2026.03.30
シニアソフトウェアエンジニアのヨナス・オーバーグ氏は、OP-Z、OP-1 field、そしてOP-XYの開発を主導した人物です。本稿では彼にインタビューを行い、ビジョンや開発過程での課題、そしてOP-XYのユニークな機能に込められた意図について話を伺いました。
ヨナスは2013年にteenage engineeringへ入社しました。
もともとのアイデアは、OP-1の“兄弟機”をつくることでした。ただし、OP-1がテープベースのワークフローであるのに対し、OP-XYはシーケンサーベースのワークフローを軸に設計しています。これらは楽曲制作のアプローチとして本質的に異なるものです。
すでにOP-Zでその方向性は探求していたため、OP-Zの思想をさらに発展させ、fieldシリーズに適したフォームファクターへ落とし込むことが大きな目標でした。
制作中は、あまり既存製品を参照しすぎないようにしています。明確な参照点があると、どうしてもその枠に縛られてしまうからです。むしろ既存のコンセプトを“壊す”ことに興味があります。
もちろん他社製品の設計から生まれる期待値はありますが、それに縛られず、異なるアプローチに常に開かれていたいと考えています。
シンセサイザーに関わる以前はゲーム業界にいたこともあり、そこからの影響は大きいです。特にOP-Zではその考え方が強く反映されています。あえて画面を持たない設計にしたことで、より直感的で、遊びとしての楽しさや“ゲームプレイ感”を強く意識する必要がありました。
ユーザーがどこに注意を向けるのか、どのような細部が重要になるのか、といった点は常に考えています。
意外かもしれませんが、「画面があること」でした。OP-Zはあえて画面を持たない設計でしたが、OP-XYでは画面が追加されています。当初はそれが万能な解決策になると考えていましたが、実際には逆に難しくなる部分もありました。
OP-Zでは自然に成立していた機能が、画面を前提とした設計ではそのままでは成立しないケースも多く、結果的に多くの再設計が必要になりました。
OP-ZやOP-1でやりきれなかったアイデアを、さらに発展させられたことです。長年温めていたアイデアを改めて見直し、製品として実現できたのは非常に楽しい体験でした。
個人的にサウンドデザインが好きなので、マイクロチューニングやより深いモジュレーションなど、新機能を追加できたことも大きなハイライトです。音作りの可能性が大きく広がり、思い切って踏み込めたのは純粋に楽しかったですね。
トラック同士をリンクさせる機能が気に入っています。複数のトラックを同時に鳴らすことができ、レイヤーによって非常に大きなサウンドを構築できます。
例えば、アタックにRhodes系のサンプル、サステインにパッド、さらにアルペジオのプラックで時間的な動きを加える、といった使い方が可能です。このような組み合わせは非常に実験的で面白いですね。
私の知る限り、ここまで自由にトラックをリンクできるシンセは他にありません。ただしOP-XYは基本的にシーケンサー主体の設計なので、この機能は見落とされがちです。しかしこの機能を使うと、プログラムするツールというより、従来の楽器のように演奏する感覚になります。その点がとても気に入っていますし、多くの人に試してほしい部分です。
たくさんあります(笑)。少人数のチームで多機能な製品を開発しているため、どこかで“完成させる”判断が必要になります。すべてを完璧にすることはできません。
改善したい点はまだ多く、今後のアップデートで継続的に対応していく予定です。
例えば、3つのオシレーターでトライアドやパワーコードを構成するサウンドエンジンを試作しました。ノブひとつでインターバルや転回形を変化させる設計で、モジュレーションすると非常に面白い動きをしました。
ただし、コンセプトとしてはユニークである一方、操作がやや難しく、最終的には採用に至りませんでした。
また、初期の画面コンセプトとして、初期のGTAのようなトップダウン視点のカーレース/交通シミュレーター風UIも検討しましたが、製品との整合性が取れず見送られています。
前回のアップデートから少し時間が経っており、ユーザーからの要望やフィードバックもかなり蓄積されています。
次回のアップデートでは、まずそれらの要望への対応や、目立つバグの修正が中心になる見込みです。
その先についても、すでに多くの面白いアイデアが控えています。OP-XYの今後には十分に期待していただけると思います。