、音の広がりや混ざり合いの中に違いを「感じる」ことができるのです。

この手法では、楽器の生命感や周囲の空間をより多く保持することができるので、従来の可聴範囲を超えた情報が、最終的な音の表現の質に影響を与えると確信しています。たとえその情報が個別の周波数として知覚されなくても、音の呼吸、空間の再現、そして音像全体のまとまり方に影響を与えます。私たちにとって、それは単に物理的な出来事の「真実」により近いものなのです。

 

Q:32bit / 384kHzサンプリング収録する際はどのような点に注意していますか?

Brian D’Oliveira:384kHz収録への配慮は、録音ボタンを押す前から始まります。適切な空間を選び、その特定の楽器がどのように共鳴するかを理解し、直接音だけでなく、それが存在する環境まで捉えられるようにマイクを配置します。部屋を、空気を、そしてその瞬間を録音しているのです。

その解像度では周波数レンジが拡大されるため、最大の技術的課題はノイズです。シグナルチェーンは完璧でなければなりません。しかし、芸術的な課題はより深く、楽器を生き物として理解する必要があります。チベットのホルンは単に周波数を生成するだけでなく、部屋の空気を特定の方法で動かします。私たちの仕事は単なる波形録音ではなく、その物理的な現象すべてをキャプチャすることです。

コロンビアのバランキージャで行った「El Jaguar」のレコーディング・セッションでのエピソードがあります。60年前の伝統的なスピーカーから聞こえるもの、その共鳴、時を経て刻まれた物語を超音波で記録するためにマイク・アレンジを設定した瞬間がありました。さらに、それはロケーション・レコーディングであったため、最終的に楽器の一部となった鳥の声までキャプチャしました。ある意味で、これは真に生きている楽器と呼べるもので、各サンプルの中に細部まで宿る生きた存在感を聴き、感じることができるのです。

 

Q:サウンドデザインエンジン「MNDALA」が開発された経緯を教えてください。

Brian D’Oliveira:私たちが映画音楽制作を行っていた際、既存のツールでは私たちが録音したものを処理しきれないという問題に直面し続けました。384kHzで音をキャプチャすると、膨大な量のデータとディテールを扱うことになり、標準的なサンプラーではそれに対応できなかったのです。従来のサンプリングレートでは、音はしばしば形作られすぎたり制約を感じたり、音を特別なものにしている要素が平坦化されたように感じられます。

そのため、録音の全解像度を保持し、演奏者がリアルタイムで扱える独自のエンジンをゼロから構築しなければなりませんでした。MNDALAの内部では、32bit/384kHzで録音されたフル解像度のまま処理が行われます。プラグインからの出力時にDAWの設定に合わせてリサンプリングされますので、セッションが48kHzであっても超高解像度録音の恩恵を受けることができます。内蔵エフェクトの中にはサンプリングレートに依存するものもあり、それが音の振る舞いにさらなる層を加えます。

また、サンプラー自体の中でも巧妙なリサンプリングが行われています。録音に含まれる帯域幅を最大限に活用するために、動的にリサンプリングを行うシステムを構築しました。これが、標準的なサンプラー・アーキテクチャでは得られない、私たちの楽器が持つ深みとレスポンスの良さを生み出しているのです。

最大の挑戦は、これほど複雑なものを直感的に使えるようにすることで、エンジン内部では高度な処理が行われていますが演奏者には自然に反応するインターフェースとして扱うことができます。

最初のMNDALAは2021年に開発され、さらに進化させたいと考えてMNDALA 2を開発。MNDALA 2は表現力豊かなモジュレーションと、特別に構築された深いサウンド・スカルプティング機能を備えた次世代サンプラーで、アップデートのたびに新しい機能が追加されています。例えばAnimodシステム(アサインできるモジュレーション・システム)や、その場で独自のスケールを作成できるチューニング・システムなどが追加され、世界で最も美しいチューニングを集めたカタログも含まれています。

 

Q:MNDALA搭載の「3 Axis Performance Matrix」はゲームオーディオから着想を得ていると聞きました。

Brian D’Oliveira:ゲーム・オーディオでは、音はプレイヤーの行動にリアルタイムに反応しなければなりません。それは線形ではなく、リアクティブなものです。私たちは、音楽制作も同じように機能すべきではないかと考えました。

「3 Axis Performance Matrix」機能を使えば、シンプルかつ直感的な動きで複数のパラメーターを同時にコントロールできます。ノブを一つずつ微調整する代わりに、テーブル内のパラメーター変化を関連付けることで、音のキャラクター全体をリアルタイムで形成していくのです。これにより、作曲は静的なプロセスからパフォーマンスへと変化します。単に音符をプログラミングするのではなく、音の質感、空間、そして感情をすべて一度に演奏することができるのです。

 

Q:MNDALAという名前から、東洋的・仏教的な世界観を感じます。

Brian D’Oliveira:MNDALAという名前は、完全性を象徴する幾何学形態である曼荼羅(マンダラ)を参照しています。その完全性(全体性)という考え方はエンジンの仕組み全体に貫かれており、すべてが繋がっているのです。ひとつのパラメーターを動かせば、それが音場全体に影響を与えます。

私たちは仏教哲学の権威を自称するつもりはありませんが、「すべては相互に関連している」「忍耐と注意を払うことで深い層が明らかになる」という原則は、私たちが自分たちの楽器に持たせたい感覚と深く共鳴しました。まさにそのように演奏されるよう設計されています。深く掘り下げれば掘り下げるほど、より多くの発見があるのです。

 

Q:MNTRAは独自の世界観を持っていますね。

Atma

Brian D’Oliveira:私たちの目的は、演奏不可能なものを演奏可能にすることです。本来キーボードで演奏されるようには設計されていない音を取り込み、その本質的なリアリティを損なうことなく、完全に表現力豊かな楽器へと変貌させることです。

技術的な使命は、現実を超えた体験を提供すること。そしてより深い使命は、創造性を拡張することにあります。

MNTRA製品には、いまも生き続ける伝統の中から生まれた音があります。それらを忠実に記録し、本来なら出会うことのなかったであろうクリエイターたちがアクセスできるようにするため、伝統を持つミュージシャンたちと直接協力しています。

また、スタジオで録音する楽器もあり、これらは常に特定のコンセプトやアイデアを中心に展開します。例えば Vespera(ヴェスペラ)はアコースティック・シンセシスにインスパイアされており、合成された波形を共鳴体に転送することで、現実世界で新しい音を生成しています。

エフェクトについても、私たちが必要とするツールを独自の視点で捉えています。BOREALIS(ボレアリス)はコンボリューションとアルゴリズムの両方を備えた14種類のアルゴリズムを持つリバーブですが、信号に対してレスポンシブであり、それが非常に高い表現力とパフォーマンス性を生んでいます。

BRUITAGE(ブリュイタージュ)は、ソースとしての「ノイズ」に対する私たちの愛から生まれたもので、搭載されているすべてのエフェクトは、フランス語でノイズを意味するbruit(ブリュイ)、つまり歪みやグリッチで構成されています。

 

Q:MNTRA製品をどんなクリエイターに使ってほしいですか?

Brian D’Oliveira:MNTRAの中心的なユーザーは、他のライブラリには存在しない音を必要としている映画やテレビの作曲家、サウンドデザイナー、プロデューサーたちです。しかし正直なところ、実験的なエレクトロニック・プロデューサー、サウンド・ヒーラー、ゲーム・オーディオ・デザイナー、さらには音を扱うビジュアル・アーティストなど、私たちが予想していなかった興味深いユーザーもいます。

もしあなたが、「ある音を聞いた時に、それがどこから来たのか、どう作られたのかを知りたい」「それを新しい場所へと押し進めたら何が起こるのかを知りたい」と思うような人なら、これらの楽器はあなたのためのものです。

ミキシング・エンジニアの方や、自身の音楽をミックスする方にとっても、私たちのエフェクトはクリエイティブで反応が良く、使いやすいため、音楽に生命を吹き込むのに最適です。私たちはそれらを美しく、ユニークなものとして作り上げました。

 

Q:AIと音楽制作の関係をどのように見ていますか?

Brian D’Oliveira:AIは素晴らしいツールであり、今後もさらに有能になっていくでしょう。私たちはそれを恐れてはいません。

しかし、明確にすべき区別があります。AIは音楽を生成することはできますが、人里離れた村に行き、熟練の音楽家と一緒に座り、千年前と同じように演奏されている楽器を録音することはできません。AIは火山岩の共鳴を捉えることはできません。私たちが行っていることは、現実の空間で、本物の楽器を使い、本物の手によって演奏される、物理的な世界から始まります。

AIは既存のものを再結合することに長けていますが、私たちはまだキャプチャされていないものをキャプチャすることに集中しています。これらは補完し合うものであり、競合するものではありません。私たちは創造することを望んでいます。だからこそ、これからも創造し続けます。

 

Q:音楽を作ることの価値や意味について、どのように考えていますか?

Brian D’Oliveira:何もないところから一音一音、質感にこだわりながら音楽を構築していく過程で起こる出来事には、近道は存在しません。それは単なる結果の問題ではなく、そのプロセスがクリエイターである「あなた」に何をもたらすかが重要なのです。決断を下し、耳を傾け、反応する。あなたと音との間のそのやり取りの中にこそ、真の創造的作業が存在します。AIは完成品を与えることはできますが、その「体験」を与えることはできません。

私たちは、そうした忍耐が報われるように楽器を設計しました。MNTRAの楽器は、深く入り込めば入り込むほど、より多くを返してくれます。それは意図的なもので、私たちは制作のプロセスが、その結果と同じくらい意味のあるものに感じてほしいと考えています。

作曲者は音から影響を受け、音は作曲者から影響を受けます。自分自身のオスティナートやパッド、メロディの複数のレイヤーや組み合わせを理解することはユニークな体験であり、それはクリエイターの想像力の中でのみ起こります。音楽制作は喜びです。AIが生成する音楽に関わらず、私たちは書き続け、それを通して表現し続けるでしょう。それこそが価値であり、音楽を作ろうとする意志なのです。

 

Q:Animistic Sound Designを提唱されるなかで、音と精神性の関係についてどのように捉えていますか?

Brian D’Oliveira:アニミズムとは、石、川、ひと吹きの風など、あらゆるものに魂が宿っているという信念です。アニミスティック・サウンドデザインと言うとき、私たちはすべての音源に対して、それ自体が独自の生命、独自の声を持っているかのようにアプローチすることを意味しています。

私たちは楽器に音を押し付けるのではなく、楽器がすでに語りたがっていることに耳を傾け、それをより鮮明に語らせるためのテクノロジーを構築します。それが精神的なものか科学的なものかは視点によりますが、私たちはそのどちらも受け入れています。

私たちが経験から知っているのは、何世紀も前の楽器を、元の環境で高解像度で録音すると、単なる周波数分析だけでは説明できない何かが伝わってくるということです。それを魂と呼ぶか、共鳴と呼ぶか、あるいは蓄積された意図と呼ぶか。それは音の中に存在しており、私たちの仕事はそれを保存することです。

精神性とは結局のところ、内面から、そして外の世界の観察、意味付け、感謝、そして賞賛から生まれるものであり、私たちは楽器を作る際にこれらすべてを考慮していると言えます。楽器を作ること、つまりルシエ(楽器職人)であることも、音楽制作のもう一つの側面なのです。

 

Q:ユーザーインターフェースには幾何学的なデザインが多く用いられていますね。

Naada

Brian D’Oliveira:幾何学と音楽は、異なる形で表現された同じ言語です。曼荼羅は調和と均衡を視覚的に表現したものであり、それは音楽のインターバル(音程)やリズムを支配する原理と同じです。

私たちのインターフェースを見ると、幾何学的なパターンが機能的であることがわかります。それらは音のパラメーター間の関係を可視化しています。あなたが音を演奏し、操作するにつれて幾何学模様が反応し、変化します。視覚的なパターンと音のパターンの間のそのつながりは、人間が何千年も前から直感的に理解してきたものです。私たちはそれを明示的にするツールを構築しているだけであり、それらはあらゆるデザインの出発点として楽しんでいます。

Ha Noi

アニメーションがより具象的なインターフェースもあれば、抽象的なものもあります。例えば Ha Noi(ハノイ)を例に挙げると、そのパフォーマンス・ビューはドンソン文化の銅鼓(巨大な装飾が施されたブロンズの太鼓)にインスパイアされており、ハノイ旧市街の中央にある湖の物語を伝えています。イラストは銅鼓のスタイルを取り入れた幾何学的なアレンジで、物語の詳細がその周囲に描かれています。

 

Q:ヒーリング・ミュージックなどの音楽制作において、MNTRA製品の活用方法やアドバイスをお願いします。

Brian D’Oliveira:私のアドバイスはシンプルです。素材(ソース)を信じてください。私たちがサンプリングした楽器の多くは、録音される前から癒しや瞑想の文脈で使用されてきました。その意図はすでに音の中に宿っています。無理に作り出す必要はありません。「Naada」「Nagual」「Atma」「Pyramids」といった楽器は、特にこうした作業に適しています。

まずは単音から始め、速度を落とし、レイヤーを重ねたり処理を加えたりする前に、その音が何をしているかに耳を傾けて、音に導かせてください。

私がこれまで聴いた中で最もパワフルな瞑想音楽は、しばしば最もミニマルなものでした。本物の深みと存在感を持つひとつの持続音は、100層のアンビエント・パッドよりも多くのことを成し遂げることができます。

 

Q:サウンドデザインにおいて最も影響を受けた音楽家や思想家は誰ですか?

Brian D’Oliveira氏

Brian D’Oliveira:私に多大な影響を与えた人々の多くは、全く異なる世界の出身ですが、彼らに共通しているのは、私自身の「音」そのものの捉え方を変えてくれたということです。

エレクトロニック・ミュージックの分野では、モートン・サボトニックとロバート・ブックラが非常に重要でした。彼らから学んだことは、単なる音楽としてだけでなく、シンセシス(合成)がいかに「可能性の哲学」になり得るかという点です。特にブックラには深く影響を受けました。彼はエンジニアのように考えながらも、常に新しい音楽表現を切り開くためにその思考を捧げていました。その考え方は、作曲家としてだけでなく、楽器やエフェクトをデザインする際の思考プロセスにも深く根付いています。

インド古典音楽も、私の人生で最も深い影響を与えたものの一つです。特に師匠であるサンギータ・シャンカル博士、そしてニロイとチンタン・ウパディヤイの両氏にはお世話になりました。中でもドゥルパド(Dhrupad)という古代の音楽伝統は、私に計り知れない影響を与えました。その伝統の何に心を動かされるかというと、それは単に音楽を演奏するのではなく、空間に入り込み、ムードを広げ、色彩や響き、そして感情の深みを時間をかけて明らかにしていくという点です。私にとって、それはすでにサウンドデザインそのものに近いものです。音風景をどう作るか、そして、いかに生き生きとして、息づかいが聞こえるような表現力豊かな楽器を構築できるかという考え方は、ここから形作られました。

また、先スペイン期音楽の大家であり、親友でもあるラミロ・ラミレスからも大きな影響を受けました。彼を通じて、多くの先スペイン期の伝統において、音とはまず第一に娯楽として扱われるのではなく、神聖なものや意味、あるいは変性意識状態へと至るための導管であり、架け橋であることを深く理解しました。これは私のサウンドデザインへのアプローチと強く共鳴しています。私にとって音とは、視覚や日常の言葉では表現しがたい感情、存在の状態、そして内面的な経験を具現化するための、最も強力な手段の一つなのです。

ハリー・パーチも私に深い足跡を残しました。なぜなら彼は、「もし新しい音楽の世界を発見したいのなら、その世界が存在するために必要な楽器、チューニング、そして言語そのものを文字通り自分自身で作り上げなければならないこともある」ということを思い出させてくれるからです。このアイデアはずっと私の心に残り続けています。

そして、インタラクティブの世界では、ロブ・ブリジットの影響が非常に大きかったです。彼と一緒に『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』に取り組んでいた時期に、私たちはミュージカル・サウンドデザインという概念を確固たるものにしました。ラミロから多くのことを学んでいた数年間、ロブと私は常に実験を繰り返し、このアイデアをさらに推し進めていきました。それを『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』だけでなく、並行して進めていた『バイオハザード7 レジデント イービル』や『バイオハザード ヴィレッジ』にも応用したのです。これらのプロジェクトでは、「片方で音楽を作り、もう片方でサウンドデザインを作る」という区別はなくなりました。私たちは、ゲームエンジンの中で生き、呼吸し、反応する、いわばインタラクティブな音の生命体としての小さな音楽的実体を作り上げていたのです。

簡潔に言えば、これらの影響はエレクトロニック・ミュージック、シンセシス、インド古典音楽、先スペイン期の伝統、実験的なチューニング、パーカッション、そしてインタラクティブ・オーディオから来ています。しかし、それらすべてが私に与えてくれたのは、音を単なる「静的な素材」としてではなく、魂や意味、そして存在感を運ぶことのできる「意志を持った、生き生きとしたもの」として捉える思考法なのです。

 

Q:日本の楽器や自然音をテーマにしたライブラリを制作する可能性はありますか?

Brian D’Oliveira:日本の音楽伝統は素晴らしいものであり、私たちはこれまで多くの日本のビデオゲーム・クリエイターやクライアントと仕事をしてきました。ぜひ実現したいと思っており、会議や会話の中でも度々上がってくるアイデアです。課題は、常にそうですが「正しく行うこと」です。私たちがこれまでに提供してきたものと同じだけの注意と敬意を持って、熟練した奏者と共に適切な空間でフル解像度で録音できない限り、日本の楽器ライブラリをリリースすることはありません。もしこのインタビューが、日本で適切な人々と繋がる助けになれば、それは素晴らしいことです!

 

Q:今後、音楽制作はどのように進化し、MNTRAはどう進化していくのでしょうか?

Brian D’Oliveira:音楽制作はよりアクセシブルになると同時に、よりパワフルになっていくでしょう。それは良いことです。より多くの人が音楽を作るということは、真にユニークなサウンドへの需要が高まることを意味します。それこそが私たちの居場所です。

MNTRAにとっての方向性は「広く」ではなく「深く」です。あらゆるジャンルやあらゆる楽器カテゴリーをカバーしようとは考えていません。超高解像度サンプリング、誰もアクセスできない音源、そして演奏者がそれらの音とリアルタイムで対話できるエンジンという、私たちの独自性をさらに深めていくつもりです。

また、エフェクトの分野にも拡大し、BOREALIS と BRUITAGE をリリースしました。近々さらなる製品も登場予定です!これにより、ミキシングやサウンドデザインといった音楽のポストプロダクションに焦点を当てている他のプロフェッショナルたちとも繋がることができるようになりました。

また、初の空間オーディオ・プラグインである Living Sky(リビング・スカイ)のリリースも発表しました。これはMNTRAとOuter Echoのコラボレーションとして構築され、GPU Audioを搭載しています。Living Skyはコンボリューションベースの空間リバーブであり、GPUを活用することで、空間を真に再現するために処理できるインパルス・レスポンスの質と量の両面で、新たな高みに到達することができました。すでにNAMM、Game Sound Con、AESで一部を披露しており、リリースは間近です。この空間オーディオの力作を皆さんに体験していただくのが待ちきれません!

詳細は www.mntra.io/living-sky でご覧いただけます。

 

Q:MNTRAにとって「音」とは何ですか?

Brian D’Oliveira:音とは物理的な出来事の記録です。それは、太鼓を叩く手、石を通り抜ける風、千年前から繰り返されてきた音節を形作る声など、何かが動かした「空気」です 。あらゆる音には、それが生み出された時の条件が刻まれています。

私たちの仕事は、それを可能な限り完全にキャプチャし、その音の起源を失うことなく新しい形に作り変えるためのツールをミュージシャンに提供することです。

私たちにとって、音は決して単なる「データ」ではありません。それは世界で何かが起こったという「証拠」なのです。それは、さらなるものを構築するための創造的な物質であり、生命と生きることの結果です。つまり、ここでもアニミズムという概念に戻ってくるのです。

 

Q:最後に、日本のDTMユーザーやサウンドデザイナーに向けてメッセージをお願いします。

Brian D’Oliveira:日本のクリエイターの皆さんへ。皆さんは世界でも有数の、極めて深い職人技の伝統を持つ国の方々です。皆さんが作品に注ぐそのこだわりは、私たちも共有しているものです。

MNTRAでは、最もパワフルな音楽とは、忍耐、注意深さ、そして音源との真のつながりから生まれるものだと信じています。あらゆる物事が加速し、自動化が進む現代において、あえて「意図」を持って自らの手で何かを作り上げることの価値は、高まるばかりです。

私たちは、自分の音がどこからやってきて、どこへ向かおうとしているのかを大切にするクリエイターのために、これらの楽器を製作しました。私たちのツールが、あなたにしか作ることのできない何かを生み出すインスピレーションとなることを願っています。

皆さんにこうしてお届けできることを光栄に思います。皆さんが私たちのツールを使ってどのようなものを創り出すのか、その音を聴ける日をいつも楽しみにしています。

次にあなたがDAWを立ち上げ、最初の一音を鳴らすとき。その音に宿る歴史と、あなた自身の新しい「意図」が混ざり合い、世界にたった一つの響きが生まれます。効率の先にある、人間にしか到達できない表現の深淵へ。MNTRAの楽器は創作という体験を通して、あなたの手元で呼吸を始めることでしょう。

MNTRAのプリセットサウンドを収めた動画を制作しましたので、ぜひMNTRAの世界に触れてみてください。

Interview, Article & Demo Video by IBE

MNTRAプリセットサウンド動画

YouTubeでご試聴いただくと、チャプターリストを使用して、プリセットカテゴリーごとにお楽しみ頂けます。




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